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いくらさんのレビュー一覧

投稿者:いくら

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

マルタ・サギーは探偵ですか?はミステリーですか?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 マルタ・サギーの職業は『名探偵』。けれど推理はしないし、できない。彼あるのは『事件を強制的』に終結させる力だけ…。

 富士見ミステリー文庫新装刊ということで、表紙もキレイで目を惹いたし、紹介文が妙に印象的でこの本を選び試しに購入。きっと全く新しいミステリに出会えるだろうと期待しました。

 何に関しても無気力な高校生、鷺井丸太が迷い込んだコンビニは異世界「カード戦争」の舞台への入り口だった。そこで手に入れた「名探偵」のカードを使い、丸太は「マルタ・サギー」として新しい自分と向き合う…というのが大筋。

 読後の第一声は「これミステリじゃないだろ!」です。本当に全く推理してないよ!! 特に今回は彼が名探偵になるまでの話がメインだったこともありますが…。これはファンタジーです。断言。
 とは言っても、素直にファンタジーだと思って読めばそれなりに面白かったです。語調も読みやすいし。続編も出るようですが、機会があったら読んでみてもいいかなぁと思います。2冊目からの方が事件がメインになって面白いかも。マルタの能力がどう物語に活きていくのかをもうちょっと確かめたいですね。

 探偵とは? 名探偵とは? 既存の概念に囚われず、新たな世界を体験したい方は是非。特にファンタジーが好きな方にはお勧めできるかと思います。挿絵も多く、キレイなので読書が苦手な方でも読みやすいです。かなり薄いですし、手軽です。

by Think Out Mystery

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紙の本

政治的な思惑ひしめくこの世界のあるべき未来とは?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この小説は冒険小説である。

少なくとも私はそう思う。舞台設定はファンタジーであるし、ミステリ的要素もあるが、それ以上に異世界を旅する感覚が何よりも味わい深いのです。著者によるあとがきにも「この作品は旅の物語である」とはっきり書いてあって、やっぱり!と大いに頷きました。

魔法が日常的に使われる世界。
騎士や魔導師が存在し、各国の様々な思惑によって戦争が行われている。
長期化した戦争の停戦協定を結ぶため「戦地調停士」を初めとする面々が独立都市、ロミアザルスに集結した。
ロミアザルスはどの国にも干渉されない中立の地である。それは竜が棲み、守る土地だからだ。
この世界における竜は圧倒的な存在であり、竜の前では人間など何の力も持たない。

そんな竜が殺された。

術が施され、許可なく足を踏み込むことの出来ないはずの閉鎖された空間で、何者かに刺殺されたのだ。
これらの謎を解明するため、第1発見者となった戦地調停士EDと仲間は、過去に竜に面会した記録のある人物を訪ねる旅に出るのだが…。

EDと共に旅をするのは、女性でありながら特務大尉を勤めるリーゼと、風の騎士として名の知れた少佐ヒースロゥの2人で、物語はリーゼの視点で進んでいきます。
クセのあるEDの語り口調は好みが分かれると思いますが、とても興味をそそられる人物で、この1冊では語りきれない過去や、大きな決意が垣間見れ、続編への期待も膨らみます。
また、真っ直ぐな気性で男気溢れるヒースロゥの人柄も、EDと絶妙なコンビネーションで物語を引っ張ります。
バランスを取るためなのかリーゼにあまり個性が見られないのが残念ですが、旅先で出会う人々が3人以上に魅力的で、そこもまた冒険小説として面白く読めるポイントなのかなと思います。
キャラクターがその世界で「生きている」姿が目に浮かぶのですよ。
そしてその人物達を通じこの独特な世界観に触れることで、読んでいる私自身も違和感なく異世界の住人になれるのでしょう。

ミステリとして読むとなると、そもそも前提となる世界観がアンフェアなのはこの際目をつぶるとしても、やはり読者に対する情報の提示が段階的で「後出し」の感じがするのは否めません。
やはりそれはファンタジーの宿命なのでしょうか。
ただ、その世界観に頼ることなく、きちんと論理的な推理を進めているのはさすがです。
たとえ推理の材料の出し方に違和感があったとしても、決してそれは読者を裏切るものではなく、きちんとミステリとして成り立っています。

