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  3. 遊子さんのレビュー一覧

遊子さんのレビュー一覧

投稿者:遊子

25 件中 1 件~ 15 件を表示

究極のカップル

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

六十歳を過ぎて出会って、二十年。寄り添いながら生きてきた
ミノルさんとイーディスさん。実は今でも言葉はほとんど通じない。
それでも、生活に問題ないのだから確かに心が通じ合ってるんだと思う。
ふたりで春は目もくらむような桜吹雪のなか、秋は浄土のような
紅葉の錦のなかを目を細めて散歩する。満ち足りた日々・・。
国籍もそれまでの生き方も違うふたり。そんなふたりが違和感もなく
寄り添えたのは、それまでの人生を精一杯真剣に生きてきたからだと思う。
そして、ミノルさんは奥さんに先立たれたとき、イーディスさんは
異国の地で次々と友人や知り合いが自分の近くから離れて行く不安のなかで
ふと立ち止まったらお互いが目に入ってきた。
それは、偶然。でも、幸せな「今」があるのから出逢うべくして
出逢ったと思わずにいられない。
この出会いは、それまでを一所懸命に生きてきた二人への神様からの
贈り物だったのかもしれない。
私もこれから先いくらかの恋愛をすると思う。
やっぱり今の私だったら、相手に嫌われたくないとか、好くみてほしいとか
尊敬されたいとか、いろんな気持ちを抱えながら相手をみると思う。
こっちに振り向いてほしくて、駆け引き的なこともするだろう。
けれども、そういう恋愛を経て、ミノルさんやイーディスさんくらいの
歳になったときには、お互いをいたわりあいながらも、相手がとなりに
いるということが幸せ。
綺麗なものを見て、「綺麗だね」と、おいしいものを食べては「おいしいね」
と笑えるようになっていたい。
それには、がむしゃらでも今を真剣に生きることが大切なのかな。

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紙の本ルージュ

2004/01/17 15:41

裏切り

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

トレンディドラマのように物語は始まる。
化粧品会社に入社したのに、化粧がきらいなヒロイン里彩。
しかし、届け物をした撮影所で新商品のキャンペーンモデルに大抜擢!
まあ、よくある展開だ。

里彩はモデルになることを拒む。だってデザインがやりたくて
入社したのだから。ヒロインは純真無垢で潔癖だ。欲がない。
そして、彼女は男性経験がない。男の人と付き合ったことがない。
穢れない彼女をお金も名声もあるコピーライターが惚れる。
精錬潔白な不思議なお付き合いが始まる。
売れっ子アートディレクターも彼女に興味を持つ。
まさに、恋愛小説!

しかし、アートディレクターができてきたあたりから雲行きが
あやしくなる。ん? なんだか予想してたのと違うぞ!?
先が読めているはずの物語が煙に包まれる。
そして、最後の最後に ストン 突き放される。意外なラスト。
ここは読んでのお楽しみ。

私は裏切られる小説が好きだ。
あれこれと先を予想しながら小説を読む。しかし、その予想を
越える展開にドキドキハラハラ。
この「ルージュ」は予想通りに物語が進んでいく。
あ〜、もう結末はこうだな…読者に思わせておいて最後の最後で
裏切る。今まで思い通りに進んでいただけにたショックは大きい。
柳美里初めての恋愛小説。ぜひとも純真無垢で美しい彼女(ヒロイン)に
裏切られてほしい。

