京太さんのレビュー一覧
投稿者:京太
紙の本火刑法廷
2002/07/15 16:12
火刑法廷
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カーの最高作に挙げる人も多い、怪奇ミステリーの傑作です。奇々怪々な事件がつぎつぎに発生し、読者を飽きさせません。まるでホラー小説を読んでいるような気分になります。それから、カーお得意の、密室での死体消失の謎も出てきて、もう豪華絢爛、これでもかという内容です。結末のすごさも特筆モノで、ミステリー史に残る傑作であることは誰もが認めるところでしょう。そのラストのオチには賛否両論あるのかもしれませんが。僕は以前、カーの「魔女が笑う夜」というとんでもないオチのある作品を読んだことがあるので、あれに比べれば、本書のラストは綺麗なものだと思います。ストーリーも面白いので、カーのなかでは万人向けの作品だと思います。
紙の本悪意
2002/07/07 10:31
騙されるスリル
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小説としての評価はともかく、ミステリーとしては、本書が東野さんの最高傑作だと思います。だから僕は、「人はなぜ殺人を犯すのか」という深いテーマを考えるよりも、純粋に推理小説として面白く読みました。とくに後半の展開は、まさにミステリーならではの興奮が味わえます。騙される快感、というやつ。これだけ精緻な物語を描けるのは、いまやこの人ぐらいでしょう。 巧いなぁ、と思わずにはいられません。テーマがどうこうではなく、ミステリーとして読むことを、僕はあえて薦めます。
2002/07/07 10:07
ブック・レヴュー
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佐藤亜紀、福田和也、松原隆一郎の三人による鼎談書評集です。毎回ひとつのテーマにそって選ばれた本を、情け容赦なく切り捨てる、というかなり過激な内容。つまらない本はつまらないと断言していて、これだけハッキリと言われると逆に気持ちがいい。また、評価すべきだと判断した本はしっかりと褒めているので、公平だと思います。三人の意見が分かれるところも面白い。「戦争」とか「ポストモダン」とか「教養」とか、難しいテーマが多いのですが、選ばれた本に偏りがなく、そこのところにも好感を持ちました。「怪奇」のテーマで、「座敷女」という漫画作品が選ばれたりとか、かなり幅広くフォローしています。おすすめ。
2002/07/11 16:32
ポーの一族
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作者の最高作に挙げる人も多い、萩尾望都の代表作。呪われた吸血鬼の一族をめぐって繰り広げられる、美しくも儚い物語。確か30年以上前に発表された作品ですが、いま読んでもまったく古びれていません。断章のようなエピソードがひとつひとつ語られていくという手法で、物語は展開していきます。そういった、謎が解明されていくという物語の面白さももちろんあるのですが、それ以上に、登場人物たちがみな魅力的に描かれています。モロに少女漫画の絵なので、苦手な人もいるかもしれませんが、ハマる人はとことんハマるでしょう。ちなみに、ミステリー作家の森博嗣氏が、萩尾先生の大ファンだそうです。森さんの小説が好きな人には、合うかもしれませんね。
紙の本テレビ消灯時間 1
2002/07/24 09:50
毒舌
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TV界の著名人たちが、著者によってボロクソに貶されるという、定番の辛口コラム。確か先月に、著者が亡くなられたということで、いまさら読んでみたのですが、やっぱり面白い。「TVに対する批評」でこれだけ読ませるものは、なかなかないと思いますね。著者は難しいことを言ってるわけではなく、むしろ誰もが心で感じている、当たり前のことを書いているだけなのですが、それでもこれだけ読ませてしまうのは、ナンシーさんの文章の巧みさによるものでしょう。その厳しくも鋭いツッコミは、非常に的確です。といっても、繰り返しますが、全然難解な内容ではなく、気軽に楽しく読めるものばかりなので、息抜きに読むのがちょうどいいのではないでしょうか。
紙の本死国
2002/06/30 07:31
よくある話だけど、怖い……
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よくある幽霊話だと思って油断して読んでいたのですが、怖いのなんの。この作者は描写が非常に巧みで、なにげない語り口から、読者を異世界へと連れて行くのです。幽霊ものなんてもう古い、と思っている人はぜひ読んでほしい一冊。
ストーリーはありきたりで、都会での生活に疲れた主人公(女性)が故郷へ戻り、そこで昔仲のよかった子が実は十八年前に死んでいたことを知らされ、それからどこか日常と違う世界へ放り込まれるというお話。非常にシンプルです。逆に言えば、ストーリーの力を借りず、描写の力だけで怖さを演出しているわけなので、そこが凄いと思いました。
個人的には、恋愛話が絡まないほうが良かった気がします。あくまでホラーに徹して欲しかったかな。でも、面白いですよ〜。オススメ!
紙の本できるかな
2002/07/27 07:50
できるかな
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サイバラがいろんなところで大暴れ(?)するエッセイ漫画。内容も、もんじゅに行ってみたり、タイで生活してみたり、なぜか釣りをしてみたりとかなりバラバラ、ほとんど思いつきの企画なんじゃないかと疑ってみたくもなる。でも毎回毎回とんでもない目に遭って、読者を楽しませてくれます。特にタイの話は強烈でした。強烈すぎるので、あまり人には薦められないかも。でも面白いですよ。
紙の本おもしろくても理科
2002/07/24 10:11
おもしろい!
