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土曜日の子供さんのレビュー一覧

投稿者:土曜日の子供

33 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本星守る犬 正

2010/02/10 16:51

犬を傷つけてしまったことありますか?

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

犬が好きで犬を飼ったことがある人なら誰でも、犬がどんなに純粋で素直で心強い存在か知っている。
それはいつも真っ直ぐで安定していて、外すことのないストライクのようだ。
それにひきかえ人間は気まぐれでわがままだ。特に幼いころ、成長過程の中にあって人の心は、まだまだ未熟であり、迷い苛立ち、身近にいる犬がそのとばっちりを食うことだってある。
ご多分に漏れずわたしは、やってしまった。犬からすれば豹変&裏切りだ。
そのときは、さほど意識してもなかったのに、時が過ぎ自分が大人になって多少分別がついてくるにしたがって思い出すようになった。のら犬だったタロが、なぜかわたしにだけは懐き、学校から帰ると家の前で待っていてくれた。いつも一緒に遊び、走り、おやつを分け合い・・・。それなのにある日近所のガキ大将に「その犬の目は真っ赤だ。病気だぞ。うつるぞ」とおどかされ怖くなり、砂をかけてタロを追い払ってしまった。タロは悲しい目をしてわたしから去っていき、もう以前のように人懐っこく寄ってくることはなかった。謝っても優しく接しても無駄だった。
この本を読むとこの痛い思い出が触発されて胸苦しいような気分になる。タロとの楽しい思い出が濃かっただけに「ごめんね」と何回心の中で詫びてもどうしようもなくてむなしい。何年も前に出合って、もうとっくに死んでしまっているに違いない犬のことをなかなか忘れられない。「反省するにしたって、『わたしってヒドイやつだった』といつまでグチグチ言ってるんだ、アンタは!」と自分を叱りたくなる。でもこの本を読むと「犬ほどピュアじゃない人間はどうしたってやっちまうもんなんだよ。あんただけじゃないさ」と言ってくれているような気になる。
この本に収められた2つの物語は犬への愛と贖罪の気持ちを込めて書かれた作品…。わたしにはそう思えた。
作品中に出てくる犬はみんなのかけがいのない犬の象徴だ。

読んだ後、思った。いつまでも「ごめんなさい」ばかり言ってないでそろそろ「ありがとう」と言わなくてはと…。

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紙の本

奇想天外だけど何かナットクの面白さ!

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 何がどうって、この本の面白さは、登場人物達のキャラが、それぞれ個性的でユーモアがあって楽しいところだろう。ひょんなことがきっかけで男女が入れ替わっちゃう話だ。「男女が入れ替わる」という発想自体はそれほど目新しいものではないんだけど、とってもワイルドで男らしい女子高生、桃井さんと、クラスメイトである繊細で優しいあきらクンが入れ替わっちゃった、というところがミソなのだ。突然、生活が一変する2人だが、特にあきらクンのハラハラドキドキな日々、彼の親友との微妙な関係の行方など、思わず「う−ん、わかるわかる。彼の立場だったら大変だろうな、でもウケル〜、これ」的なノリで、いつ読んでも楽しい。
 実際に入れ替わっちゃったら、どうなるか?学校では?家では?トイレは?お風呂は?合宿に行ったらどうする?そんな日々の生活の中では当たり前にしていたことが、男女が入れ替わったらそりゃパニックになるだろう、ってことが手に取るように想像できちゃうから、よけいにオモシロさが増幅するのだ。その辺のところの作者の描き方がうまい。
 ストーリーも面白くって絵もいいと思えるコミックはなかなかないのだが、この絵は一コマ一コマが丁寧に描かれていて、イラスト集をみてるときみたいな華やかさがあって気に入っている。
 1年に1冊くらいのペースで出るので、ちょっとゆっくりという気もするが、作者が登場人物一人一人のキャラや気持ちを、細やかなタッチで描き、構想を練りあげて作品を仕上げていることが感じられるだけに、やっぱり必要な時間なんだろうなあと思ってみたりする。

