サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 只野ようこさんのレビュー一覧

只野ようこさんのレビュー一覧

投稿者:只野ようこ

9 件中 1 件~ 9 件を表示

収穫。ただのファンタジーと思うなかれ。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

基調の物語の中、スルスルと違った味わいの9つの物語が始まって終わるのですが、その一つ一つに、読み手の先入観をかわす心地よい「裏切り」が用意されています。と言ってもトリックではない。登場する「騎士」「ドラゴン」「魔女」「怪物」が、それぞれの思いを抱えていて、予想外のドラマが展開するのです。完成された短編映画のよう、と言っては語弊があるでしょうか。

作家の内面が反映されながら、情に走らず、抑制が効いている点、ある種、爽快感があります。特に6つ目の物語「乙女」。読むと、あなたはある動物になって体毛を逆立て、森を疾走する快感を味わうのでは。8つ目「スキオポド」も不思議な読後感。トールキン「指輪物語」で著名なアラン・リーの絵もゆったりレイアウトされ、こういう媚(こび)のない本こそ、膝の間にこどもをはさんで
読んでみたい。

読んでいる大人もひき込まれて字を追う、こどもはきっと、その雰囲気も一緒に味わうのではないでしょうか。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本つきよのかいじゅう

2000/08/01 17:21

シャレてる絵本。疲れたあなたに

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大判の青い絵本。とてもとてもシャレた本です。

でも、こういう本を紹介するのが一番困る。

ゴチャゴチャよけいな説明すると、後で「ヤボ」って叱られそうで。

−−山の奥の深い湖に、むかしから住むという伝説の恐竜を、10年間、待って待ち続けた男の目の
前に、ある晩ぽっかりと現れたのは……。

2回目でも、私は夜中に声出して笑いました。待ってる男が重装備の「カメラ野郎」なのも、またオカシイ。大好きだった変わり者の中学の生物の先生が「微生物には同じコトなのに、人間は自分の役に立つのを“醗酵”、立たないのを“腐敗”と言う」と笑ってたのを思い出しました。

これは「おとなの絵本」だと思うのですが、近所の図書館の一冊には、手アカがしっかりついていて、どうやら「こどもにも」人気らしい。

シンプルで力強い、リッチな絵。

そしてこの本、字が大きくて、ごく少ないのです。

「読み」たくない人、そして「この頃笑ってないや」という人は、ぜひぜひ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本しずかなおはなし

2000/08/01 17:15

眠れない夜、「ヒツジ勘定」のかわりにどうぞ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

題名通り、ほんとうに静かな静かな本。

オオカミに襲われる、ハリネズミの親子の話だが、ボウっとにじむような月明かりの中、リアルに描かれた動物の絵が、とても美しい
。夜の森の話で、しかも、いっさい音がしないので、動物好きの人だけでなく、精神的にキリキリして、自分のリズムをスローダウン、クールダウンしたい人にも向くのでは。

その場合は、できれば寝る前、ベッドの中で開くのが最適かと思う。

寝入り対策にも効くだろうが、彼女(または彼)がそのベッドに遊びに来た時、これを見つければ、惚れなおすかもしれない。

福音館は、こういう美しいけれど甘すぎない絵本をたくさん出しており、「夜の森の話」では他にも「しろいうさぎとくろいうさぎ」という、超のつくロングセラーがある。

ただしこちらは、うさぎの恋人たちのズバリ「結婚」の話なので、つきあっている相手が見つけると、強いメッセージになり過ぎるかも。この点のみ、どうかご注意を

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本五月の力

2000/08/04 18:12

こどもは“みんな”知っていた

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大人には二種類ある。こどもだった記憶を持つ大人と、持たない大人、と誰かが言った。こどもは「コドモ扱いしない珍しい大人と、する大勢の普通の大人」と答えるか。

そうだった。こどもの頃は体中がアンテナで、バカにされれば一発で分かった。その上でどうすべきかこどもなりの正義で考え、みんなが動いた。だから学校が成立した。そういったことがよみがえる。

これはコドモでないこども、でも、こどもでしかないこどもたちの話であり、物語の中で物語が開く、これ自体が玉手箱のような本であり、大人が自分の“こども”、あの時期の匂いを取り戻す本であり、見えないものが「見える」こどもの話である。そしてカメの話であり、猫の話でもある。

いろんな要素のカケラを持ち、覗くたび見えるものが違う万華鏡。すきがあるかもしれないが、光る−−。登場するこどもが自然でピンピンしてること。

書いた人が、特別丈夫なアンテナを今も立てていることは、保証付き。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ぼくがとぶ

2000/08/01 17:28

「飛ぶ夢」をしばらく見ない

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

突然ですが、一時ゲームセンターにあったナムコの「プロップサイクル」を知っていますか。飛ぶ自転車に乗り、赤い風船を割っていく単純なゲームなのですが、付属の自転車を足で漕いでも、高度がうまく調節できない感じといい、景色がかまわず目の前に展開するとこといい、自分の「飛ぶ夢」と重なって、不覚にも涙しました。