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紙の本ふたり

2005/08/19 00:18

ふたり・・でもひとりの人間

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

死んだおねえちゃんの声が聞こえる・・・・。
誰よりも賢くて、優しい姉千津子。
妹の美加はいつもそんな姉に隠れて目立たず、
穏やかにすごしてきた。けれども、突然の姉との別れ。
美加は別離の悲しさとともに何もかもを”自分で”対処し、
”自分”が立ち向かっていかなくてはならなくなった。
今まで見向きもしなかった人たちが、
千津子の妹の美加を見出したのだ。
最初、美加もショックだったのだ。
けれども、千津子なしでは立ってもいられない母を見て、
姉のようにならなくては!と思うようになる。
姉のように優秀で、姉のようにしっかりとして、
姉のようにたくましく・・。
精一杯背伸びをして、頑張って頑張って。
そんな美加がいっぱいいっぱいになった時、
千津子の声がして美加を助けてくれた。
そして奇妙な姉との共同生活がはじまる。
姉はいつも頑張る美加を助けてくれた。
そうして、美加は少しずつ、
自分の道を見つけていくようになる。
恋もした。友情も深めた。
今まで苦手だった、人前にも出るようになった。
自分だけに聞こえる姉の声とともに
「青春」と呼ばれる日々を美加は謳歌した。
そして、家族最大の危機を乗り越えたときに、
姉の声は突然・・。
姉の声が聞こえるようになってすぐの美加は、
より姉に近づこうとしているように思う。
姉のようになりたい。姉のようになれば、すべてがうまくいく。千津子は美加にとって永遠の憧れであり、目標だった。
そして、そんな姉に近づくことによって、
美加は”自分”を成り立たせようとしている。
しかし、後半になるにつれて美加は我れ知らず
”美加らしさ”を否定しなくなっていくように思う。
誰よりも目立って、人気のある姉。
それを目指して頑張る美加だけど、ふと気づく。
私は本当にそんな風に人の前にたちたいと
思っているのだろうか。
いや、そうは思ってない。
注目をあびみんなの真ん中にいる姉を誇らしいとは思っていた。
けれども、自分は縁の下の力持ちのように、
他人から注目されなくても
確実に皆の役にたつような存在があっている。
そう、気づいた。
ラスト、千津子も気づいたのではないだろうか。
千津子にとって美加はいつまでもかわいいけれど
おっちょこちょいの妹。
それはいつまでもたっても変わらない。
けれども、妹の美加である他に、誰かの親友であり、
誰かの恋人である美加。
なにより、美加、というひとりの人間であることに。
人は憧れや目標をもつ。
しかし、それはあくまでも憧れであり、目標だ。
それとまったく同じ人間になることはできないし、
限りなく本物に近いイミテーションでは価値がない。
美加は姉とともに成長し、姉という憧れや目標を膨らませて
アイデンティティーを確立していった。
たくさんの人たちがそのひとの人生の糧となることはできる。
けれども、誰一人としてひとの人生を支配することはできない。
そう、それが例え死者であろうとも。

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紙の本東京湾景

2004/03/08 15:01

今時の恋愛

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今時の恋愛小説だ。メールで知り合ったふたり。この出会いは遊びなのか
本気なのか相手の心を探りあい、そして自分でさえ自分の気持ちが
わからない。今時の若者。今時の恋愛。

心と心でつながることが陳腐に思えてしょうがなかった女。
心で繋がっていると信じた恋がもろくも崩れ去り、永遠を
信じられなくなった男。そんなふたりは本音を包み隠したまま、
「どうする?」「どっちでもいいよ」と相手を気遣う…振りをする。
決断はいつも相手まかせ。それじゃあうまくいくはずがない。
しかし、男の過去「真実の愛を信じていた頃の恋」にふたりが
向き合ったとき東京湾に隔てられていたふたりの距離は縮まり、
やっとスタート地点にたった。

私もこの小説の登場人物がよく口にする「面倒くさい」「どっちでもいいよ」
という言葉を頻繁に使う。こんな気持ちじゃ何も始まらないのに。
自分はあれがしたい! これがしたい! と主張されて、え〜!?ってな具合に
否定されるのが怖いのだ。嫌われたくない。好きな人ならなおさらに。
でも、何にも始まってないのに、嫌われることを頭のなかで
シュミレートしてもしょうがないよな。
この小説を読んで、当たり前のことに気づいた。

今時の恋愛。まず、始めるところからはじめましょう。

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わが食いしん坊人生に一遍の悔い無し!