ミステリとして期待して読んだ感想なので★2つと辛口ですが、やはり本書の楽しみは「謎解き」ではないと思うのです。
政治的な思念のひしめくこの「殺竜事件」の世界を旅し、EDと共にあるべき世界を創造していく、そんな未来に思いを馳せて…。

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紙の本

イマドキの小学生は可愛いだけじゃないぞ?!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

可愛い。
とにかく可愛い。
思わず表紙買いしてしまうほど可愛い。
その一言に尽きるのですが、可愛さの中に子供独特の不条理さがあって、面白い。
最近流行りの「萌え系」かと思いきや、それだけではない独特のギャグセンスが光ってます。
甘くないし、パンツ丸出しでもあまり萌えないのが良いところです。(笑)
内容は、高校生の姉を持つ小学生の女の子と、その仲間達のゆる〜い日常をたんたんと描いたもの。
それだけなのによくもまぁこんなにネタが続くよな〜ってくらい、特別なことは起こらない。
でも、少々(?)ぶっ飛んだ性格のトラブルメーカー美羽のおかげで、プチ騒動が耐えず、千佳&伸恵姉妹のツッコミが炸裂するのです。
小学生だけだと破綻してしまう物語が、ちょっぴり大人で男前な伸恵の存在によって引き締まります。
ただ、ばらスィーさんご本人も言っていましたが、慣れるまでキャラクターの見分けが付きません。(^^;)
髪型だけでの判断を強いられますが、だんだん台詞だけでも誰か分かるようになるくらい個性があるので、ご心配なく。
キャラクターCDから始まり、今後ゲーム化にアニメ化と忙しい作品ですので、今のうちに要チェックですよ☆

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紙の本

緊迫した法廷でのスピード感ある攻防は読みごたえ充分。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

法廷ものにありがちの専門用語の羅列を排除し、簡略化することで、リズム感がある読みやすい作品に仕上がっています。
予備審問や陪審制度など、新しい制度を導入した日本という設定がとても生かされていて、現在の日本の「長い」裁判へ警鐘を鳴らしているように感じました。
物語の大半が法廷を舞台にして進み、基本的に捜査は警察と雇われ探偵が行い、集まった情報を基に論理を組み立てていきます。
それだけだと坦々とした印象になるところですが、そんなことないんですよ。主人公達にとって都合の良いこと後には悪いことがあり、その緩急の付け方が上手いんですよね。スピード感があって、飽きることなく一気に読ませてしまいます。

ただ、女性のキャラクターがちょっと使い古されたパターンの中にいるのが残念。
なんていうか・・・女の私が読むと、これは絶対作者は男性だな〜って妙に感じるのですよ。
その代わり、主人公の山鹿をはじめとする男性陣のアウトローっぷりがなかなか素敵。
山鹿って自信家で鼻持ちならない性格なのですが(^^;)、言うだけの事をきっちりやるから爽快なんですよね。法という決められた枠の中で、それを逆手にとって無罪を勝ち取る様はアンフェアながらもスカっとさせられます。
でも、それ以上に相棒の探偵・影野が主人公を食う格好良さなんですよね!2人のちょっぴりガキっぽい会話も青春してて好きです。

物語の根底にあるのは「被告人を信じること」です。
もし私が被告人だったら、こんな風に信じてもらえるだろうか?「あの人ならやりかねない・・・」なんて言われないよう、日頃から実直に生きたいものです。(笑)
だからこそ、山鹿が「疑わしい被告人」に出会ってしまった時、それでも「信じる」のか?そんな姿を見てみたいと思いました。そこに彼の弁護士としての真価が問われるように思います。
続編に期待。

