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黒羽 亮一さんのレビュー一覧

投稿者:黒羽 亮一

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本学長大学改革への挑戦

2000/12/06 15:15

16人の学長へのインタビューから,大学の近況がうかがえる,便利な読み物

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 大学研究家では第一人者とされている天野郁夫氏(東大名誉教授,以下敬称略)が16人の大学学長と対談した記録に,天野の学長論が追加されている。天野はほかにも学長インタビューを行ったことがあり,総計は50人ほどになる。その結果,一般化した学長論は述べにくいという。それほど,日本の大学の管理運営は多様化しているともいう。
 しかし,学長は国立・公立ではすべてが,私立でもいまでは相当数が,学内の選挙で選ばれる。ということは票田の広い者が選ばれがちである。国立で医学部や工学部のある大学は,そこが大票田になるから,学長も多い。
 しかし,国立でも小さな大学や公私立大学では,大体において大学ごとの個性というかカラーに応じたような学長を選んでいる場合が多いように見える。本書では,京都大,広島大,東京工業大,東京外語大(以上国立),法政大,日本大,学習院大(以上私立)の7大学がこの部類に入る。これらの大学の学長発言には,校史の中の長所を生かし,失敗は繰り返さないように経営しているさまが見られた。
 オーナー型の学長は,東海大,産能大,山梨学園大に見られた。これも単に世襲というのではなく,専門分野を持ったり,留学経験があったりして教学の長としての顔を持っている。
 あとは雇われマダム型の学長である。新潟国際情報大,高知工科大は新設だから,これは当然である。
 戦前の巣鴨高等商業学校以来の歴史のある千葉商大が,慶応の名物教授で,前税制調査会長の加藤寛を呼んできている。北星学院大と広島修道大は,いずれも戦後の大学だが,2人の学長は学内昇進型で,古い私大に近いらしい。
 もう一校,北京大の学長が登場しているが,これは学内の選挙で候補を3人に絞り,国家教育委員会がそこから1人任命するという,中国の面白い仕組みを紹介している。
 このように,新旧,大小の大学のそれぞれの特色を知るのに便利な本である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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副題ははさらに「学力向上の教育改革を」とある。中堅文部官僚が最近の同省の政策を批判しているのが面白い

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 学歴社会の下での受験競争が,「非行・暴力・いじめ・不登校などの教育荒廃を産んでいる」「人間性がおろそかになっている」「効率・画一的な教育では個性や創造性は育たない」という「勉強否定論」が流布している。
 これに対して著者は序章では,「文部省を中心に進められた教育改革はこの世論に応えるかのように,知育偏重の風潮や,知識詰め込み型の教育を改め,ゆとりのある教育や学校生活を目指すことを謳ってきて,そのことが世論をさらに強化してきたとも考えられる」という。あとがきでは,「私はいわゆる文部官僚,勉強否定論的な教育論が依然として支配的な空気となっているなかで,私のような立場のものが本書のような主張を行うことは,きわどいことかもしれない」という。本文では,「我が国のほとんど唯一の資源ともいうべき人材の質を支えたのは,読み書きそろばんといわれる基礎的・基本的な知識・技能とともに,勤勉さや几帳面さといった地味な貴重な徳性だった。これらが音をたてて崩壊するような事態は,絶対に避けなければならない」とする。
 勉強否定論は,戦後の成長が一段落した1980年ごろからおこり,その直後に臨時教育審議会があって,文教行政の硬直さが批判された。そして文部省の姿勢も変わってきた。その曲がり角のころ入省した著者は,初等中等教育局や県の教育委員会という現場で政策立案や行政に携わった。途中英国駐在のアタッシュとして,サッチャー教育改革を現場で体験,いままたワシントン大使館から日本を見つめている。その知見から,一世代前の先輩が進めてきた勉強否定に組する政策に批判的なようである。
 だが,それほど心配することもあるまい。評者の世代などは学齢期が戦争末期から戦後で,勉強したくもできなかった。「63制野球ばかりがうまくなり」といわれた学力低下世代だったが,そのために「日本がダメになった」ことはない。政策や行政も「振り子」のようなものだ。著者たちの世代が,胸を張って先輩の仕事を矯正すればよい。
(C) ブッククレビュー社 2000

