MITUさんのレビュー一覧
投稿者:MITU
紙の本Mars 5
2002/02/04 18:15
傷をもつ亡霊
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零の中に混在していた記憶が今、鮮やかによみがえる。生き残った者に大きな傷を残していった聖の存在をキラは、受け止めようとする。喜びや美しさは人々に感動は与えても、長時間にわたりその思いを印象づけることはできない。零やキラをつなげているのは痛みや傷を忘れることなく、受け入れた、真実の叫び。終わることのない、過去の再来は愛することでのみ、包み込むことが出来る。そう感じることの出来る一冊。
2002/08/28 09:40
バリューネーム
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自分の出生をたどるたびに出たアレックス。そこでであった人々に彼は自分のルーツを感じ始める。どんな時にも後悔するくらいなら今出来る最善をする。アレックスの出した結論についてきた結果は? 憧れた自分になる。そういう事をだれしもが思う。それを手に入れるために自分自身がどれだけの努力をしていけばいいのか。方法を考えすぎて、失敗を恐れて臆病になる人の心をこの作品は前向きなベクトルに方向転換させてくれる。案外欲しいものなんて今は腐っているもの。憧れた自分は本当にあなた自身のなかにはないものですか。自分を見詰め直す物語ついに完結。
紙の本MONSTER 18
2002/03/03 07:24
HEHASNONAME
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人が彼に名前をつけた。ほんとうにたくさんの名前を。彼はすべての名前を引き受けた。次第にそれは吸収され、彼の一部になっていった。どれもが本当で、どれも嘘の名前。人は彼に名前をつけた。彼はそれが自分なのだと信じた。彼は名前を食い尽くし、それは一つずつ減っていった。…彼には本当の名前がない。しかし彼は存在しつづけた。憎しみに覆われた名前のみを持ち、彼は誰かが本当の名前を呼んでくれるのを待っていた。「神」でも「天使」でも「怪物」でもなく、ただの名前を。真実とは、本当のことじゃない。そこにたどり着くことはできない。だから生きようと思う。切実で、残酷なモンスター級のミステリー対に完結。
紙の本ニューヨーク・ニューヨーク 4 (Jets comics)
2002/02/21 12:57
OVER
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あらゆる過去に色々な形で決着をつけるときが来た。ようやく平穏な暮らしを取り戻したかに思えたが、事件のトラウマは慌ただしいニューヨークでは癒せなかった。二人の新しい生活は、ケインの故郷で始まった。不幸続きの二人の物語は、どこまでも終わらないように思われたが、あらゆる物語と同じように、静かに終わりをとげることに安堵することまちがいなしの最終巻。今でこそ国際的に、活動が行われているゲイの認知運動だが、その現状はまだ厳しいといえる。ゲイにとって住みやすい土地もいくつかアメリカに存在するが、物語の舞台となったニューヨークは、比較的住みにくい土地といわれている。それでもどんな時も希望を捨てずに、信じつづけた二人の生涯は、ゲイたちが掲げた旗の柄のように「虹色」だったにちがいない。ゲイという異色のモチーフを選び、書き抜いた著者の表現力と、世界観には脱帽するばかりである。
紙の本ニューヨーク・ニューヨーク 2 (Jets comics)
2002/02/21 12:39
RING
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自分の本当の姿を現実に存在させるために、両親に告白(カミングアウト)をする決心をしたケイン。ゲイであることで一番大きな壁となるのがこの、「両親にする告白」であるといわれているのが、何故なのかが、簡潔に描かれている。また、作中に登場する人々の告白に対しての反応は、十人十色であることも非常に興味深い。そんな中、メルが抱えている過去がある事件を巻き起こす。真実を知ることはたやすいことだが、理解するには何と困難を極めることだろうと、思わずにはいられない第二巻。
紙の本Mars 14
2002/02/18 21:34
WALKBYMYSELF
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キラの夢と引き換えに、バイクレーサーの夢を諦めた零。ひょんなことがきっかけで、その思いに気付いたキラは、零の父親に彼の夢への情熱を伝えようとする。人間が生きている中で、あるべき自分というものになれる可能性というのは、本当に少ない。それは、誰かを傷つけてしまう道であるからこそ、臆病になってしまうこともある。それを乗り越える二人の芯の強さには、逆に人を勇気づける力があると感じざるを得ない。吸引力のある一冊。
紙の本Mars 2
2002/02/18 21:20
ATMICBIRD
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零にどうしようもない魅力を感じながらも、超えられない一線を感じ、戸惑うキラ。感情も行動もストレートに見える零に、見え隠れする過去の影。息吹き始めた魂は、身をもだえてまとわりつく何かを必死に取り払おうとする。うまれおちたものは、あまりにも儚く、触れると消えてしまいそうなもろさを持っていながらも、触れずにはいられないものも持っていた。過去に影を落とすその怪物の正体は…。急展開の第二巻。
紙の本Mars 1
2002/02/18 21:09
REUNION−再会−
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周囲との関係を遮断し閉鎖的な生活を送る少女と、死ぬために、刹那的に生きていた少年が出会った。それは、まるで、遠くどこかに忘れてきた何かを思い出すための再会とでも言うように。人の出会いには、必ず何かの意味があり、それはどんなものにせよ、人生を変える一瞬である、という可能性を信じさせるような本。必読です。
紙の本Mars 9
2002/02/14 15:25
Aqua
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陵辱を受けた義父と再び一緒に暮らすことを決心したキラ。その思いを理解できずに零は憤る。二人の間にくらい沈黙が訪れる。愛が暴力となってしまう以上、いやしかたも慰め方も分からない。それでもそばにいたい。悪夢は過去の再来ではなく、未来の予兆だった…。二人の場所は夢の中ではなく、いつも現実の中にあった。
本当に切実な思いだけが、傷を隠すのではなく、包み込むことが出来る。等身大の現実を生きる私たちにとって、未成年であることへの甘えと、憤りをストレートに表現する彼女の作品は、発見と現実へ立ち向かう勇気をくれる。
紙の本Mars 3
2002/02/14 15:16
DIDNOTIT「RAIN」
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地に足がついていることを確かめるように、何度も踏みしめたり、息をしていることを確かめようと唇に手をあてたり。それぞれが生きていることを感じようとして、無意識にひかれあう二人。強く生きるということは、守るものが確かにあると感じること。キラは零を見て、零はキラを見て、自分の中に「生命の息吹」があることを、何度も感じる。強く生きようとする人は、恐怖や弱みに目を背けずに、包み込むひろさを持っているのだと感じることの出来る一冊。
紙の本村上朝日堂はいほー!
