みやぎあやさんのレビュー一覧
投稿者:みやぎあや
紙の本拒否する教室
2001/05/26 21:32
不条理な現代怪談。
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「拒否する教室」「閃光」「魅せられて」「千一夜」の4話を収録した怪談(?)集。登場人物の魅力、リアリティ、文章の安定度、そうしたものはやはり大御所赤川先生、さすがです。
ただ怖い話というよりは不条理でオチの見えないお話が多かった気がします。
紙の本忘れないで
2001/05/25 15:16
彼女の心の中の闇。
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外国に行ってしまう大好きな彼の心に残るための方法を必死に模索するサイ。いつも隣にいれば?体が結ばれれば?彼の体に一生残る傷をつければ…?サイが出した切ない答えとは?
要は相手を好きだけど自分のことを一生好きでいてもらう自信がないため告白できない女の子と、ひたすら優しくて抱擁力のあるケーキ職人の「シロちゃん」のお話。どんな形の結末が来るかと思っていたら、一応ハッピーエンドだったことに驚きました。
何より怖いのは、主人公のこの子が内心「シロちゃんに一生消えない傷を負わせたら覚えていてくれるかもしれない」なんて考えて本気で焼きごてを持ち出すようなヤバイ人なのに、おそらくはたから見ていたらちょっと素直になれないで憎まれ口ばかり叩くけど、そういう言動までがわかりやすくてカワイイ子、なんて認識されているんじゃないかということで。私はこの子の心理が結構コワイと思ったけれど、人の目に見える部分では彼女は別に変じゃないんですよね。
この小説、一応二人は両思いになっていますが、果たしてシロちゃんは主人公の心の闇をどの辺まで理解しているのか…。それがちょっと気になりました。
紙の本シュドラとの七日間
2001/05/25 12:46
アウトローに魅せられて。
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アウトローに惹かれる主人公が殺し屋に魅せられて非日常に引き込まれていくが、刑事に脅されて彼を裏切らなければならなくなる、というお話。ストーリーは好み。殺し屋のシュドラもかっこいいんです。しかし主人公。この人があまりにも俗物すぎて、いまいち楽しく読めませんでした。彼が金や名声に弱いのは許すとしても、女に対する欲望がちょっと下品でイヤかも。
主人公を脅してシュドラの逮捕に協力させる刑事も役どころはいいのに、やはり低俗な所が目立って魅力なし。そういうところが勿体無い。というよりもこういうハードボイルド小説って読者対象が男性なのかな?シュドラはカッコイイし、もうちょっと登場人物をスマートにしてくれたら…と女性の視点から読むと思ってしまいます。
しかし最大の謎はシュドラがどうして若宮(主人公)を気に入ったのかということでしょうか。もう少しマシな人選はなかったのか? そして若宮、はじめからシュドラに全部打ち明けちゃえば良かったのにねぇ…。
紙の本球形の季節
2001/05/25 10:48
ふと現れる非日常の気配。
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閉ざされた空間、昔から起こっている不審な出来事、ふとした拍子に現れる非日常なものの気配。そういうものの描写が上手くて文章もきれいでした。
ただ、思ったより爽やかさのない、どろっとした終わり方だったな…という印象を受けました。噂というのが面白いけど、結局分かったような分からないような…。青春小説というには登場人物もみのり以外は鬱屈してる気が。
2002/06/16 00:55
“狂気の世界”はどこにあるのか?
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精神病に興味を持つ人が一番気になるのは、正常と異常の境界線はどこにあるのか? ということではないだろうか。そして更に、精神病の人には世界はどのように見えているのか。人を狂気に走らせる「恐怖」とはどんなものなのか、と疑問は尽きない。
そして、同時に彼らを治療する精神科医の存在もまた謎に包まれている。目で見ることのできない “心の病気”を治療するのはどんな人間なのか。彼らは完璧なのか、全てお見通しなのか。
本書はそんな疑問に対し分かりやすい文章で説明していて、学術書ではなく好奇心を満たすための1冊、という感じ。文庫で手に取りやすいこともあり、結構オススメ。
紙の本碑銘
2002/03/08 13:33
1冊目よりオモシロイ!!
