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purple28さんのレビュー一覧

投稿者:purple28

70 件中 1 件~ 15 件を表示

日本人の文化のルーツは“魔界”にあり。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 京都とは、まことに妖しいところである。
 「魔界案内」に「京都」と付くからそそられるのであって、これが仮に「東京」であったとしたならば、それはなんとなく現実味を帯びてしまうか、もしくはSFチックになってしまう(実際、同シリーズで「東京魔界案内」もあるのだが内容は未確認)。
 やはり、京都には“魔界”が似合う。

 京都には、そこはかとない魅力がある。
 京都を訪れると、そこが平安の昔に栄えていた都であることを体で感じる。
 なぜか。
 寺社仏閣、名所旧跡といったものから、ただの辻、塚、通りにいたるまで、そこかしこに古の人々の“想い”が残っているからである。
 その想いは、祈りであったり願いであったり、感謝であったり、怨みであったり。現在の京都の元をたどれば、必ずその想いにたどりつく。
 その人間らしい感情に触れたとき、1200年のときはぐっと縮まる。

 平安の昔に栄えた都=平安京は、風水を取り入れてつくられた。通りや角(辻)、その位置にもすべて意味がある。そうやって都の発展と安寧を図るとともに、魔物を避けたのである。
 そのために、寺社仏閣のような清浄な場所、魔物に侵されない神聖な場所が多くみられる。が、これは裏を返せば、魔界との境といえる。魔界があるから神聖な場所がある。神聖な場所のすぐ外は、魔界。表裏一体、紙一重、なのである。

 本書は、そんな身近な“魔界”へと案内してくれる。
 そこは普段見慣れた社、山、辻、塚…。名前の由来や場所の意味、いきさつなどをひも解いていくと、見えるのは“想い”。
 人の想いが魔界をつくるのかもしれない。

 現在、建物を建てる際には必ず風水を考える。例えば、鬼門にはトイレを置かないとか、玄関は吉の方位に置くとか。信じる信じないとか、役に立つ立たないなど関係なく、どんな建築家も風水は無視できないという。
 風水だけに限らず、土地の風習、家族の習慣、ちょっとしたおまじないまで、平安の昔から続くことかもしれない。
 元をただせば、みな“魔界”に通じる。
 そんな風に考えてみると、また楽しい。

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ポーズをとって、自分が変わった気になるだけでもいいのかも。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

たった5分で自分が変わるわけがない(笑)。
でも、変えようとする気持ちとその努力はとても大切なわけで、
そこへたどり着くちょっとした“きっかけ”を与えてくれます。

全部で60項目あるわけですが、どれもカンタン。
しかーし。それができる人ははなからこういった本は読まないんだなあ(笑)。
こうう本を買う人っていうのは、努力しなきゃと思いつつ、
いつも思うばっかりで結局何もできない、という私みたいな人ばかり。
でも、大切なのは“心がけ”です、きっと。
各項目にチェック欄がついていて、巻末にはチェックリストも
付いているので、テキスト好きな方にはいいんじゃないでしょうか。


紫微の乱読部屋

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紙の本頭がいい人、悪い人の話し方

2004/10/26 14:12

この本を読んでほしい人が身近にいます。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 実は、実用書の類いがあまり好きではありません。興味のあるモノでも、最終的には文句をつけてしまうので(笑)。なんというか、“当たり前”のことしか書かれてなかったりするんですよね。でも。そういうモノが実用書なんだと最近気付きました。“当たり前”のことでもちゃんと本に書いてもらわないと、学べなくなっている、ということもあるんでしょうか(ま、できる・できない、というのは別問題なんですけどね)。

 で、これです。著者は長く小論文の添削をしてきた方だそうで、文章と話すことの共通項を見出した、ということだそうです。確かに、話し方というのはとても大切なことだと思います。私の場合、極力気を付けてはいるんですが、ついつい、人の先回りをしてしまうクセがあるんですね。友達なんかだと平気ですけど、仕事関係の方と話すときはホント気をつけないと、とても失礼なことになってしまいかねません。ま、これは、自分で気付いていることで、でもほかに、自分の気付いていないクセがあるかもしれない、と思うと恐ろしい。

 本書は、愚かな話し方の例を挙げ、その傾向と対策を紹介。しかしながら、愚かな話し方をしている人は、その自覚がないのが問題なわけで(笑)、自覚しないと治らないもんですよね。本書を読んで気付く人っていうのは、多分、普段から話し方に気を使う人で、だから読まなくてもあまり問題がなかったりしますが、あなたこそ読んでくれ! という人に限って、決して読まない(笑)。世の中うまくできてるねー(笑)。