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いろんなところで公言してますが、私は外でおいしいご飯と
おいしいお酒を飲むことが大好き。自ら”食道楽”と認めるほど。
そんな私が生唾を飲み込みながら、何度も読み返すのがこのマンガ!
もう、本当にどの店もどの料理もおいしそう!
よしながふみさんの初グルメショートショートなんですが
登場人物はYながFみさん(笑)彼女も相当な食いしん坊。
恋人ではないけどいっしょに住んでるS原さんやゲイの友人
甘党の友人、食っても食ってもスレンダーな燃費の悪い友人
食いしん坊な友人たちを巻き込みながら食いしん坊街道をつっぱしる。
デートといえば飲茶を食べ、謝罪のためにすしをおごり
お別れ会といってはベトナム料理に舌鼓。
もう本当に何度もいうけどお-い-し-SO-!
あったかくって香ばしくってご飯と一緒にふわっと
ほどける焼き穴子のにぎり(タレ)とか
がっつりかにのダシの味のするトマトクリームソースの
かにのリゾットとか
踊りたい・・踊りたくなるほど悶絶する
甘くて濃厚で肉がとろける赤ワイン煮・・とかとかとか。
もう、東京まで新幹線乗ってでもたべに行きたくなってしまう。
ほらほら、食べたくなったでしょう。
そして、自分の連れてった店にけちを付けられんのだけは耐え切れん!
と言って、久々にできたヒットな彼氏に別れをつげて、なおかつ
わが(食いしん坊)人生に一遍の悔い無し!と言い切る
Yながさんには惚れる。
純粋にマンガとしても、グルメガイドブックとしても楽しめます。
願わくば、紹介するお店の関西バージョンでぜひ2作目を!

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紙の本麦ふみクーツェ

2005/08/10 22:46

この社会を最先端でつくっているのは「へんてこ」な人間なんだと思う

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この物語に出てくる人たちは「変わった人」が多い。
主人公は「ねこ」。人一倍体がひょろ長くて、
誰よりもねこの鳴きまねがうまい。
ねこのお父さんは数学者。素数をこの世でもっとも美しいのものと信じ、
ねずみと素数の実験に没頭している。
ねこのお祖父ちゃんは、誰もが認めるティンパニスト。
普段は好々爺なのに、一度打楽器のバチをにぎったら
人がかわったように怒鳴りちらして楽団をまとめあげる。
三人が暮らす町にはたくさんの変わった人たちがいて、変わった事件がおこる。
時にそれは笑いに満ち、時にそれは絶望的なまでに悲しい。
そして、いろんな経験をしながらも、自分の「わざ」は音楽だと気づき
ねこは音楽の世界へと進んでいく。
ねこの先生である世界的な音楽家のチェロリストはいう。
へんてこはめだつ。めだつから人よりひどいめにあう。
それは、森にハトの群れがいて、その中に一羽だけ白いハトがいたら
真っ先に狙われるのはその白いハト。
りんごの木にひときわ大きなりんごがあれば、一番にきつねやキツツキに
狙われるのはその大きなりんご。
へんてこってだいたい、真っ先にひどいめにあう。
へんてこで弱いやつは、結局はひとり。だからそれぞれ
自分のわざを磨かなくてはならない。
そのわざのせいで余計めだっちゃって、いっそうひどいめに
あうかもしれない。でもわざをみがかなくてはいけない。
そこで、ねこは気づいた。
なんで、へんてこはそうまでしてわざを磨かなくてはならないのか。
それは、つまりへんてこさに誇りをもっていられる
たったひとつの方法だから
ねこにとってそのわざは、音楽だった。
私は、日本なり、社会の最先端を開拓していっている人種って
ここでいう「へんてこ」な人。今風にいうと「オタク」という
人種なんじゃないかって思う。
ひとつのことを突き詰めて、わざを極めていった人たち。
いまやITなんてもてはやされているけど、その最先端を担った人たちって
きっと学生時代は「オタク」と呼ばれていたかもしれない。
その他、日本のアニメーションは世界中で注目されている。
彼らは自分のへんてこさを極めて、へんてこさに誇りがもてた人たちなんだと思う。
そして、へんてこな人たちは、ひどいめにあってきたから人に優しい。
人の痛みを知っている・・・。
世はいじめだ引きこもりだと悩む青少年が増えている。
自分がへんてこだからいじめられる。自分がへんてこだから人に受け入れられない。
いろんな悩みがあって、つらいと思う。
けれども、いっそそのへんてこさを極めていってみてはいかがだろう。
きっと、明日の日本を作っていくのはそんなあなただから。
『麦ふみクーツェ』
読み終わったらきっと優しくなれる。大人にも読んでほしい。
でも、思春期と呼ばれる人たちに私は一番読んでほしい。