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紙の本

紙の本幽霊刑事

2005/04/13 15:00

「もどかしさ」と「切なさ」に縁取られた幽霊の物語。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

正直言って、ミステリとラブストーリーの融合って聞くと、ちゃちな2時間ドラマのような展開を思い浮かべてしまい、苦手意識が働きます。
そもそも、私は恋愛小説ってのが大の苦手なんですよ。(^^;)
とは言っても、この「幽霊刑事」は私の大好きな有栖川氏の話題の作品。騙されたと思って読んでみることにしました。
主人公は、信頼していた上司に訳も分からず殺された神崎刑事。もちろん、殺されたのだからこの世のものではない。いわゆる「幽霊」。
かと言って犯人に復讐する能力がある訳でもなく、愛するフィアンセを慰めることさえ叶わない、無力極まりない存在だった。誰にも気付かれることはなく、何かに触れることも叶わない、まるで空気のようである。
唯一神崎の姿が見えたのは、隣の席の同僚刑事の早川。イタコの祖母譲りの霊媒体質の持ち主で(本人は今まで気付いてなかったようだが)、お人好しな性格の彼は神崎と協力して捜査に乗り出す。
その頃、警察の捜査は暗礁に乗り上げており、もちろん犯人である経堂課長に捜査の手が及ぶこともなかった。そこで、神崎は幽霊の特権とも言える「追跡調査」を行うが、目を離している間に、なんと経堂課長が密室の現場で殺されてしまう・・・。
「もどかしさ」「切なさ」がこの物語に輪郭を作っており、ほどよくラブストーリーの要素が謎解きと絡み合っています。読む前の心配など忘れる出来です。
幽霊となって戻ってきた彼の存在を認めることができない彼女の様子に憎らしさすら感じました。
特に読後の余韻は何とも言えない切なさで、素晴らしいの一言。
幽霊だからこその捜査方法、そして得ることができる情報を推理に使えるという利点もあるが、むしろ幽霊だからこその虚無感やもどかしさが丁寧に書かれているのが面白く、違和感なく主人公に感情移入していくことができます。早川とのコンビネーションも絶妙。
もし私が幽霊になったら、神崎のように感じるのだろうか・・・と、彼と照らし合わせて、自分という存在を見つめなおすきっかけになるのも、本書の読みどころです。
ただ、「幽霊」という特殊な形態がどのようなものか読者に説明する必然性はわかるのですが、少し自嘲的でクドイ印象を受けたのが残念でした。
登場人物は主に神崎の職場である刑事課の人間ですが、みんなそれぞれに怪しく見え、最後までフーダニット(誰が犯人か)で楽しませてくれます。
また、仕掛けられたトリックはこの「幽霊刑事」だからこそ成り立つもので、なるほど!そういうことか!と妙に納得しました。
「ラブストーリー」、そして「幽霊もの」と特殊で欲張りな設定でありながら、それを充分に活かし、新しい「ミステリ」の形を楽しませてくれる一冊です。

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紙の本

紙の本子どもの王様

2005/04/13 15:17

「子供の感性」に大人になってしまった私はドキッとさせられました。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「Mystery Land」の第1回配本の1冊ということで、そもそも子供向けに書かれた「本格ミステリ」である本シリーズは、装丁も素敵で、文字は大きくルビがふってあります。
しかし!大人も楽しめる・・・っていうか、逆に大人のための子供向け本のような気がしてなりません。

殊能氏の作品は初めて読んだので、他と比較はできませんが、非常に繊細な台詞回しにドキっとしました。
特に「子供の感性って確かにこんな感じ」と思わせるような、以前自分もそうだった・・・という懐かしい記憶がよみがえりました。
大人になって忘れてしまった「何か」がそこにはあると思います。
本格ミステリとはちょっと違う気がしましたが、ショウタ君に共感しながらドキドキハラハラの展開に身を任せるのは楽しかったです。
難を付けるとすると、後味の悪さかな。そこが魅力でもあるのですが。

小学生の頃って、確かに男の子はこんな感じだった!と主人公たちを見ていて思いました。
バラエティ番組のコーナーで行われているゲームが流行っていたり、無意味に暴力的な遊びが好きだったり、ヒーローものに憧れていたり・・・。
確かに記憶の中に存在しているような彼らの様子を見ているだけで、懐かしい気持ちになれます。
そして、そんな彼らの目に「大人」たちはどう映っているのか・・・。
子供の頃の自分を取り戻してみたい方は是非!

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紙の本

紙の本失踪症候群

2005/04/13 15:12

誰もが陥るであろう現代社会の闇。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ストーリー自体は、序盤は失踪者を地道に探すところから始まるので、派手さはないのですが、細かく場面転換をすることによって飽きさせない構成になっています。
また、環をはじめとするチームのメンバーについての描写が見事で、読み進めるうちにいつの間にか彼らのキャラクターが頭に入り込んできます。
それぞれ底知れぬ何かを持った雰囲気に興味を持たずにはいられませんでした。

全体を通じて感じられたテーマは「虚無感」でした。
中でも、原田とその娘のやりとりは、社会問題の一つである家族崩壊の核心を突いているように感じます。
誰もが陥るであろう現代社会の闇を感じ、ふと自分の胸に問いかけている自分がいました。


あなたは、ふといなくなりたいと思ったことはありませんか?