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紙の本

紙の本グーグーだって猫である 1

2010/06/17 14:04

家族としてのペット

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

綿の国星でチビ猫を描いていた頃の個性的でユニークな雰囲気もいいが、またそれとは趣が異なり、人生経験を経たからこその深み・観察眼が感じられ作品が味わい深いものに仕上がっている。一匹の猫との触れ合いが大島さんにしか描けないやり方で、私達を大いに楽しませてくれるが、それだけじゃなくて、もっとこちらの心の中に迫ってくるものがある。特に作者が以前飼っていた愛猫とのエピソードは、自分自身も過去に飼ってきた動物たちとのつながりについて、いろいろと考えさせられた。
飼い主というものは、ペットがどのような死に方で何歳で死のうと「自分が至らなかったために死なせてしまったのでは…?」と、どうしても自分を責めてしまう。私自身もそうであったが、この本を読んで「ペットは家族であるゆえに誰にとってもそうなんじゃないか」という思いを強くした。大好きなペットとの別れは身を引き裂かれるようにつらい。なのになぜかまた同じようにネコをイヌをハムスターを(わたしの場合)を求めてしまう。「こんどはもっと気をつけよう。できるだけ長生きできるようもっと気を配ろう」そんな風に強く自分に言い聞かせながらまた新しい家族を迎える。ペットが与えてくれる癒しや安らぎ、一緒に暮らす同士のような心強さ、その何ものにも替えがたい存在感。この本を読むとペットを飼ったことがない人でも、そうした感覚の一端を感じ取れるのではないだろうか。

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紙の本

ロダンをうならせた才色兼備・圧倒的存在感の人

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

100年以上も前、女性はよい結婚をして幸せな家庭を築くことが求められていた時代、ましてや女性が男性と肩を並べて彫刻家として一本立ちするなんて、まだまだ考えられず、世間の風当たりは厳しかった。
カミーユ・クローデルは、傑出した才能を持ち、ロダンの唯一の女弟子であり、モデルでもあり恋人でもあり、ロダンが作品を作る上でのインスピレーションの源でもあった。ロダンの人生においてカミーユの存在がいかに大きなものであったかが、この本からうかがい知ることができる。
世が世ならカミーユは芸術家として大成し、素晴らしい作品をもっと残してくれただろう。女性が生きにくい時代に、極限状態の中で、精神が崩壊してしまうまで、彫刻家として自分の足で立とうと孤軍奮闘し続けたカミーユ。感受性が強く、一本気で、妥協を許さない頑なさは、時代の荒波に加え、さらに彼女の行く手を阻む結果になった。40代後半で精神病院に強制収容されるまでに、彼女は自分の芸術に魂もエネルギーも全て注ぎ込み、みずからをすり減らし、燃え尽きてしまった。まるで自己の芸術と心中してしまったかのように…。

これだけの才能がある人なのになんてもったいないんだろう、もっとうまく軌道修正することはできなかったのか、なんて考えるのがもうすでに凡人の月並みな発想なのだろう。それはもう、彼女自身がそうしようとしたというより、彼女の才能が、どんなことをしてでも表に出ようとして彼女を突き動かしていたとしか思えない。個性的で破滅的で、男顔負けの芸術に対する一貫した姿勢。彼女の作品は今なお古さを感じさせない新鮮さを持ち、躍動感があり、観るものに時代を超えて、変わらぬ共感を呼び起こす。
この本には彼女が生まれてから精神病院に入るまでの半生が貴重な写真や、手紙、作品とともに紹介されている。カミーユの生きた時代やカミーユを取り巻く人々について、また彼女がそうした背景からさまざまな影響を受けつつ、いかに自分の道を切り開こうとしてがんばっていたかが、よくわかる。母に愛されず、ロダンとも決別し、亡くなるまでの30年間を精神病院で過ごさざるを得なかったことから、報われない人生だったという見方をされるが、この本の表紙に載っているロダンが作ったカミーユの像をみると、それでも彼女が幸せだった時代が確実にあったのだということに、救われるような気持ちになるのである。もしあなたがロダンの作品に興味を持ち、もっとロダンを知ろうと思い始めたなら、きっとその過程でカミーユに出くわす。あるいはロダンやカミーユの展覧会に行ったとき、「カミーユってどんな人?!」とたぶん興味を持つだろう。そうしたら迷わずこの本を手に取ってみてほしい。人生について、仕事について、愛について悩みながらも、がむしゃらに進んでいったカミーユのことを知ったあとでは、彼女の作品を見たとき、いっそう生き生きと作品が語り始めるのを感じるだろう。