紫微の乱読部屋

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おまじない。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 声優・林原めぐみを知ったのは、「スレイヤーズ」の頃だったと思う。それまでだって特別声優に興味があったわけではないのだが、なんだか彼女の名前はいたるところで目に付く。歌を歌っていたり、違うアニメに出ていたり。たくさん仕事をしているのだなぁ、というのが素直な感想だった。
 前作(といっていいのか…)「明日があるさ」を本屋で見たとき、自然と手が伸びた。声優がどんな仕事なのか、だいたいは想像できるのだが、どういう気持ちで取り組んでいるのかなんて、もちろん分からない。とりわけ彼女は第一線で活躍する声優。公私にわたりさまざまなことがあるようだ。
 「明日があるさ」を読んだことで、より彼女を知ることができたし、より興味を持つようになった。

 そんな彼女のエッセイ集がこれ。新聞に連載していたというもので、内容は淡々としている。特別面白いわけでもないし、説教ぶっているわけでもない。けれど、そのときどきの素直な彼女の気持ちが伝わる。
 そうやって読み進めていると、友達のこと、家族のこと、仕事仲間のこと、ファンのこと…、とどれだけ彼女が“人”を大切にしているのかが分かってくる。人と関わる仕事だから、というのもあるのかもしれない。
 “人間が好き”
 そんな気持ちが、じんわりといろんな形をして伝わってくるのだ。

 タイトル「なんとかなるなる」は、きっと“おまじない”。
 なんとかなると思ってもどうしようもないこともある。なんとかしたいと思ってもどうにもならないこともある。でもそれも、彼女は知っている。
 だから言うのだ、「なんとかなるなる♪」と。
 そうすると、不思議とそんな気になる。元気になる。勇気をもらえる。
 彼女から元気をもらった人が、また別の人に言う「なんとかなるなる」。

 林原めぐには“元気の伝道師”なのかもしれない。

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紙の本この島でいちばん高いところ

2004/06/09 15:01

どうやって“生きる”か=どうやって“死ぬ”か。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

祥伝社の“400円以内で買える”文庫シリーズ。
それはとてもありがたいことなんですが、
いかんせん、この長さは中途半端。
ミステリーでないのはこの際おいといて(笑)、
せめてもうちょっと枚数を増やして膨らませるなり、
この長さにするなら、もうちょっと切れ味を良くしてもらうなり、
近藤さんなら、なんかもうちょっとやり様があったかなぁ、と。

夏休み。2泊3日で海水浴に出かけた17歳の少女5人。
「少し離れた小島に、遠浅のきれいな海岸があるからね」
その言葉につられ出かけた無人島で、思いのほか時間を過ごし、
帰りの船に間に合わなかった5人は、島で1夜を明かすことに。

決して優しくないのはとっても近藤さんらしくっていい。

それぞれ、それなりに悩みを抱える少女たちの
“生き様”が、否応なしにさらされるのが、無人島。
どうやって“生きる”のかが生死の分かれ目だったりします。
どうやって生きるか=どうやって死ぬか。
そんな、人生の最終目的を突きつけられた17歳が、
この1日でどうなっていくのかが、近藤さんらしく描かれています。


紫微の乱読部屋

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紙の本QED百人一首の呪

2003/08/21 11:43

探偵“タタル”で“呪(い)”なのか…。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公・奈々の先輩、薬剤師・桑原崇は、“タタル先輩”と呼ばれているそうな。“くわばら”だし、“祟(たたり)”だし。でも、ひとに向かって“タタルさん”とは呼べまいて。
 まあ、本人は呼ばれて平気なわけだし、その辺がやはり普通ではない、故の探偵かと。

 百人一首。そのうちの何首かは知っていても、全部を覚えているわけでもなく、誰が作ったかなんてこともおぼろげで。それでも、この作品は充分楽しめる。小難しい解釈やら、解説やらはすっとばしてもOK。なぜなら、“百人一首の謎”は本編の謎とはあまり(ほとんど)関係ないのである。
 ただ、解釈の一つとして楽しむには充分。百人一首の謎にまつわる部分だけでも、壮大なストーリーが繰り広げられていて、面白い。

 もうじき1年が経とうとする、会社社長殺人事件。その社長が握っていた百人一首の1枚が何を意味するのか、そして犯人すらも分かっていない。殺されたのは、百人一首に造詣の深い人物というだけあって、その屋敷には百人一首が溢れている。
 やり手社長と百人一首と殺人と。どう並べてみても、謎は深まるばかり。
 友人を通して事件の詳細を知ったタタルは、まず百人一首の謎につかまる。それはあまりにも魅力的だった。寝食を忘れて、それでもきちんと仕事はこなし、タタルは百人一首に取り組む。
 そして、その謎が解けたとき、タタルには犯人までもが分かってしまう。