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紙の本

逃れられない遺伝子の呪縛。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

山口雅也氏の人気シリーズ「キッド・ピストルズ」が漫画家されました。
繊細なタッチの絵柄がとても魅力的で、原作を知っていても登場人物に違和感がないのがすごい! 特にピンクは可愛いです。

第1巻では「ノアの最後の航海」が中心です。
反進化論を唱える創造論者ノアが、異常気象で長雨・洪水が続く英国であるプロジェクトを開始する。
それはまさしく「ノアの箱舟」の再現。三千万種類もの中から動物を選定し、ノアの親族と見届け人として呼ばれたキッド達と共に航海を始める。
死期を知りながらもノアとの結婚を決めた若く美しい女、創造論者と対極に位置する遺伝子学者のいとこ、ノアに捨てられた女の子供…と登場する人物はみんな胡散臭い。
そんな中、心臓疾患で先の短いノアを巡る遺産、そして各人の陰謀が入り混じった船内で殺人事件が起こる…。

軸となる生物学・遺伝子学の仮説は非常に興味深く読めました。
ただ、ちょっと説明台詞が多くって読みづらい印象があります。
特にキッドが推理をする場面は読み返さないと理解できないほど、抽象的かつ説明的で辛かった…。
漫画化するにはちょっと難しい題材だったのではないかと思います。

「キッド・ピストルズの慢心」はキッド刑事誕生秘話やピンクとの出会いのエピソードなどが詰まった一話で、シリーズ導入編として読めます。
まさしくこのパラレル・ワールドの世界観が凝縮された作品です。
そもそもの原作が良い意味でも悪い意味でもクセのある作品なので、好みが分かれるかと思いますが、この漫画でパンクス刑事達の世界に触れてみるのもいいかもしれません。

By T.O.M.

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紙の本

「会計士」の仕事風景が思い浮かばないアナタへ。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

名付けるならば「会計ミステリー」とでも言いましょうか。
裏金、会社の乗っ取り、クーポン詐欺、土地評価額の変動などなど、一度は耳にしたことのある事件を、会計士の監査によって謎解きしていく・・・という、一風変わった作品です。
非常に読みやすく簡潔な文体と、テンポの良い章立て、そして魅力的なキャラクターに引き込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。
女子大生会計士の萌さんと、新米会計士補カッキーこと柿本くんの微妙な関係がまた良いのですよ。萌さんの意地悪な台詞の端々に後輩への愛を感じます。(笑)

2005年の角川文庫『夏の100選』に掲載されている本書ですが、もともとは専門学校の情報誌で連載されていたそうで、ビジネス書という位置づけでした。
あとがきで著者本人が言われているように、これを「文芸書」と分類することに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、私はこの決断は大正解だと思います。
勉強するぞ!などと気負うことなく、可愛らしい表紙に惹かれて手に取った読者も、楽しく自然と「会計士」の世界を覗き見ることができるのですから。

世の中には色々な業界や職業があります。
そして、普通その一部分しか知らないで終わってしまいます。
本書を読むと、本はそれらの世界を知る手段である、と再認識させられます。
知ることで自分の中の可能性が広がります。
この作品と出会ったことで、会計士に憧れる若者が増えたら、作者の企みは大成功と言えるのでしょう。是非とも中学生・高校生に読んで欲しい1冊です。

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紙の本

紙の本Q&A

2005/10/11 02:07

日常に潜む恐怖が忍び寄ってくる・・・!?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本を読んで、あなたはどんな印象を持ちましたか?