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文系で、理科が嫌いだった人にぜひ読んでもらいたい本です。理科によく出てくる「ナントカの法則」とか、僕も苦手だったのですが、そういうややこしい事柄を、専門用語をなるべく使わないようにして、わかりやすく説明してくれます。ちょっと堅い内容になるときもあるのですが、要所要所にサイバラのツッコミが入り、難解な雰囲気を中和(?)してくれるので、なんとか最後まで読み通せます。続編に「もっとおもしろくても理科」という、これまたハカセ&サイバラのコンビが活躍する本があって、こちらもオススメです。ただし、「もっとおもしろくても〜」の方は、少々難しいところが出てくるので、本書を先に読んでおいたほうがいいかな。
紙の本不安な童話
2002/07/22 08:51
奇妙な話
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ホラー・ファンタジー系の作品としても楽しめるし、本格推理小説としても完成度の高い逸品です。「生まれ変わり」という謎がミステリ好きにはワクワクさせられるし、真相の意外性も文句ナシ。なにより文章が読みやすいのがいいですね。その場面がくっきりと浮かび上がってくるような、すごく映像的な文章だと思います。ラストシーンも印象的で、個人的には、恩田さんの作品のなかでは一番好きです。いろんな要素が詰まっているので、はじめて恩田作品を読む人に薦めます。
紙の本テレビゲーム文化論 インタラクティブ・メディアのゆくえ
2002/07/19 09:38
文化としてのゲーム
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TVゲームがどう発展してきたのか、その歴史を紹介しつつ、未来のゲームはどうなるのかという展望を述べた本。すごく面白かったのですが、内容には少々不満を持ちました。なんというか、かなり大雑把にまとめたという印象を受けました。テレビゲームが「相手をしてくれるメディア」というのは確かにそうかもしれませんが、しかしそれだけに限定してしまうのはどうでしょう。RPGなどの面白さは、またそれとは別だと思うのですが。もっと重要な細部を見逃しているような気がします。もちろん、著者はそれを知ったうえで、あえてこういう書き方をしたのかもしれませんし、ページ上の都合で書けなかったこともあるとは思います。個人的には文化がどうこうより、テレビゲームというジャンルをもっと突き詰めて考察して欲しかったです。
紙の本象と耳鳴り
2002/07/19 09:27
装丁が最高!
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関根多佳雄という老人(しかし元・有能判事)を主人公にした本格推理の短編集。ほかの書評にも書かれてあるのですが、短編の出来不出来の差が激しいですね。かなり無理がある話もあれば、さすがは恩田陸、と感心してしまう素晴らしい話もあるので、かなりバラつきのある短編集だと言えるのではないでしょうか。でも個人的には、そこが逆に面白かったです。全部が平均点以上の話だけど、どこか物足りない、という短編集が多いなかで、本書は、必ずどれかひとつは、自分が気に入る話があると思いますよ。僕としては、『待合い室の冒険』と『机上の論理』の二篇が好きです。
紙の本ミステリを書く!
2002/07/19 05:57
「ミステリを書く」ということ
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人気作家11名が、創作の秘密や、子供のころの読書体験などを語った本。ミステリーがどうやって生まれてくるのか、その仕組みに興味がある人なら楽しく読めるでしょう。ここに登場する作家さんたちは、それぞれ自分なりの理論や考え方を持っておられて、その違いが僕には面白かった。「あなたにとって読者とはなにか?」という質問なんて、答えは全員バラバラ。そこがすごく面白い。将来ミステリを書きたい人へのアドバイスみたいなものも語られてあったりするので、作家志望の人も読む価値があると思います。
2002/07/16 16:36
ハトシェプスト
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古代エジプトに唯一人、女性のファラオが存在したという。その名もハトシェプスト。彼女の数奇な運命の物語であり、著者の「幻の名作」である表題作『ハトシェプスト』をはじめ、切れ味鋭い短編が収められた自選短編集。やっぱり巧いなぁ、と読んでいて感心させられます。あまり動きのない静的なコマを連続させることによって、恐怖感や陶酔感を巧みに表現しています。なかなか真似できるものではないでしょう。それと、山岸さんの作品を読んでいていつも思うのですが、最後の一コマがすごく印象的なんですよ。その辺が「切れ味鋭い」短編だと僕が感じる理由だと思います。
2002/07/16 07:02
恨ミシュラン
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有名グルメガイドに載っているようなお店を食べ歩き、言いたい放題、文句をつけまくるという内容の本です。サイバラが漫画を、神足氏が文章を担当し、店の欠点を突っ込みまくります。西原のタチの悪さは有名ですが、この本では彼女が本領を発揮していて、ここまで言っていいのか、というぐらいボロクソに貶しています。そのためか、神足氏の文章より、漫画のほうが10倍は面白い(神足さん、ごめんなさい)。グルメガイドとしても十分参考になるのではないでしょうか。