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紙の本ツ、イ、ラ、ク

2004/02/24 23:15

姫野カオルコの集大成

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

姫野カオルコ作品の集大成である。
以前からエッセイに笑い転げ、恋愛ベタな主人公のでてくる小説を
読んでは「女」ってヤツは…なんて思っていた。
特にエッセイは何度読んでも面白いと他人にまで勧めるくらいだ。

この『ツ、イ、ラ、ク』はそんな姫野作品の集大成ではないだろうか。
物語のなかでナレーターに徹していた作者がチラリと顔をみせ
自己主張していったりする。それがまたエスプリが効いていて小気味いい。
また、これまで作者が主張してきた「男」というのは小さい頃は
少年だったり、男の子だったりするが「女」は生まれながらにして
「女」という固有の生き物であるという持論を前面に押し出している。

小学校だろうが、中学校だろうが「女の子グループ」という
一見かわいらしいサロンは、実はどんな集団よりも恐ろしい。
新撰組の局中法度は何をしてはいけないと箇条書きになっているが
女の子グループのご法度は犯しても犯したことに気づかない
ことだってある。いかに自分がこのグループで安泰にやっていけるか
日々切磋琢磨しなきゃいけない。
そして、幼いからこそ、不条理が通る。オピニオンリーダーの
意見は絶対なのだ。…よく私もそんな世界を生きてきたなと
今になってしみじみ思う。

そんなサロンのなかでだんだんと社会性を身に付けていく少女の成長を縦軸に
大人の男との恋愛で見も心も成熟していく女としての成長を横軸に
物語は進んでいく。
ここまで顕著じゃないにしろ誰しも学校というサロンの中で
社会性という名のずるさや妥協を覚えて大人になっていくものだ。
「学生時代はよかったなあ」なんて口癖になっている人多いでしょう?
本当にそうだったかこの小説を読んで、振り返ってみては
いかがだろうか。

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紙の本真珠夫人

2004/01/10 00:28

一生懸命に生きてるあなたへ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「ああ、昼ドラで話題になった小説ね」
そんな気持ちで手にとった。しかし、なんと言うことだろう! 読み出したら止まらない。明日はレポートの提出日だというのにハンカチを握りしめて読みきった。友人にこのことを話すと
「真珠夫人で泣いたの!?」
とあきれた顔をした。けれども、この小説を貸した数日後、目を真っ赤にして返してくれた。ちょっとうつむきがちだった。

 この小説は大正時代という女の人がまだまだ自分を抑えなければいけない時代で、精一杯女であることに胸を張って生きた女性の物語だ。けれども、まわりは誰も理解してくれなくて、その分また不器用に肩をいからせる。そんな彼女を見ているととても切なくなって涙が出てくる。
 おいおいそりゃあちょっと出来すぎでないか?というようなエピソードもご愛嬌。だって、大正時代だもの。今とは価値観が違います。けれども、今でも自分をわかってもらえなくて歯がゆい思いをしている女性も多いはず。そんな現代の女性たちにも通じるものがあると思う。仕事疲れのお姉さん、恋愛に一息つきたいお姉さん、一生懸命に生きてる女性に読んでもらいたい小説。
 

