みつはるさんのレビュー一覧
投稿者:みつはる
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紙の本春の雪 改版
2002/12/20 00:19
読むべき!
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
時は大正初期、舞台は貴族社会。侯爵家の若き男と、伯爵家の令嬢の禁じられた恋。
主人公の若い青年は、決して許されぬ禁じられた恋と知っていても、命を賭けて求める。その恋の先にあるものは?
僕はこの本を読む前は、あまりにも有名な作家の作品でかつ貴族社会が舞台となると、分かりにくくて小難しいのではないかと敬遠しがちだった。しかし、一切そんなことはなくて最初から最後まで一気に読ませる。僕はページを開くたびに、すげえ! すげえよ!と興奮しつつ読みすすんでいった。
この小説は、昭和四十四年一月に刊行されたと文庫の最後にあるが、三島由紀夫の小説世界は今読んでも、圧倒的な存在感で読者に迫ってくる。その点でこの小説は、時を越えて、様々な読者の頭の中に、誇り高き恋愛の姿を鮮やかに映しだしてきたと言えるだろう。ここに書かれた恋は、気高く、一途だ。
僕はこれを昨年の年末に読んだが、冬の冷たさや寒さに妙に合っていて、読みながら異様に興奮したのを覚えている。そして、三十数年前に書かれたものを平成の今にこうやって読めて幸せだ! 本は、読書ってやつはなんてすばらしいんだ!と腹の底から思った。
とにかく、理屈抜きにおもしろい。読むべき!
紙の本25時
2002/09/09 23:07
あなたならどうする?
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あなたは、明日刑務所に収監されるとしたら誰と、何をして過ごすだろうか? 刑期は2日や3日ではない、7年だ。
厳冬のニューヨークで今まさにこの立場にあるのが、この小説の主人公モンティである。モンティはハンサムな白人男性、元麻薬密売人だ。そんな彼に刑務所で待ち受けているのは恥辱でしかない。そんな最後の1日を彼は恋人や友達、元相棒、父親、そして愛犬と淡々と過ごす。
こう書くと、7年後に変わらず会おうという約束をして刑務所に向かうというような、ありがちな、べたべたした男の友情物語だと思う人もいるかもしれない。
しかし、この小説はそんなものじゃない。最後の1日の過ぎ行く時間の中で、長年の男友達どうしの複雑な思いや、モンティが麻薬密売をやるようになったいきさつ、そして誰の裏切りでつかまるはめになったのかが描かれる。つまりこの小説には若者の光と影が鮮やかにうつしだされている。
残された時間の中で、モンティが親友に頼んだこととは? 父親がモンティに申し出たこととは? そしてモンティはどうなるのか?
読んだあと、心に刻まれるたしかな、そして消えない余韻。その印象的なエンディングまで一気に読ませる傑作だ。
エドワード・ノートン主演で映画化とのことでそちらも楽しみだ。
紙の本旅々オートバイ
2002/08/10 01:35
若いって素晴らしい!
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恋人がいて、仕事もまったくやりがいがないというわけではない。けれど、「さすらい」というものをしていない。それが心残りだった著者はある日の朝、辞表を提出する。そして一週間後、オートバイに荷物を積んで旅に出る。
自分は何者なのかという問いにぶつかった時、人はそこから切実な模索を始める。そしてそれが青春と呼ばれているものだと思う。
オートバイで旅に出た著者は、日本中の道を行き、多くの人や土地と出会う。その出会いを通して自分とは何なのかという問いの、答えのきっかけを見つけていく。この本にはオートバイの旅による、著者のありのままの青春が書かれている。
著者は「はじめに」の項で、オートバイの旅の精神世界を知らない人を、あくまでも自分本位の観点で断定するなら可哀そうとしか言いようがないと書いているが、僕はこの本を読んでない人を可哀そうだと思う。本当に大げさではなく、ここには若さのパワーと美しさ、そして純粋でしなやかな感性があふれている。
「たとえば夕日の海岸線。たとえば北の露天風呂」。この帯にひかれて僕はこの本を手に取った。そして読み終えた僕は、まだ読んでない著者のデビュー作「上海の西、デリーの東」を求めて、本屋に走った。
紙の本ニッポニアニッポン
2001/09/09 23:54
おもしろい
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引きこもり少年の国家への叛逆小説。鴇谷という苗字からトキ(ニッポニアニッポン)と自分に運命を感じた引きこもり少年は、国際保護鳥である日本のトキ保護問題についてネットで詳しく調べるうちに、その存在に疑問を感じある計画をたて、ニッポンに叛逆を企てる。その結果は…?
著者独特の知的企みにあふれ、鋭いスリルと興奮を味あわせてくれるが、帯にうたわれているように著者の名作インディビジュアル・プロジェクションを超えたかといわれれば疑問が残る。しかしその著者独特の世界は絶対に読む価値あり。おもしろい。
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