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紙の本

紙の本トキオ

2006/11/21 12:14

「もっと家族で話そう、家族を知ろう。たまたま縁あって家族になったんだもの」って気にさせられる

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 親は子を選べない、子も親を選べない。だが時を越え、あえてお互いを親として子として選んだ拓美と時生。2人は共にある事件に立ち向かい、「親子でよかった」と心から思える、がけがえのない時間を分かち合う。
 つまづいてしまった誰かとの人間関係を過去に戻ってやり直せたらいいな、とだれしも思うことがあるだろう。親子ゲンカをしたとき、「世代の違う親なんかに自分の気持ちはわからない」、子供の頃、特に反抗期にはそう思ったものだ。むろん親にも10代20代の若い頃があったなんて想像だにしなかった。でも、もし時生のように、過去に行って、若者だった親に会うことができたなら、確実に何かが変わっただろう。
 この物語は「父である拓美の過去に行き、当時23歳だった拓美に会っている現在17歳の時生が、拓美の息子である」と、最初からわかっているからこそ、反発しあいながらも魂の部分でどこかつながっているような2人の姿に、理屈抜きの親子の絆のようなものを感じ感動するのである。リアルタイムで子供の人も、今は大人で昔は子供だった人も、拓美や時生の気持ちや行動に「う〜ん、わかるなぁ」と共感してしまうことがきっとあるだろう。
 今から20数年前バブルが崩壊する前の、まだ活気があって自由な雰囲気が残っていた時代、その日暮らしで行き当たりばったりに生きていた”若気の至り”の塊みたいな父、拓海。片や物心ついたときから自分の悲劇的な運命を知っていて、実際の年齢よりもずっと早く大人にならなければならなかった高校生の時生。まったく対照的で、過去においては親子の立場が完全に逆転してしまっているみたいな2人。そのミスマッチな2人のちょっぴりコミカルなやりとりに加え、もとヤンキーだった竹美、元プロボクサーで、強いけどどこかひょうきんな彼女のパートナーであるジェシーなど、ユニークで個性的な面々が彼らの周りを固めているせいで、悲しい運命はいかんともしがたいものの、エンターテインメントの要素も十分にある、前向きなトーンに彩られた物語に仕上がっている。

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紙の本

読んでいると元気になる、人っていいな、素直な気持ちっていいな、そう思えるのもいい。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)に惹かれて、島根県松江市へ着任した新米女性弁護士、若くてチャーミングな山崎水穂である。一見静かで平和そうに見える松江でも人の心を煩わせるようなやっかいごとが次々と起こり、瑞穂は法律と人間の間に立って悩み迷いながらも、依頼人のことを一生懸命考えて、体当たりで立ち向かっていく。水穂の前向きな姿、人を信じ、あきらめないで向き合おうとするひたむきさは、周りの人の心を動かし温かい気持ちにさせる。読んでいるほうもジワジワとホッカイロのように温まってくる、そんな感じだ。酔っているみたいだけれど、読んでいるうちに思わず目からこぼれてきた自分の涙はキレイな涙という気がした。
 松江が大好きで特に松江城がお気に入りという水穂。作品の中の景色は、しっとりとしたたたずまいの城下町松江の町がそのまま出てくる。松江城、宍道湖、堀川遊覧船乗り場、そして武家屋敷の並び。癒される雰囲気の叙情的な景観の町と、その中を颯爽と自転車で走り抜けるアクティブな水穂が対照的で、またいい味を出している。
 わたしたちも職場や地域・家庭内の人間関係の中で、水穂と同じように落ち込むことや、逆に「よかった!」と嬉しくなることにもめぐり合うが、松江の町を愛し人々と本音でぶつかり、自分を見つめ成長していく水穂の姿にいつの間にか励まされ、いつも水穂のような真っ直ぐな気持ちでいたい、自分もがんばらなくっちゃ、という気分にさせられる。
 最初は一地方都市が舞台であるため、地味で目立たないかもしれないと思っていたのだが、現在コミックが4巻まで出ていて、ビジネスジャンプに好評連載中である。どうやら全国で静かなブームを呼んでいるらしい。