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紙の本ニシノユキヒコの恋と冒険

2004/04/02 14:17

完璧な人間より、人間臭い人間が幸せなのです

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


かわいそうなニシノユキヒコ。

これが私の率直な感想。ニシノユキヒコはたくさんの女性と知り合って、
たくさんの恋愛をするけれど、結局成就することはなかった。
これは、彼が付き合ってるさなかに他の女の人と関係をもったり、
たくさんの女の人に愛想をふりまくからではない。
本人は「自分はきちんと女の人を愛せない」と嘆くけれどそうでも
ないと思う。(浮気性はおいといて)ニシノユキヒコはけっこう女の人と
誠実に向き合っていると思う。自分の考えを相手に押し付けたり
相手の気持ちを無視したりはしない。
ではなぜ、彼が最後には振られてしまうのか。

完璧すぎたからである。

もちろんニシノユキヒコは完璧な人間なんかじゃない。けれども
女の人から見ると完璧な人間に映ってしまうのである。
かっこよくて、フェミニストで、頭もいいし、かと思うと少年のようで。
理想なのである。そんな男と付き合って、最初はとってもうれしいんだけど
ふと冷静になる。こんな人が本当に本当に私のことが好きなのか?
今は好きでもこれからもずっと私を好きなのか?
ニシノユキヒコに捨てられたら私生きていけない・・・。
口でどんなに愛してるといっても、人の気持ちはわからない。

そう、わからないのだ、人の気持ちは。ニシノユキヒコがどんなに
その女の人を愛していても、彼の完璧さがうそ臭くしてしまう。
浮気性の彼だけど、もし女の人が結婚にOKを出したら浮気なんて
しなくなったんじゃないかなと思う。

ああ、かわいそうなニシノユキヒコ。

完璧な人間。それよりもどこか不器用で女性よりも劣ったところを
もってる男のほうが幸せになれちゃう世界。
世の中ってこういうものですね。

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紙の本蹴りたい背中

2004/03/29 01:03

にな川っていい男だよ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この小説を読んで、友人たちと討論してみた。
意外だったのは、あまりにもハツに共感する人が多かったこと。
「自分も高校時代まわりを冷めた目で見てた」とか
「群れる意味がわからなかった」とかetc…。
誰しも学校という場所に疑問を抱いているものなのだと実感した。

私がこの小説でよかったなと思うのはハツが被害者のいい子ちゃんじゃないこと。
「そんなに馴れ合って、群れて楽しいか?」と周りを冷めた目で見てる割に
虚勢を張ってるのが丸わかりでかわいい。
結局ハツがまわりと壁を作って、周りを見下して、孤独な自分をなぐさめる。
この人間くささがいとおしい。

あと、討論するなかで、誰もうなずいてくれなかったがにな川って
かなりイイ男だと思う。
ちょっとコアにアイドルが好きなだけで、誰に迷惑をかけてるわけでない。
オタクというと清潔感がないように思われるけど、彼は自分で洗濯まで
やってる。おまけに女の子に部屋を譲って死ぬほど蒸し暑いベランダで
眠るような男。ハツに対してもとても紳士的だ(時々自分の世界に没頭
してしまうけれど…)。
周りが自分をどうみてるか、どういうポジションにいるかも把握していて
客観的に自分をみれる。

ハツがなんでにな川を蹴りたかったのか。それは自分よりレベルとして
下だと思って近づいたにな川が自分よりもはるかにしっかりとしていて大きくて
もどかしくなってしまったからだろう。

自分が知りたくて、自分とまわり、自分と相手を比較して、試行錯誤して。
思春期の女の子のリアルな気持ち。
とっても人間くさくて、心をゆさぶる。
この小説が評価される所以はこの辺なのだろうと思う。

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紙の本ネバーランド

2004/03/17 14:57

子どもたちの社会

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「寮」それは、親からも教師からもあらゆる大人からも侵すことの
できない子どもたちのソサエティ。一般家庭というのは平和そうに見えて
(いや、平和なのかもしれないが)フェアじゃない。学費をだして
やってるんだから、育ててやってるんだから、そう言われたら
子どもとしては俯くしかない。実際親はそんなこと思ってないかも
しれないが、子どもっていうのは妙な引け目を感じているもんだ。