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先進各国で進行中の教育改革の内容を知るのに格好な本

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 10月下旬の日経新聞一面の連載,「教育を問う」では,英国ケンブリッジ大学や,名門中等教育学校であるハーロウ校の最近の改革を報じていた。学校教育を初等中等教育と高等教育に分けて日・欧・米をごく大雑把に比較した場合,「日本は初中教育に優れ,高等教育の量的普及は大きいが質は大問題」「米国は初中教育は問題だが,高等教育は質量ともに世界一」「欧州は一部の質は高いが,大衆の教育に問題あり,全般として低調」といわれてきた。
 その欧州でも凋落気味だった英国で,1988年にサッチャー政権により行われた教育改革法により,初中教育の全国的カリキュラムの設定などの改革が図られた。同時にごく少数の大学とより多数の専門学校(ポリテクニック)に分かれていて高等教育を一元化して,単線的制度の中で競争するという米国型に改めた。さらに日本の臨教審・中教審答申のような性格の,通称「デアリング報告」(1997年)では,大学の教育内容の改革と量的拡大が提唱されている。報告の直後に労働党政権に代わった。かつて教育政策に関しては保守・労働の2大政党がかなり異なり,その再三の交代が改善を遅らせていた面があったが,現政権はおおむね保守党政権時代の改革を引き継いでいる。
 米国ではレーガン政権時代の1983年にやはり政府の教育諮問委員会から「危機に立つ国家」というものものしいタイトルの勧告が行われた。全般的な学力低下や青少年非行の増大に,教員と関係者の覚醒を促したものだった。その後も教育政策の重点化は続いて,97年の大統領白書では,相当数の州で実施されている全員学力テストを全米に拡大することが提唱された。しかし大学の方は,ノーベル賞数では各国を圧倒的に引き離している。社会科学系では教授と政府高官や経済人との人事交流も活発で,健全性を維持している。
 「危機に立つ国家」には,57年の「スプートニック(人工衛星)ショック」になぞらえて「トヨタショック」という言葉が登場していた。当時は注目されていた日本の経済成長が,質量ともに充実していた初中教育によって支えられてきた,まさに「教育立国」だった日本が模範とされたのである。しかし,最近の日本の初中教育はかつての米国と同様の道を歩んでいるかに見える。日本の大学に対して,膨大な財政投資と世界共通語の英語の力によって世界中の知能を集積できる米国と比較して,「見劣りすぎる」と評する最近の世論には酷なものがある。むしろ善戦している部分を称揚したいが,それには評価方法の改善も必要である。ともかく,サミットでさえ教育をテーマとし(99年),今春には東京で「G8教育大臣会議」が開かれるほどの,「知識主導型社会」(knowledge based society)にあって,幼稚園から大学院まで,学校教育の役割は重要である。
 本書は,文部省の米・英・仏・独・露・中国の調査担当専門職(比較教育学者)の6人が,担当国の教育改革の背景・経緯,方向性を述べている。それも,教育行財政,初中教育,高等教育,教員,生涯学習とそろえてあり,比較しやすい。また資料編には改革提言や関係法律の内容が紹介されている。総括部分はOECDやユネスコ担当のアタッシュとして国際経験の豊かな本間政雄審議官と,名古屋大教授に出向していた高橋誠課長が書いている。評者の見解のように,日本の現状に照らしてアクセントをつけて述べるというものではないから,面白い読み物ではない。ということは逆に,教育改革を冷静に考えるための貴重な資料と言えるのである。
(C) ブッククレビュー社 2000

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