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ブラディ・ドールシリーズを読み始める人にはぜひとも、「1冊目が読みにくくても次も試してみて」と言いたい。このシリーズは巻によって主人公が異なり、そこに社長こと川中、弁護士の宇野などが関わってくる。2巻の主役の坂井は、3巻で脇役として登場するという形。
しかし意外なことに、どの登場人物もそうしてサブキャラとして語られ出してからの方が魅力的だったりする。全体の主人公ともいえる川中も同様。だから、ほんとに、ハードボイルド好きの方は騙されたと思って読んでみてください。面白いよ。
2002/02/25 15:37
その悲劇性に引き込まれる。
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この物語は、ことさら暗いという訳ではないが、明るくはない。一足先にブームを巻き起こしたハリー・ポッターが勇気や希望に満ちた物語だとすれば、これは反対の属性を持っている。どちらも同じく「邪悪なもの」に立ち向かう話だが、こちらは一人一人の弱さがことさらに試される。
彼らは選ばれた英雄ではなく、時には悪の属性に惑わされる。フロドの危険な旅に心を痛め、自らの大切な宝物を彼に与える養父のビルボや、幾度となく危機を乗り越え仲間の救う誇り高い騎士のボロミアも例外ではない。彼らは指輪によって引き出された自らの心の内の醜さに直面し、苦悩する。そして、そんな指輪を持つことになったフロドの孤独。
この小説は冒険物語として面白いと同時に、登場人物それぞれの心理面に魅力がある。決して正義と勇気だけを持ち合わせているわけではない彼らの迷いや矛盾が読み手を惹きつけてやまない。テンポやスピード感のある文章で読み手を楽しませることに長けた小説に慣れている身としては少々読みづらい面もあるが、それ以上に楽しめるので他の方にもおすすめしたい。
紙の本依存症
2002/02/04 12:38
依存する人たち。
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「中毒」という言葉にははっきりと病的なイメージが含まれる。けれど「依存症」という言葉には、もう少しソフトな印象を人に与えます。著者は、現代人の漠然とした不快感や自分とは何か? という根本的な問いへの解答としての名づけとして「依存症」という言葉が急速な広がりを見せていると指摘します。
アルコール、煙草、薬、買い物、ギャンブル……様々なものに依存する現代人の背景にあるのは、その心の孤独です。そしてこれは特定の人だけが抱える問題ではありません。誰もが陥る可能性のあるこの「依存」の正体を、見極めてみるのも良いのではないでしょうか。
紙の本竜の柩 1 聖邪の顔編
2001/10/01 20:27
キーワードは「龍」
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何もない山を八億で買った正体不明の企業の目的を探ってほしい。
テレビディレクターの九鬼は、スポンサーの宗像に依頼されて、歴史番組の取材を装って探りを入れようとする。しかしそこに現われたのは想像より遥かに物騒な人間達だった…。
各地に散っているキーワードは「龍」。様々な文献や伝承を参考に、九鬼とクルー達はその謎に挑む。
神社に纏わる様々な伝説から予想もつかない珍説がどんどん飛び出してくる本書。内容の奇抜さに反して細部にまできちんとした考察が加えられているので読み応え十分。最終的にこの「龍」が何を示しているのか続きが気になる。
2002/06/16 00:49
とにかく笑える“沿線文化人類学”!
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副タイトルに「沿線文化人類学」とありますが、表紙を見たら分かる通りそんなに小難しい本じゃありません。…というか、中をぱらっとのぞいてみればすぐにわかるんですけど。
中央線沿線に住む人たちのタイプを、よくぞここまで! というくらい分類し、観察し、駅ごとにまとめてみたエッセイ?集。イラスト入りの解説がおかしく、それを見るだけでも十分楽しいです。しかし、それぞれの特徴を見事にすっぱり言い切ってますけど、これってほんとにホントなの? と思わず誰かに聞いてみたくなったり(笑)。
紙の本プリズンホテル
2002/03/06 15:34
笑いましょう。
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屈折した小説家の木戸孝之介は、ホテルのオーナーになったというヤクザの叔父に招待されてあじさいホテルにやって来る。しかしそこは地元の人間からプリズン(監獄)ホテルと呼ばれている、任侠団体専用のホテルだった…!
問答無用の極道たちが繰り広げるドタバタ劇に、とにかく笑わされる1冊。様々な人間ドラマもありますが、個人的には笑いの方が強烈。
2002/03/06 12:40
ばらばらになった仲間たちのその後。
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第二部、文庫版の5巻はフロドとサムが旅立った直後から始まります。3月公開の映画のラストを飾った、フロドから指輪を奪おうとしたボロミアのその後、さらわれたメリーとピピンの行方など。バラバラになった登場人物たちのその後を追っていくような感じ。ただし第二部も3冊に分かれているので、この一冊で全員分の消息がわかるわけではありません。小説は映画と比べてわりと地味な印象がありあますが、登場人物一人一人の心理状態が分かりやすいのが嬉しいです。
個人的には最後まで読んで、「…それで、それでフロドはどうなったの!?」と思わず呟いてしまいました。一番気になる彼らについて明かされるのはもっと先の模様。
2001/10/26 00:14
正常と異常の境界とは。
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価値観、社会体制、人間関係、全てが多様化した現代、「正常」と「異常」、「正気」と「狂気」の境目は非常にあいまいで分かりにくいものに変化してきた。そしてちょっとくらいおかしいことが“個性”として受け入れられ、むしろ皆が少しずつ“個性的”であることが求められている時代とも言える。
そんな中で、目に見える形の分かりやすい「狂気」は減少し、代わりに普通にしか見えない「狂気」が増加している。誰もが陥る可能性のある現代の心の病気について、精神科医の町沢静夫が分かりやすく語っている。
紙の本姑獲鳥の夏
2001/10/25 13:22
境界の曖昧さを楽しむ。
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古本屋の店主、京極と主人公であり作家でもある関口の延々と続く会話を読んでいくうちに、日常と非日常、正気と狂気の境界が非常に曖昧になっていく。自分の知識、記憶の正しさに自信を持てなくなり、漠然とした居心地の悪さを関口と共有することに。
正直、京極の話は難解で、理解できたようなできないような…。しかし科学が蔓延した現代ではない、曖昧なものの入り込む余地のある戦後の雰囲気がよく出ていて楽しめます。関口と京極堂、超能力で過去を見る探偵に刑事の木場など、登場人物が個性的なことも嬉しい。本の厚さにちょっと引いてしまいそうになりますが、案外これが読み始めればなんとかなるので未読の人にはぜひ一度試してみて欲しいです。
紙の本ストーカーの心理学
2001/09/11 14:40
役に立つかも?
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物理的には過密。心理的には過疎。そんな都市部で爆発的に増加するストーカー。何が彼らを歪んだ愛情表現に駆り立てるのか。著者はストーキングと呼ばれる行動を起こす人間をタイプ別に分類して細かい説明を加えている。
ストーカーと呼ばれる人間のその執念、妄想の激しさにドキリとさせられることもしばしばではあるものの、一般向けに書かれていてとても読みやすいので興味のある人はぜひ一度手にとって見てほしい。いざという時には役に立つかも?