 これではどう考えても、殺人事件の方が“おまけ”ではないか。
 まあでも、そういうミステリーがあってもいいのかな。楽しめたし。
 一つ気にかかったのは、途中まで誰が探偵役なのが分からなかったこと。自分の理解力不足なのではあるが、「だってこの人、百人一首に首ったけなだけじゃん」と思ったのも事実。
 だからといってタタルに文句は言うまい。言ったら最後、祟られて呪われたりして…。


(紫微の乱読部屋)

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紙の本鳥玄坊 根源の謎

2003/07/31 15:12

“築地の明石先生”ってこんな人。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 京極堂シリーズに出てくる、京極堂の師“築地の明石先生”。
 その正体が、明石散人この人であった。

 物語は、築地に事務所を構える“鳥玄坊”一派が、隠密裏に、世界をまたにかけて大活躍するというもの。
 その一派の長が鳥玄坊先生との人なのだが。

 「むちゃです、鳥玄坊先生」

 カバーには“歴史ミステリー”とあったけれど、SFに近い。
 登場人物しかり、設定しかり、世の中に起こる事件しかり、まずあり得ない。
 宮部みゆきの「龍は眠る」「クロスファイア」などには、超能力者が登場するが、ストーリーに無理はない。しかし明石先生のこの作品は、無理ばかり。「ないって」「だからあり得ないってば」と、つぶやきながら読み進めた。
 しかし、そのあり得ない話をあり得る話たらしめているのが、やはり鳥玄坊先生なのである。
 鳥玄坊先生がそう言うなら、なんだってあり。
 そう思わせてしまう迫力がある。

 「根源の謎」では、それこそ人類の、いや宇宙の根源の謎に迫る。主に記紀を中心とした、有史以前の話がからみあうのだが、解釈がすごい。
 さんざん「あり得ない」と言ったそばから、「うーむ」と唸る。
 幅広い知識と秀逸の発想が、この物語の核となる。
 そこで生まれたキャラクターが鳥玄坊先生なのではあるが。

 この、“驚異の”鳥玄坊先生のモデルは、明石散人本人に違いない。


「紫微の乱読部屋」

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紙の本ジオラマ

2003/06/11 11:42

誰もが必ず持っている、違う顔。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 桐野夏生という人は自分の中で、どういう人かと説明できない。
 ただの理解不足なのかもしれないけれど。
 よくよく考えてみると「柔らかな頬」「OUT」に続く3冊目だったのだが、どれも桐野夏生の作品だと意識して読んではいなかった。
 だから作者が見えない、というのではない。
 いろんな書き方のできる人なのだなぁ、と思った次第。

 あとがきで、「石をひっくり返すのが好き」だと言っている。石の裏に棲むモノを見るのが好きだと。
 大小にかかわらず、石の裏にはナニかいる。必ずいる。表面からは決して見えないのだけれども。
 人間も同じなのだと思った。
 周囲が認識している“その人”とは違う自分を、誰もが必ず持っている。

 「ジオラマ」は、身近にある世界。
 誰も知らないところで起こる。

 知っているのは、自分だけ。

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紙の本マニアックス

2003/06/04 13:23

マニアがいっぱい。

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 孤島で一人、漂流物を集める女性。
 “蒐集と孤独”は相容れない…。
 彼女は孤島で一人、“何を”しているのか。

 「ミステリーズ」の姉妹作品だそうだが、そちらはまだ未読だ。しかも山口雅也初体験がこの「マニアックス」だった。
 マニアのこと、映画のこと、再びマニアのこと。この3部で構成される短編の数々は、どれも不思議な世界を持っている。

 最初の「孤独の島の島」で空恐ろしくなったものの、次の「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イブ」は笑った。
 一番印象に残っているのは「割れた卵のような」。

 妻は妊娠中。自宅の団地では子供の墜落死が続発し、パジェル人という謎の人種も現れる。もしかして、まさか、と思う方向へ話が進んでゆくのだが、最後のオチ(?)はちょっと違和感を感じた。

 これ1冊では山口雅也を知ることはできないだろうが、その魅力は感じることができる。読者を引きつけるストーリー、先の読めない展開、飽きない文章。もっと違う作品も読みたくなる。

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紙の本未来形J

2003/05/19 17:35

次はどうなる、わくわの毎日(だったに違いない)。

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 「新宿鮫」がなんとなくとっつきにくく、でも、一度は読んでみたいと思っていた大沢在昌氏の作品。まず、これを選んで良かった。