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紙の本

紙の本ツ、イ、ラ、ク

2006/02/14 14:58

色あせない恋はあこがれ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この物語は、全身全霊で人を愛した、本気の恋をした、世の中の全ての人への賛歌だ。
 著者はクールに熱い恋を語ってゆく。
 思春期の純粋でストレートで何かに取り付かれたようでさえある一途さ。あとから振り返れば、若さのせい、恋愛ホルモンのせい(?)と思えるかもしれない。しかし思春期とは、怒涛のような暴走に、後々得た知識でもって解釈をつけようとしても、やはり「あのときはほんとにああだった、ああするよりなかった」と、覚めた目で熱い時代を振り返らざるを得ない、不思議な時期だ。
 小学校・中学校時代の独特の空気というか、精神状態というのか気分というのか、行間からかもしだされてくるムードに、かつて経験したその頃の時代を思い出し、妙に共感してしまう。
 登場人物の性格の描き分けがはっきりしていて、インパクトが強く、小学校から社会人になるまでの彼らの姿を追っていると、まるで実在している誰かのような気がしてくる。ふと、今現在、自分の同級生たちの日常も案外こんな感じだったりするのかもと思ったり・・・。でも、ほんとにほんとのお互い確信を持てた恋をしている2人は、やはりくっきりと全体から浮かび上がる。ほんとにほんとの、ピュアで五感が紛れもない真実の恋だと告げてくれるような出会いは稀有だから、始まりはどうあれ、過程はどうあれ、結末はどうあれ、やはりそれは光輝いて誇らしげで、ちょっぴり羨ましい。

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紙の本

とっつきやすく続けやすい

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1ページに1問が読みやすいレイアウトで書かれていて、いつでも気軽に読める。間違いやすい問題、絶対おさえておきたい問題などが網羅されているのがとても実践的だ。設問の数も詰め込み過ぎてないので、ちょっとやる気を出せば1冊を読破することができ、達成感も味わえる。重要単語とわかりやい解説も1問ごとに列記してある。解説の語り口は話しかけるようなカンジで親しみやすい。
 分厚くて難しい問題がギッシリつまった問題集に眉間にシワを寄せながら取り組むより、コアとなるような大切なエッセンスをギュッと煮詰めた本書を繰り返し読んだほうが、格段に力がつくこと間違いなしだ。


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紙の本

食べたい、でも太りたくない!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 チョコレートにケーキにシュークリーム及び栗まんじゅうがある日忽然と消える、もしくは絶対食べてはいけないことになったら相当ショックだ。それでもこのラインナップなら、「無し」になったとしても何とかやれるかもしれない。しかし…。もしこの世からラーメンが無くなるとしたら非常に耐え難い。かなりの痛手だ。にもかかわらず恨めしいことにラーメンは高カロリーの代表的メニュー。何も考えずしょっちゅう食べているとすぐに体重が増えてしまう。特に秋から冬にかけては食欲に拍車がかかるからよけい始末が悪い。
 ところが最近、本屋でタイトルを見るなり惹きつけられたこの一冊。「もしかしてもしかしてそんな虫のいい話、今度こそあるのか!?」と思い手に取った。そして肥満に直結する食習慣の例を見て「全部自分にあてはまるじゃないかぁ~!」と愕然とした。だがありがたいことにこの本には、加速度的に太っていくのを防ぐにはどうすればいいのか具体的にわかりやすく書いてあった。ちょっと意識さえしていれば実行できそうな気軽さもある。男性向きに書かれているが女性にとっても大いに役に立つ内容である。例となる献立を見て「これならできそう」と思うものを無理せず、あせらず地道にゆったりと構えてやっていけば何らかの効果が得られるのではないか、という希望が感じられる。
 この本を読んで以降、ラーメンのみならず油っぽいものを食べるときはできるだけ野菜やくだもの、またはそれらのジュースを摂るようにし、油ものが多かった日はウォーキングをプラスしてみたりしている。今のところ体重が増えていないのは、ひょっとして効果アリかも?!といい方に考えている。