「・・・とにかく怖かったです。私が過去に読んだ本の中で5本の指に入る怖さでした。夜に読んだことを後悔しましたよ」

ほぉ、ホラー小説なんですか。

「いいえ、ホラー小説とはちょっと違います。まぁ、現場の凄まじい状況などの説明はグロテスクではありましたが、実際の災害の現場ってそういうものでしょう?ニュースなどでは流れないから実感が湧かないだけで。私たちは辛い現実から目を背けているから・・・。表面的に怖がらせようという趣旨のお話ではないと思います」

なら、謎解き小説ですか?関係者の証言の中から事故原因を探るというような。

「それも違います。確かに原因究明も読者を引きこませる魅力の一つではありますが、それ以上に被害者を中心とする関係者が『どんな気持ちで現場にいたのか』『事故が起こった後どんな気持ちで過ごしているのか』にスポットを当てて聞き込みがされているんです。そこには意外な事実が隠されていて、読者を驚愕させるのです」

なるほど、客観的視点から人間心理を探求していくのですね。

「そうですね。でも不思議なんですよ。多くの人の視点から事件を知ることによって、客観的に情報を整理することができるかと思いきや、むしろ読者は先入観だらけになるのではないかと思う。この感覚は異質です。著者の筆力のなせる魔法なんでしょうか」

先入観・・・何だかあいまいな表現ですね。

「う〜ん、上手く言えないんですけど、彼らは決して特別な人間ではないんです。どこにでもいるような、もしかしたら私自身かもしれない。読んでいて『あの感情、知ってる!』という気分になる。だからどこか客観的に読むことが許されなくなっていく・・・とでも言ったら良いのでしょうかね。そこが怖さにつながるんですよ!本当にゾッとするような」

明日は我が身ですか。
何が起こるかわからない世の中ですからね、本当に。

「ここの所、テロや大きな災害が増えているでしょう?こんな時代だからこそ、この本は手に取って読まれるべきだと思います。どこにでもあるような郊外の大型ショッピングセンターが、大事故の現場になりうるという事実、これは『恐怖』以外の何ものでもないですよ」

しかもその原因は全くわからない・・・。

「本当に救われない話ですよね。しかし、一番怖いのは人間の心なのかもしれません。逆に言えば人間が心を強く持てば、人を守ることもできる・・・と気付かせてくれました。この本が警鐘を鳴らしているのですね。こんな事件、絶対に現実に起こしてはいけません!そうです、絶対に」

ええ、こんな凄惨な事件は本の中の世界だけで充分です。
大丈夫ですよ。本書のおかげで、私たちは疑似体験できたのですから。

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紙の本

紙の本奇術探偵曾我佳城全集 戯の巻

2005/04/13 15:28

奇術と事件の様々なトリックに彩られた魔術城、ここに現る!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人気絶頂の最中の結婚、そして惜しまれながら引退し、奇術界を去った「曾我佳城」という名の美貌の女マジシャンは、今や伝説となり語り継がれている。
引退後も彼女の周囲には多くの謎が集まり、そしてまるで手品のように解き明かしていく。
そんな彼女の夢は古今東西の奇術道具や資料を取り揃えた殿堂作り。完成間近の城を前に彼女が魅せた最後のトリックとは?

この作品は《秘の巻》と《戯の巻》の2巻から構成されています。前者が上巻に当たります。
どちらから読んでも大丈夫ですが、私は絶対に秘→戯の順に読むことをお勧めします。
泡坂さんの短編は個々に独立したお話ではありますが、シリーズ全体に一つのトリックが仕掛けられているからです。
曾我佳城シリーズも同様で、多少の前後はありますが、下巻に進むにつれ魔術城が徐々に完成に近付いていきます。また、佳城の弟子である串目匡一の成長も楽しみの一つです。

奇術素人の方でも問題なく世界観に入れますし、随所に登場する解説によって奇術について詳しくなれるというおまけ付きです。
また、「奇術」というと奇抜な物理的トリック中心かと思われがちですが、そんなことはなく、非常にシンプルかつ盲点を突いたトリックも多く、純粋なミステリとして楽しめます。
心理描写もお見事。時には登場人物と自分を重ね合わせて感情移入してしまうことも。

秘・戯合わせて22の短編が収録されていますが、私は特に戯の巻の「天井のとらんぷ」が好きです。
味のあるトリックも然ることながら、登場人物達の心理を的確に捉えているなぁと思います。
子供のイタズラから始まる謎なのですが、その現象が広まる過程、つまり「ブームの元は何処なのか」を追う過程が面白くって、ページを捲る手が止まりませんでした。
更に待ち受ける意外な真実、そして佳城の登場シーンはドラマのワンシーンのようでした。

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紙の本

紙の本平井骸惚此中ニ有リ

2005/05/13 20:50

不思議な文体から繰り出される、大正浪漫薫る本格探偵小説!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

○○賞受賞作!と華々しいタイトルがついてる作品には、必要以上に期待をしてしまう私がいます。本書も第3回富士見ヤングミステリー大賞受賞作ということで、読む前からすでに私の心の中に高いハードルが。(笑)

で す が!