 携帯電話に配信される小説、という新しい試みに挑んだ大沢氏。J−phoneのコンテンツを通して毎日配信していたというから、楽しみだったに違いない。とりわけ、新聞を読まないといわれる若い世代に“ケータイ”はぴったりではないか。
 また、エンディングを公募したというのも斬新。プロの作家がこれでもか!という程エサをまいてくれているのだ。乗らないなんてもったいない。
 実際には、最優秀賞しか掲載されていないが、他のエンディングも読んでみたいと思った。また、こんなエンディングはどうだ? と自分で考えたりもして、何度でも楽しめるところがにくい。

 エンディングで、みんなが少しでも夢を叶えていたところが嬉しかった。だからこそ選ばれたのかなとも思うが。

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いまだパワー衰えず。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あさぎり夕といえば、「なかよし」で長く活躍した、少女漫画の王道を行く人。ボーイズラブに転向した後の漫画はこれが初めて読む作品となった。

 これまでの作品で一番印象に残っているのが「なな色マジック」。元気な女の子が主人公で、おバカな男の子に、カッコいい男が出てくるのがある種のパターンであった。主人公にはコンプレックスがあり、さまざまな出来事を経て成長する、というようなストーリー。こう書いてしまうと、面白みも何もないような気がするが、そうではない。
 では、何に魅かれるのか。
 やはり“絵”だと思う。
 ストーリーはもちろん、その世界に引き込ませる絵。かわいい子はどこまでもかわいく、カッコいい男はどこまでもカッコ良く。表情がまた、心を痺れさせる。

 「金のカイン」の魅力は、何といってもカインのカッコ良さに尽きる。とことん男らしく、非の打ち所ナシ。「実際、こんなにイイ男はいない」なんて思う隙も与えず、その魅力的なキャラでぐいぐい読者を引っ張って行く。
 オススメは、カインのアオザイ姿。妖しいのなんのって。
 昔からあさぎり夕は、イイ男の妖艶な姿がうまかった。

 少女漫画家のボーイズラブ転向ときくと、ちょっと構えてしまうかもしれない。実際転向後の作品を見て、がっかりした漫画家も何人かいる。
 しかし、彼女に限ってはまったく違和感を感じなかった。彼女の全作品を通して貫かれたポリシー(のようなもの)がひしひしと伝わるから。
 男女関係なく、人として生きるとき、何が大切なのか。そばにいて、見守ってくれる人がいるからこそ、“自分”として生きることができる−。

 必ずハッピーエンドで終わる彼女の作品に、元気をもらった人も多いはず。「金のカイン」も、読後必ずパワーをもらえる。

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紙の本秘密 トップ・シークレット 1

2003/06/24 12:02

本当は見てはいけないモノ。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2055年、MRIとう捜査方法が初めて採用される。
 MRIとは、死亡した人物の脳に残された視覚の記憶を再生すること。その人物が、どういう想いで何を見ていたのかが分かるというもの。死の直前に犯人を見ていれば重要な手がかりになるし、犯人の脳を見ることで犯罪の全てが分かるのだ。
 一見、画期的な捜査方法のように思える。
 けれど、死者の脳を見ること=プライベートを暴くこと。
 トイレも風呂も寝室も、全てを捜査官によって暴れてしまう。

 知らない方が幸せだということはよくある。
 けれど、人は知りたいという欲求に勝てないことが多い。
 それがつまり真相へとつながることにもなるのだが、往々にして知らなくてもよいことまで分かってしまう。
 全て真実ではあるのだが。

 全てを知ることは、本当に必要なのだろうか。
 知りたいという欲求のためだけに、他人のプライベートを暴くことは、そんなに大切なことなのだろうか。
 本当は見なくてもいい、いや見てはいけないものなのだと思う。

 この作品には、知らなくていいことまで分かってしまう哀しさを違った形で現した2話が収められている。
 知ってしまったら、その記憶を消すことはできない。
 どう折り合いをつけて今後その“真実”と付きあっていくのか。
 続きが楽しみでもあり、辛い気もする。

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紙の本今夜はパラシュート博物館へ

2004/05/24 14:46

“その後”のお楽しみに惹かれないわけがない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 森博嗣の短編集は、ちょっと苦手だったはずなんですが。そのことをすっかり忘れていて(笑)、とても楽しめました。やっぱりおなじみのシリーズだからでしょうね。
 「どちらかが魔女」「双頭の鷲の旗の下に」、この2作がS&Mシリーズ。「ぶるぶる人形にうってつけの夜」がVシリーズ。