そして、こどもの頃よく見た「飛ぶ夢」を見ないことに気がついた。

しかし見つけたのです。

ひとりで空を飛ぶ、あの浮遊感と、不安感とがあるこの本を。

男の子が、木と、たぶん防水布とで複葉機を作ってます。失敗、やり直し、成功、極地で記念撮影。

そのあとは? まるで証拠写真のように、一枚一枚絵が見せられ、あいまに気が向くと(その男の子の手がすくと)こっちに声かけたり、ひとりごとしたりしてくれる。

ことばはそのときだけ。読み手は、ごく近くで見ている気になる。見られているような感覚もある。これ、とても不思議な本です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本日本幻想小説傑作集 1

2000/08/01 17:25

大人が楽しむ、大人のためのシュール

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「童話集」でなく「こどもの本」でもない。あえて加えた第一の理由は、ここで、小川未明(「赤い蝋燭(ろうそく)と人魚」の作家)の「金の輪」という短編が読めるから。しかも選び抜かれた他の作家の作品と一緒に、「挿絵なしの文章だけ」という最良の形で。

読んでみてください。なんときれいで残酷か。

また書いた「童話作家」のなんと残酷なこと。

「中学生の頃、改造社版現代日本文学全集の中の“少年文学全集”で読み、ずっと記憶に残っていた。

つい最近まで小川未明の作とは知らなかった」と編者は書く。探したんだろうな。もし、これが好みでなくても、同じ本には、筒井康隆「佇(たたず)むひと」小松左京「くだんのはは」江戸川乱歩「押絵と旅する男」他、続く・巻でも夏目漱石「夢十夜」川端康成「不死」阿刀田高「あやかしの樹」等の「粒選り」が揃う。

戦前のこどもが読むなと言われながら覗いたのは、こんな本だったのでは。大人が楽しむ、大人の本。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

ズボラでテキトウで「大好き」だ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルは忘れても、手に取れば「ああこれ、知ってるッ」って言う人は多いのでは。私もそうで、読みかけてから、幼稚園で奪い合いをしたのを思い出した。

それと映画「となりのトトロ」でメイとサツキの姉妹が「本に出てきた“トロル”に会ったー(舌が
回らず後から「トトロ」となる)」と叫んでいたのは、多分この本に登場する、食い意地のはったトロルではないか、と。なぜなら体型がソックリだから。

全編を通じ「食い気がすべて」「めんどうなことは先のばし、強い人に任せればよい」という、なんともおおらかというか、ズボラなストーリーが展開し、怠け者の私は、読むとなんだかとても落ちつく。ズボラもズボラ、出てくるヤギの名前も(三びきいるのだが)「どれもがらがらどん といいました」。最後は「あぶらがぬけてなければ、まだふとってるはずですよ」「チョキン、パチン、ストン。はなしはおしまい」。

いいでしょう。昔ばなしはこれでなくっちゃ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本セロひきのゴーシュ

2000/08/01 15:54

夜半の虫の音、夜明けの空気がしみる本

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宮沢賢治の童話の本は数あれど、これは極め付き。

ノビノビして、絵自体に詩情がある絵が添えられたことで、これはもう、ただの童話の本でも、絵本でもない、本としてひとつ、別の命を持ってしまっていると思います。ほとんどこれくらいにしか作品を残さず、頼まれるままに絵を描き散らして早世した画家・茂田井武の水彩画がすばらしい。

物語にも、読む人を元気づける「動き」があります。小さな町のトーキー映画館付きオーケストラの、下手くそで指揮者にいじめられるセロ(チェロ)弾きの青年が主人公。猫が嫌がる「インドのとらがり」という曲が出てきたり、夜中にとぼけた狸の子がスティックかついで太鼓の稽古に来て、逆に稽古をつけられたり、かっこうの「かっこう」にも音程があったり。田舎の夏休み、虫の音聞きながら「ああ音がしない」と思ったことがありませんか。そこにこういう音が加わるのです。

湿った土の匂い、明け方の青い空気までがただよう本。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

目からウロコの「色っぽさ」。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「本当は恐ろしいグリム童話」など多くの関連本の原典。

 「残酷すぎる」と当時(19世紀)ドイツの親からのクレームで、修正を加えてしまう「前」のオリジナル初版の完訳「初版グリム童話集・全4巻」は話題になったが、これはそこから「白雪姫」等のおな
じみや、初版ならではの話を選び、往時の挿絵も添えた“ベストセレクト”版。

 騒がれたように「白雪姫」も「ヘンゼルとグレーテル」も、子捨て・子殺しをしたのは「実母」だったのだが、より重要なのは、それも含めて、それぞれの話の細部や語感がなんとも「色っぽい」こと。例えば「白雪姫」の冒頭、くだんの母妃のひとりごと、「この雪のように白く、この血のように赤く、この黒檀のように黒い子どもがほしい」。

 冷たい雪の上に、誤ってこぼした自分の血を、黒々した窓枠から白い彼女の顔が覗きこむ。

 なんてきれいな視覚イメージ。

 口伝えの伝承文芸ゆえの、この「艶っぽさ」。

 あなたも一度は体験すべき。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

9 件中 1 件~ 9 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。