★の数でもわかって頂けると思いますが、大満足vv
いや〜、久しぶりに「良い作品」に出会えた気がします。

舞台は大正十二年。日本を代表する「江戸川乱歩大先生」がまだ新人作家だった頃の話であります。
乱歩の作品の素晴らしさを目の当たりにした探偵小説評論家兼作家である池谷氏は、自分の才能に対して悲観的な思いを書き綴った日記を残し、家の庭で自殺を謀ります。
家の出入り口には池谷氏の奥さんが、更には庭に通ずる小道には隣のたばこ屋の目が光っており、「誰も通っていない」と証言。さてはて、現場は密室状態であったことが判明するのであります。

噺家さんの語り口調をそのまま文章化したような、独特な地の文が不思議な味を出しており、最初はちょと読みづらいとさえ思っていた文体が読み進めるうちにだんだんクセになっていきます。
また、随所に使わているカナ文字が効果的で、大正時代の口語調を上手く表しているように感じさせ、キャラクターをより引き立ててます。
特に探偵役の骸惚先生と澄夫人は魅力的。こういうライトノベルで既婚者のキャラクターが全面的に出されているのは珍しい気がしましたが、夫人あっての骸惚先生です。二人の微妙な力関係も本書の読みどころかと。(笑)
主人公の河上くんもお調子者で軟弱な青年っぷりが皆に愛されるキャラで、涼嬢を始めとする「強い」ご婦人方との対比が面白いです。

また、著者のミステリに対する誠実さが随所に滲み出ており、上記の乱歩のくだりや、「モルグ街の殺人」の登場、骸惚先生の口を借りて語る密室論など、ミステリファンの心をくすぐる小ネタも満載です。
犯人の動機に関しての考察では、森博嗣氏の「黒猫の三角」を思わすような哲学的な一面をも見せてくれます。
ミステリを読みなれた人ですと、容疑者の少なさゆえ犯人はすぐにわかりますし、密室トリックに関しても少々拍子抜けする点もありましたが、きちんとした「本格」の枠組みの中で新しい楽しさを見出してくれる本書には、ライトノベルとしての魅力が存分に詰まっております!
是非2巻も手に取ってみようかと。楽しみが増えました♪ありがとう。

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紙の本

紙の本鳥人計画

2005/05/02 12:07

鳥を目指した男達の熱い冬のミステリ。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

角川文庫から本書が発売されたのが2003年とわりと最近のことなので、新しい作品なのかと思っていたら、初出は1989年。思いの外古い作品で大変驚きました。
15年経った今でも全く色褪せていません。
もちろん、15年なんてたいして昔のことじゃないかもしれませんが、その間に冬季オリンピックが、4回行われているんですもの!

まだ子供だった私の記憶には残っていませんでしたが、調べてみたところ、1988年に行われたカルガリー大会での、日本ジャンプ陣の成績はお世辞にもあまり良くありませんでした。団体11位。個人も70・90m級(当時はこのようなくくりだったらしい)共に10位以内に日本の選手の名前はありません。
多くの人々の記憶に残っているであろう原田雅彦選手や船木和善選手はこの時まだ登場していませんでした。

その時代背景で書かれた作品だと思って読み返してみると、また違った感慨が胸に広がります。
外国人選手の圧倒的な力を目の当たりにし、それでも日本人選手たちはいつか自分が一番遠くまで鳥のように跳ぶ姿を夢見て練習を重ねていたのでしょうか。
そして、その夢を叶えた後輩達の姿を、どのような思いで見つめていたのでしょう。

