アセローラさんのレビュー一覧
投稿者:アセローラ
紙の本フルハウス
2002/07/16 20:38
怖さの中にひそむ哀しさ
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「家を建てる」が口癖だった父が本当に家を建てた。しかし母は16年前に家を出、姉妹も別々に暮らしていた。ある日久しぶりに訪ねてみると、家には見知らぬ一家が暮らしていた。父はホームレスの一家を住まわせていたのだ。姉の素美は驚きと困惑に襲われるがなぜか父に核心をついた質問ができず、ホームレス一家にも何も言えなかった。
家は建てたけど本物の家族を作ることができなかった父。ホームレス一家も何故か哀しい。この話に出てくる人たちは怖くもある。その怖さの奥に見える哀しさがせつない。
紙の本トラッシュ
2002/07/15 19:25
いろいろな愛
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黒人の男リックと日本人の女ココの恋愛を描いた小説。ただの恋愛小説ではないという印象が強く残ります。愛というものの中で自然に育ったココと、自分だけに注がれる愛になじめないリック。2人の間には少しずつ溝ができていく。
そして、リックの息子ジェシーとココの関係。はじめは喧嘩ばかりの2人だったが、次第に親子や友達ともまた違った愛情が通い始める。
ココがこの物語で「誰が悪いわけでもない」という事が、この話を普通とは違ったものにしていると感じた。人間にはどうしようもないことが溢れていて、それは人を苦しめるものだったりもするけれどやっぱり一人では生きられないということを感じさせてくれました。
紙の本ロマンス
2002/07/15 19:15
ロマンスの道
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銀色さんの書く詩には厳しさがあります。決して強い口調で書かれているわけではないけれど、人間の弱さとか哀しさ切なさ、もちろん喜びも含めて素直で強くて美しい言葉で書かれています。
紙の本檸檬 改版
2002/06/25 18:32
繰り返される思い
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初めて読んだとき正直言ってわからなかった。たけど、読み進めるうちに胸が締め付けられるような感覚を覚えました。生きることのつらさや、苦しさ、常に命の限りというものを背後に感じながらの作家活動は、彼の作品に真実味を強く感じさせるし、だからこそ永く読み続けられて、人々の心に残るのだと思います。
紙の本ジーキル博士とハイド氏
2002/06/25 18:03
二重構造の人間
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地位・名誉・富を手に入れたジーキル。しかし、享楽性を制御できないという欠点と、プライドの高さゆえ融和できずにいた。そこで、自己の中の善と悪を分離させる薬を作り、悪の権化ハイドに変身して様々な悪事をはたらくようになる…。
完全な善人も、完全な悪人も存在しないと思うのですが、完璧を目指してしまう気持ちというのはわかります。ジーキルも、価値観というか、<自分>というものを引き返せなくなるところまで持っていってしまったのではないだろうか。
紙の本ご依頼の件
2002/06/25 17:41
ひそかな願望
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短い話の中に、人間のひそかな願望を実現させ、思わずうなってしまうような結末を用意してくれている星さん。淡々とした語り口に皮肉も込められ、物語としても楽しめて、私たちの心にあるひそかな願望までも満たしてくれる本です。何度読んでも、いつの時代に読んでも古さを感じさせません。
紙の本水辺のゆりかご
2002/06/25 05:26
柳美里という人
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「すべては事実であり、嘘である。この世はある種の幻覚だ。」と著者はあとがきで書いている。この物語もそうなのだろうと感じる。とにかく、壮絶な人生を送ってきた人ではあるのだけれど、自分の人生をこれほど冷静に書けることに、ある種の凄みを感じずにはいられない。痛々しいところもあるのですが、柳美里という人がなぜ自分を傷つけながらも、生き、書くのかということを少しわかったような気がします。
紙の本家族の標本
2002/06/25 05:20
家族の重さ
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様々な家族の話を集めたエッセイ。家族だからこそ、近すぎる存在だからこそ起きてしまうこと。
憎しみや悲しみを抱いたまま行き続ける人。過去と折り合いをつけながら生きる人。家族の重さ、大切さを感じさせてくれます。
紙の本カラーパープル
2002/06/25 04:49
不屈の精神
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セリーという女性が、黒人社会で起きた差別や暴力の問題と闘いながら生きていく物語。フィクションではあるけれど、この小説で書かれているようなことが現実にあったのだろうと思うと、人間の恐ろしさを感じる。と、同時に人間の強さや愛情も感じます。アメリカ=白人の社会というイメージのなかで、黒人がどう生きて闘ってきたのかを知ることは、同じ人間として大事なことだと思いました。
紙の本風葬の教室
2002/06/25 04:41
生きていく責任
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リアルです。いじめっ子も、担任の教師も、主人公の杏がとる行動も。だけど、結末は違います。杏は、心の中でいじめっ子たちを一人ずつ殺していきます。他人が変わってくれるのを待つより、自分が変わったほうが良いということに、家族の愛情によって気づくのです。山田詠美という人は、人間の欲や弱さを書かせたら、もの凄く心に迫ってくるものがあると、読み返すたび感じます。
紙の本最後の息子
2002/06/17 03:56
人間ってやつは…。
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「最後の息子」「破片」「Water」の3作品が収められています。私のイチオシは「破片」です。子供のときに事故で母親を亡くしてから、女の人に対して異様なほど執着してしまう岳志。ストーカーと思えなくもないのですが、何故か嫌いになれない感じが全体に漂っているんです。人間の弱いところとか、どうしようもないところを憎めない感じに書き上げてしまう。すごい作家です。
紙の本家出のすすめ 現代青春論
2002/06/17 03:38
出てみてわかる「家」の意味
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家出をすすめるなんて…と思ったのですが読んでみると納得です。家を出ることによって自分を作っていかなければならないのだと…。今の時代にこそ必読な一冊だと思いました。現状に不満を抱いていて、この本のタイトルにピンとくるものがある人はぜひ読んでみてください。
紙の本都の子
2002/06/17 03:12
みずみずしい言葉たち
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江国さんが今まで出会った人や、幼い頃の思い出、訪れたところなどを書き綴ったエッセイ。それにしても江国さんの言葉たちはなぜこんなにみずみずしいのだろう。短い文章のなかの言葉1つ1つに温度が感じられるというか…。記憶の中の話でも、鮮やかに映像やにおいが浮かび上がってくる。このエッセイを読んでいる間はいつもと違う空気感に包まれました。
紙の本シーラという子 虐待されたある少女の物語
2002/06/17 02:35
ONECHILD
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たった6歳の女の子が身勝手な大人によって心も体も傷つけられた、その事実に腹が立ってしょうがありませんでした。だけど、シーラがトリイに心を開いていく様子は言葉にできないほど嬉しかったです。虐待を受けて育つということが計り知れないほどの傷を負うこと。そしてそれは、その時だけの問題じゃないのだ。年を重ねるにつれて、傷も大きくなるのだと思います。自分には関係ないと思う人にほど読んで欲しい本です。
紙の本パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集
2002/06/17 01:37
ツイアビからの警告
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南海の島サモアの酋長ツイアビが記した文明批評。ツイアビがヨーロッパの国々を回り、冷静で鋭い観察力をもって書かれた話はユーモアもあり、皮肉もこめられている。文明社会に生まれた人間は、ツイアビの住む世界では生きることができないというか、もう引き返すことのできないところまで来ているのではないかという気がする。この本は何かを考えさせられるだけではなく、何かをしなくてはならないと思わせる本でもあります。