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紙の本

紙の本私の風景 東山魁夷画文集

2009/01/27 21:58

東山魁夷の素敵な画文集

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

以前のわたしは、東山魁夷の絵はきれいで、垢抜けてて、お部屋のインテリアにぴったりくらいにしか思ってなかった。でもこの本を読んだ後、魁夷の絵を見る目が変わったように思う。絵を眺めつつ、それにまつわる魁夷自身のエッセイを読んでいくうちに、ひとつひとつの絵に魁夷の魂が込められていると感じるようになった。
魁夷の描く風景はたしかに美しい。人の心に訴えかける情趣に満ちた色使いだ。しかしそれは写実的な風景のようでありながら、彼の心象風景、気持ちや意識が色濃く反映されている。そのときどきの想いが投影された絵は、絵を観る人の体験とオーバーラップしたとき、時には共感を呼び起こし、またある時には癒しを与えてくれるのではないだろうか。
「自分は生かされている」という思いで、亡くなる間際まで真摯に描き続けた魁夷。絵を描くことは魁夷にとって希望であり「生きること」そのものであっただろう。苦難の中にあって描かれた絵でさえ、どこか温か味があって柔和な雰囲気に包まれている。どの絵を観ても結局は観る者を前向きな気持ちにしてくれるのだ。そのあたりに魁夷の人柄・生きる姿勢が表れているような気がして、この本をみるたびに何だかほっとする。
静かな気持ちでゆったりと読むのがオススメの本である。またこの本には魁夷のエッセイの英語版も載っているので、英語の勉強にもうってつけである。

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紙の本

あったかくて繊細で希望にあふれた物語

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 宇宙飛行士になるため宇宙学校に通う主人公あすみは、才能もあるし性格もいい。ヤル気も根性もある。でもそれを鼻にかけない。ちょっと心がきれい過ぎて、あまりにもいい子だナって感じるときもあるけど。身長が低く、そのことでイヤな思いもする。でも、もし彼女が容姿端麗でスキのないキャラだったら、読むほうも彼女と同じ目線で、喜んだり悲しんだりできないだろう。
 だれもが何かしら心の中にキズを持っていて、そこに触れられたら壊れてしまいそうな脆さを抱えている。後悔してもやり直せない修復不可能な現実。特に、言いたいことを伝えられずに、すれ違ったまま死に別れた人に対する想いは心の中から消え去ることなく、ときにフラッシュバックして人を苦しめる。この物語の登場人物もそういった思いを胸に秘めつつ生きている。それでもファンタジーの要素を含むこの物語だからこそ描ける救いと癒しの場面は、読む人の心を温かくしてくれる。現実の世界からごく自然にファンタジーの世界に入っていけるのは、私たちの中にも「今は亡きあの人にもう一度あって、言えなかったことを伝えたい」という気持があるからなのかもしれない。
 宇宙飛行士になるために次々と課される厳しい訓練。訓練そのものが能力の限界まで試されるようなシビアなものであるが、そっち方面に縁のない者にとっては、ユニークだったり珍しかったり、笑えるようなひとコマもあって面白い。
 「宇宙飛行士になる」という共通の夢を縦糸に、あっちこっちでシンクロしながら徐々に結びつきを強めていく人間関係を横糸に、これからもドラマは続いていく。
 読んだあとは見上げる夜空がいつもより輝いてみえるかもしれない。

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紙の本

魂の旅

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子供のころ、父が長期出張で家にいないと寂しくてたまらず、優しい父が帰ってくるのをひたすら待ちわびていたものだ。玄関に足音が聞こえるとすぐに聞きつけて走っていった。しかし父が亡くなった今、玄関の戸が開く音がしてあの聞き慣れた足音が聞こえてくることはもうない。
小さいころみたいに家中を、庭を、物置まで探したって絶対に父がみつかることはないのだ。そんな絶望的な寂しさに包まれていたとき、今まで特に深く考えもしなかったあの世のこと、あるかどうかもわからない死後の世界のことを考えている自分がいた。「もし来世があるなら父はそこでうまくやっているかな?」と…。身近な人の死に直面して初めてこういった気持ちになるのかもしれない。こんな気持ちは本当に個人的なことなので肉親の死を経験していない人にはピンと来ないだろうし、悲しみで一杯のときは、辛い胸の内をだれかに聞いてもらおうという気にすらなれなかった。そんな行き詰ったやるせない気持ちでいたとき、心を慰めてくれたのがこの本だった。読んだあとちょっとだけ気持ちが軽くなった気がした。
さまざまな質問に温かみのある感じの文章で返答が書かれている。一つ一つの質問は誰もが一度ならず口にしたことがあるような素朴でシンプルなものだ。子供のときに「おかあさん、人は死んだらどこ行くの?」と母の顔を見上げて聞いた私たちは、大人になってもまだその答えを探し続けている。来世があるかどうか分らないと思っている自分は顕然として存在する。それでも、ちょっとだけあの世のことを想像させてくれたこの本に癒されたことは確かだ。

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紙の本

紙の本楳図かずおこわい本 新版 顔

2009/10/21 20:45

クセになる怖さ?!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

久しぶりに楳図かずおを読んだ。やっぱり面白かった。「もし、こうなったらどうしよう、恐ろしいだろうなぁ…」あるとき、ふと想像力を逞しくしてしまった結果ちょっとコワイくらいの恐怖を増幅させてしまい、さらなる恐怖のループにはまってしまった、なんて経験はないだろうか?