しかし、寮において、誰かに引け目を感じながら生活することはない。
先輩後輩なんてのもあるけど、たかだか数年寮での経験が多いだけ。
後輩は寮での生活をうまくやっていくために、先輩をたてることは
あっても引け目なんて感じない。文中の言葉を使わせてもらうなら

『この一見乱雑でどうしようもない世界では誰もが対等だ。それでいて
 親も教師も侵すことのできない一種の聖域』

なのである。とある冬休み、みなが長期休暇で実家に帰るなか
居残りを決めた4人の少年の寮での生活を描いたのが本作品だ。

4人のキャラクターはさまざま。冷静沈着な光宏。天才肌の統。
おおらかで男らしい寛司。まじめでいい奴な美国。
はじめはおっかなびっくりに接する4人だが、同じ鍋をつついて
けんかして、だんだんと自分をされけだすうちに4人の中の
自分の役割をつかんでいく。
寮というところで生活すると、おのずと自分の役割がはっきり
していくものだ。「あ、あいつとここがかぶっている」
「これだったらあいつのほうがうまいんだよな」なんて考えるうちに
自分の個性が磨かれていく。個性とかキャラクターなんて人との
コミュニケーションのなかで作られていくものだと思う。
そうやってできた親密な関係はとても居心地がいい。

たわいもない寮の謎や、ちょっとヘビーな家庭の事情。
そんなものに立ち向かって大人になっていく4人を自分も
ハラハラしながら見守っていた。高校生はなんて速さで大人に
なっていくんだろう。気づくと近所のおせっかいオバサンみたいな
心境になっていた。やれやれ。

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紙の本蛇にピアス

2004/03/08 15:03

私にとってのニュージャンル

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現代を象徴した小説ではないだろうか。
この小説の登場人物、ピアスに刺青、スプリットタン。
外見こそキテレツだけど、今の若者を具現化したような性格。
面倒くさい、キレやすい、希望的観測で行動する。
悩み、日々の辛さを自分のなかで対処できずに、具現化したがる。
もしくは、具現化しようと思わなくても体の異常という形で表に出る。
自分を制御できない。こんなことを言う私も若者の部類に入るので、
いささかイタイなあと思う。が、これが現代の若者なのだ。
しかし、それでも生きている。ボロボロになってしまった主人公だけど
最後彼女は生きることを選んだ。

正直読み始めたとき、言い切り調の文体が幼稚に思えた。
芥川賞の選考委員の方で、歯切れよい文体と称した方がいたが
私にはつたないように思えたのだ。けれども、読んでいくごとにどんどんと
物語の世界に引っ張られる。文体なんて途中から気にならない。
ラストも結局どうなのかはっきりしないところが、この小説を
生きさせたと思う。読後は不思議な哀しさに満ちている。
誰に対する悲しみなのか、主人公ルイになのか、はたまた彼女を
とりまく男たちになのか。それはわからない。

私が読んだ小説のなかで、ニュージャンルの小説だった。
未知の領域。怖いもの見たさで手にとってみたが、読んでみて
よかったと強く思う。

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紙の本紙婚式

2004/02/08 20:06

人の気持ちほど不可解で未知なものはない

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ジャンルは何なの?」と聞かれたら、ちょっと戸惑い、考えた後に
こう答えると思う。「ホラー小説だよ。」と。
この「紙婚式」と題された短編集ははタイトルだけ見ると、結婚にまつわる
恋愛小説を思い浮かべる。紙婚式は、一般的に結婚一年目を祝う式のことだ。
けれどもそうではない。この小説は紙一枚の上に築かれた「結婚」
というものがいかに砂上の楼閣であるかをありありと私たちに示した
物語なのである。

周りから見るといかにも幸福そうな夫婦は、ふたりきりになった時も
同じように微笑み合っているのだろうか? ニコニコ笑って会社に出かける
夫は、本当に今の生活に満足しているのだろうか?いそいそと世話を焼く
妻は、実は自分の他に好きな男がいるんじゃないだろうか?
考え出したら「絶対」といえることはひとつもない。
明日、いきなり離婚届を差し出されて、「印鑑を押してほしい」と
言われる可能性は、必ずしも0%ではないのだ。
人の心ほど不可解で未知数のものはない。