・・・な〜んて語っていると、スポーツ小説を読んでいたかのようですが、本書は「ミステリ」です。
しかしながら、鳥を目指した男達のドキュメンタリーのようでもあります。いや、もちろんフィクションなんだけど。
そんな錯覚を起こしてしまうほど、この作品はジャンプ界を緻密に描かれています。
これだけジャンプに詳しくなり、選手達の心境を理解するにはどれだけの取材を重ねてきたのだろう、と脱帽するばかりです。
特殊な業界を舞台にしているにも関わらず、読み進めているうちにいつの間にか読者はジャンプ界のいろはを知り、「ミステリ」として本書を楽しむ為の下地作りも自然にできてしまうのがまたすごい。
スポーツとミステリが見事に融合しています。

もちろん、ミステリとしての魅力も存分に発揮されており、今まで体験したことのない不思議な謎解き合戦が読者を待っています。
あらかじめ犯人がわかっており、様々な物証から探偵が追い詰めていくコロンボ方式のミステリは数多くありますが、本書のすごいところは、更に犯人が密告者を推理するという要素が含まれているところです。
警察が犯人の犯行方法・動機を追い(How・Why)、犯人が密告者を追い(Who)、これでもか!というくらい贅沢に謎が散りばめられています。
刑事の視点、犯人の視点の他に、第3者的存在の選手の視点が交差し、一つの真実に向かって収束していく展開に引き込まれ、一気に読まされてしまいました。
序盤からかなり重要な証拠や、推理のヒントとなる情報が読者に与えられるにも関わらず、その結末は更に上をいくものでした。
「おっ、もしかして?」なんて自力で真相解明した気になってぬか喜びした私です。(^^;)
ここは一つ、あなたも鳥人達のジャンプに賭ける青春を味わいつつ、純粋に騙されてみませんか?

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紙の本

主人公妻木の熱血探偵ぶりが最高!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ドラマ化もされて話題になったコミックスですが、推理を楽しむというよりは、現実的なようで非現実的な探偵家業を覗き見る面白さがあります。
決してスマートじゃないんですが、地道な調査や人脈など、普段はあまり光の当たらない部分がうまく描かれているなーと。
探偵モノ好きなアナタには是非読んで欲しい一作。

濃ゆ〜いキャラクター設定も然ることながら、青年誌特有の迫力のある画は読みごたえ満点♪ 時に格好良く、時に気持ち悪い金欠熱血探偵・妻木を愛せずにはいられません。
根底にある温かいホームドラマのような雰囲気が、ストーリー全体から感じられ、事件解決の時にはちょっぴり感動しちゃったりするのです。

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紙の本

進化した「ライトノベル」はジャンルの垣根など簡単に越えてしまうのです。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今、ライトノベルが熱い!

それは本好きの人間なら誰もが知っていることですが、実際愛読している人は一部に限られているのではないでしょうか。
そもそも本屋ではコミックスの売り場近くに置かれていることが多く目にすることがないという人や、表紙の絵柄によっては「買うのが恥ずかしい」と思う人(その点はbk1では問題ありませんが)など、特に年齢が上になるほど障害が多いものです。

ライトノベルが中高生をターゲットに作られているとは言え、大人が読んでも充分に楽しめる名作がたくさん隠れていることは間違いありません。
かと言って、新人育成に力を注いでいるレーベルが多く、ただでさえ入れ替わりが激しいジャンルですから、本当に自分にあった面白い本に巡り合うのはなかなか難しいものです。
本書ではランキング上位の作品だけでなく、様々なレーベルから厳選されたオススメの作品が紹介されており、すでにライトノベルが好きな人はもちろん、興味はあるけど読んだことがない人にこそ楽しめる親切な作りとなっています。

内容もただのランキング本というよりは、ライトノベルの文化そのものを紹介されているのが興味深い点です。
そもそも「ライトノベル」とは何なのか?という導入的要素や、ライトノベルの歴史、各レーベルの特徴などが書かれており、近年のブームの背景を読み取ることもできます。
通常のノベルスとして発売されてはいるけれども「ライトノベル」に近いテイストを持つ作品も増えてきており、西尾維新を初めとする人気作家の作品もランクインしており、ジャンルの垣根が低くなりつつある事実にも注目したいです。

また、このランキングと一般書店の売り上げデータとの相違が面白いところ。
シリーズものの強さを見せ付けつつ、まだまだライトノベルが一般的に認知されていない現実が露見しています。
本書を通じて良作にスポットライトが当たるよう、期待しております。

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