楳図氏の作品はそういった恐怖のエッセンスを軸に、何気ないように思えた懸念が不安に、そしてほとんど妄想に変わていっていく世界にぐいぐい読者を引っぱっていく。気がついたらおどろおどろしい超現実の世界にいつ入りこんだかもわからぬまま、主人公と共に読者は翻弄される。いつの間にか独特の楳図ワールドの中にどっぷりと浸からされてしまっているのだ。

その奇妙さ・グロテスクさと、主人公の少女の暗く陰影を帯びた、しかしどこか凛として気品のある美しさとのきわだったコントラスト。ひとコマひとコマがまるで美術館で見る一枚一枚の絵のように個性的でしかも鮮明な印象を持つ。まさに芸術作品と言える楳図氏の漫画。

恐怖の元は誰でもが想像可能なことであるため恐ろしさもひとしおだ。特にこの本のテーマである『顔』は人間の根元的なアイデンティティーに関わるものだけに、その顔がどうにかなるということは、実に戦慄にもにた恐ろしさを感じずにはいられないだろう。しかしその反面、例えばお化け屋敷で、こわがりながらも心の片隅でそんな演出を期待している時のような、どこか楽しみながら読める雰囲気も持ち合わせている。

楳図氏の作品は時代を越えてその存在感を主張し続ける筋金入りのホラ-&エンターテインメントなのだ。

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紙の本

何回も訪れたくなる世界

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 昭和30年代に小学生だった子供たちの日常生活の様子が、ほのぼのとした雰囲気で描かれている。人を思うさりげない気持ちがじ〜んと心にしみ渡ってきて、思わずホロリときてしまう。
 今と違ってモノも情報もあまりない時代だったが、そのぶん人と人とのつながりは濃かった。子供たちも勉強や部活に今ほど追われてなかったから、時間も、もうちょっとゆっくり流れていたし、人を思いやる余裕もあったかもしれない。
 だが、この物語は単なる古き良き時代の、懐かしいだけの物語ではない。素朴で純粋な気持ち、優しさ、素直さは誰もが持っている。夢だってある。毎日の慌ただしさに流されて忘れそうになっているそんな気持ちをこの物語は思い出させてくれる。
 読んでいるうちに誰もが世代や時代を越えて、夕日小学校の児童になったように感じられるだろう。
この本は人の心の中にあるあったかい気持ちを引き出してくる。
 「夕日小学校」はだれの心の中にもある。環境が変わっても、恐ろしい事件がときに起こってしまうような世の中になっても、きっとなくならない。そんな気がした。

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紙の本

はやく続きがみたい!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「アリス」という天才的特殊能力を持った子供達だけが集まる学校で起こる、さまざまな出来事。それぞれの子供が持っているアリスがユニークで面白い。人の心が読めてしまうアリス、動物フェロモン全開で動物を虜にしてしまうアリス。超聴覚のアリス、人に幻覚をみせることができるアリスなどなど、実にさまざまだ。ほんとうに作者の想像力には脱帽だ。「こんなに楽しませてくれるお話を考えてくれてありがとう!」と絶賛したくなるほど、アリスを駆使する子供たちのやり取りは面白い。
しかし、ここアリス学園にも普通の学校と同じようにイジメもあれば争いもある。複雑な事情をかかえて悩んでいる子もいる。そういう中にあって関西弁をしゃべる主人公、蜜柑の、明るくてちょっぴりノー天気なキャラは、みんなを和ませ心を一つにさせるような役割を果たしている。そして彼女の持つ「無効化のアリス」は学園の仲間にとっても、なくてはならない大切なアリスなのだ。
夢あり笑いあり。奇想天外な出来事が起こったり、ドキドキするようなシーンやジーンとくる場面もあったりして、とにかく飽きない。
「人にはいろいろ個性があって、どの人もその個性ゆえに彼であり彼女であり、だれもが愛されてしかるべきなのだ」という、作者からの大らかなメッセージを感じてしまうのは、わたしだけだろうか?
読んでいくうちに誰もが、アリス学園のメンバーの中に自分に似たキャラをみつけて応援したくなるだろう。

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