そして、今回の短編集も他の山本文緒作品同様、私たちに身近な普通の夫婦や
恋人たちが主人公だ。そんな彼らがチラリと見せる気持ちの奥底の暗い部分。
「もしかしたら、私もこんな暗い部分を持っているかも…」と思って
しまうから怖い。また、「怖い怖い。私はこうはならないわ」と
思いながらも起こりうる状況を想像してしまってゾクリとする。
私は他人の気持ちの不確かさはお化けや幽霊より怖いと思う。

一度この小説を読んでみて、自分の結婚、もしくは恋愛を見つめてみては
いかがだろうか? ほらほら、背筋がブルッと震えている。

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紙の本黒冷水

2004/01/29 15:26

兄弟だって恋人にだって見られたくないものはある

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兄弟にも秘密!という隠し事はとても重要度が高い。
寝起きの顔から幼いころの癖まであらゆる人に見せたくないものを
兄弟間では日常として見せ合っている。ささいな秘密なんてないも同じだ。
そんな、たいがいのことは見られて支障のない相手にさえ隠したいこと。
それが暴かれたときの羞恥と怒りは尋常ではない。

私の個人的な経験だが、弟に自分が管理しているHPを発見され、
彼は私に黙って見ていた。それが発覚したときの恥ずかしさ!
湧き上がる怒り! 思わず椅子から引き摺り下ろして、張っ倒してしまった。

この『黒冷水』は兄の机を執拗に漁る弟とそれに気づいた兄の話だ。
弟が机を漁っていると知った兄は私のように張り倒しに行ったりはしない。
兄は自室に巧妙な罠を張って弟を迎え撃つ。
そして、兄と弟との攻防戦はエスカレートし、ふたりの間を
憎しみがドロリと静かに侵食していく。

最初はあの手この手の攻防戦をドキドキしながら読んでいた。
しかし、次第にエスカレートしていくうちに話は思わぬ方向へと
向かっていく。「日常のあるある」ネタをここまで読者を飽きさせず読ませ、
なおかつ意表をついた展開。思わず一気読みしてしまった。

欲を言うなら、ドンデンをするならとことん、これでもか!!というくらい
読者を裏切ってほしい。なにが起こったかわからないくらい、
文字を追いながら呆然とするくらいインパクトがほしい。
著者はこの作品のコメントと今後の展望について「今後良い意味で
「読者を裏切る」作品が書けたらな、と思っています」と言っている。
私たちは、くるぞ、くるぞ!と心して読んでいく。
その心構えを討ち砕くくらいの裏切りを待っている。次の作品が楽しみだ。

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紙の本ぶらんこ乗り

2004/01/25 22:37

胸のなかをぶーらぶら

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数冊のノートが見つかった。あのこ、弟が書いたノートだ。
ページをめくるごとにあの頃の弟がよみがえってくる。
弟が書いた日記、お話。弟は天才だった。

最初から過去形のなんだか物悲しい雰囲気でスタート。
なになに? 弟はどうしちゃったの? 気になる。気になるけど弟の書いた
お話を読んでたら、そっちに夢中になってしまった。
弟が書く物語はとってもシンプルで簡潔だ。でもそこには
いろんな意味が隠されている。そのお話をどう読むのかは読み手しだい。
なんだかセンチメンタルな話が多い。

私も弟がいるが、やっぱり弟のほうが出来がいい。
だから、「ふん、あんなやつ!」って思ってるんだけど、付きつ放れつ、
いつの間にかいっしょにいる。付きつ離れつの間隔が人によっては
大きかったり小さかったりするのかもしれないが、
兄弟ってそんなものなのかな、と思った。

全体を通して胸をキュウッと締め付ける…いや違うな。胸のなかの
ぶらんこがぶーらぶらと揺さぶられる感じ。そして、最後にはその
ぶーらぶらも治まってきてポッと希望の灯がともる。

なんのことやらわからない? しょうがない。それなら実際に
読んでみなくちゃ! きっと私の言うぶーらぶらがわかるはず。

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