 S&Mシリーズはすでに完結していて、その後のストーリー、という感じだったのですが、これがもう、笑える。お腹かかえて笑いました。会話がね、面白い。萌絵なのに(笑)。
 初っぱな、萌絵と睦子のかけあい(?)があるのですが、その言葉のやりとりを含む描写が秀逸。両シリーズとも、会話だけを抜粋してシャッフルしていろいろつなげてみると、すごく面白いストーリーができ上がるんじゃないかと思います。
 残り5作はノンシリーズ。その、ノンシリーズってのがクセモノで、それに同調できないことが多い。けれど今回はそれほどでもなかったです。
 ちょっと大人になったかな<私(笑)。

 中でも心に残ったのは「卒業文集」。
 小学6年生が拙い言葉で綴った文集そのままですが、最後まで読むと、また読み返したくなる作品です。私もこんな先生みたいな人になれればいいな、と。
 とっても森博嗣らしいのが「素敵な模型屋さん」。
 申し訳ないのですが、私は軽く読む程度で、すっとばしました。ちょっと情熱が足りなかったのね(笑)。まあでも、ちょっとくらい情熱が足りなくったって、充分楽しめるんです。

 で。やっぱり私、小鳥遊練無が一番好きだなぁ、と。


紫微の乱読部屋

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紙の本半身

2003/07/21 01:23

衝撃、覚めやらず。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 マーガレット・プライアは、貴婦人としては素直すぎる人間だった。

 29歳で“老嬢”と呼ばれるマーガレット。
 弟は親友と結ばれ、妹は結婚しようとしている。
 最愛の父は2年前に亡くなり、失意の中、口うるさい母親と2人きり…。

 自分のことは自分でやる。今にしては普通のことが、口に出して言うだけで変人扱いされてしまう貴婦人の世界。自分の気持ちに正直で、本当は前向きなマーガレット。彼女は、どうすればよかったのだろう。

 19世紀のロンドン。貴婦人マーガレット・プライアは、ミルバンクの監獄を慰問に訪れる。そこは、訪れる人を飲み込み、捕らえて離さない、狂気に満ちた場所だった。
 あるいは、マーガレットはその狂気にあてられた被害者なのかもしれない。塞ぎ込んでノイローゼ気味だった彼女に、自分の裕福さ、幸福さを再確認させるためにと慰問に行かせた人物は、大きな間違いを犯したことになる。
 狭くて不潔な房に入れられた女囚たちは、罰とはいえ、ますます人間らしさを失くしていく。そんな女囚監獄で、マーガレットは一人の女囚と出会う。
 シライナ・ドーズ。
 みすぼらしい監獄の中、そこだけ天に祝福されたような光を浴びる彼女は、霊媒師だった。

 物語は、マーガレットの日記と、シライナの過去の記述によって綴られる。
 貴婦人マーガレット・プライアの丁寧な描写。霊媒シライナ・ドーズの不思議な霊媒記録。そんな妖しい文章が、結末をさらに悲劇的なものに作り上げている。

 マーガレットは感性の鋭い、繊細な人間なのだった。敏感で、感情の豊かな愛すべき人間。理不尽な母親の要求、貴婦人の在り方に嫌気がさしても、それは仕方のないこと。
 自分のやりたいことすら見つける暇を与えられず、親の敷いたレールの上を歩かされ、反発の仕方も分からない。
 諦められたら、どんなに幸せだっただろう。
 ただ、自分の思いが強かっただけ。
 なのに。

 悲劇の結末は、誰が予想できただろう。

 霊媒師の少女が登場することで、現実離れしたストーリーの雰囲気作りは成功している。
 貴婦人と監獄。貴婦人と霊媒師。
 このアンバランスさが、クライマックスを効果的に盛り上げる。
 物語の世界から現実に戻ったいまも、その衝撃はまだ覚めない。

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紙の本間取りの手帖

2005/01/06 13:47

純然たる不思議ワールドが実在するなんて。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 “ヘンな間取りあります”という張り紙のある不動産屋。そんな雰囲気の本です。

 そもそも間取りというと、何時間眺めていても飽きないもの(もしかしたら個人差があるかもしれませんが)。そんな間取りの中から、ヘンなもの、不思議なものだけを集めた1冊。こんなの反則だってば。

 しかも、それら1つひとつにつけられたコメントが秀逸。語り口は淡々としてるのですが、ツボにはまって、思わず吹き出してしまうこと請け合い。きっと、こんなヘンテコな間取りばかりを集める人だから、感性も他人とはちょっと違うのです。

 所々にちりばめられたコラムは、いまいち。これだけはちょっと余計だったかな、と。


紫微の乱読部屋

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