2002/02/14 14:55
「ムラカミハルキ」実体化。
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彼の作品を取り巻いていたさまざまな情景たちは、いつも彼の側にありつづけていたのだと気付く瞬間。決してありえない状況ではないのだけれど、自分から少し遠く離れたところにあると思っていた風景は、単なるアングルの違いだったのかと安堵する部分もあり、逆に同じ風景にもかかわらず自分にはこういった見方が出来なくてさびしくなるという部分もあって、自分が複雑になってしまうエッセイの数々。発想の転換とはよくいったもので、自分がどれだけ周りの世界を面白く見るかに、人生の楽しさというものがかかっているのか考えさせられる。今、ここにいる瞬間にも、特別な空間にしたり、つまらない空間にしているのは結局自分なのだ、ということに気付かせてくれるエッセイ集。
紙の本Mars 8
2002/02/08 07:04
それは一番無垢で守りたいもの
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キラの一番恐れていたことが、現実となって押し寄せてきた。抑圧したはずの叫びが、傷口から流れ出した血のようにとまらない。愛し合う以上、それは、もっとも喜びに満ちた体験となるはずであったのに—。鮮明に残る過去の体験を忘れることが出来ないことを身をもって知っている零。かたくななキラの強張った体を、心を、受け止めるために彼が真実と向き合うまで、そして向き合ってからの心情の動きには注目。あの夜がまるで夢であったかのようにかすんで見えることもある。けれどそれは嘘じゃない。全身を震わせて泣く生まれたばかりの赤ん坊のように解き放たれた魂はどこへいくのか…。
紙の本Mars 4
2002/02/04 18:08
REAL
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しおりが現れると共に、零に聖の亡霊がしのびよる。聖と自分を重ねて見られていると感じるキラの心はやっとのところでバランスを取っていた。ここにある、零との関係のみを必死で信じつづけようとするキラ。真実と虚無が混在する中で零が思い出した、本当の過去とは? 痛々しくもまっすぐな愛がここにある。愛するということを表現する方法を知らない二人が、迷いながらも、真実に触れようとするたびに、どうしようもないなにかが壁となって阻んでいる。日常ではないと思っていても、感情移入をしてしまう著者の世界観には、まさに圧巻、です。
2002/02/01 13:18
存在意識
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作家村上春樹によって日本にちょっとしたざわめきを残したレイモンドカーヴァー。空気のように日常では日記に残されることもないささやかな出来事を、あたたかさ、みにくさ、やさしさなどを、忠実に語るカーヴァーの短編小説は、物語であるにもかかわらず、ひどく日常的で、あっけない。物語として語られているのなら、そこには終わりが終わりの形として存在するはずであるのに、突然電話が切られてしまうように終わってしまう。そこにあるのは心地よい裏切りと、その忠実さ故に隠されることのないみにくさや、みっともなさ。しかし、それを丸ごと愛さずにはられないような空気が、一つ一つに、それぞれ違う場所に存在している。現在上映中の『息子の部屋』でも挿入されたカーヴァーのささやかな物語を味わってみませんか?
2002/08/28 09:00
この日々
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英語の時間に頻繁にいわれることは、英語で日記をつけると確実に力がつくということだ。日常を英語でつづるということがいかに大変であるかということは、日本人が英作文が苦手だということと十分に関連があるだろう。私自身も何度か英語で日記をつけたことがある物の自分の書きたいことと英語能力のバランスが取れずに何度か挫折した。自分自身で英文を作らなければというような妙な責務感に襲われるが、実はそんなに難しいことではなくて、元々ある例文の部分部分を自分の書きたい単語に書き換える。それを繰り返すことによって力がつく。実際に自分が長い日記が書けるようになってくると毎日続くようになっていく。日本語で書く日記では続かないことも英語で書けることがわかると、妙に書きたいことがたくさん出てくる。実際の体験として、現在も私は日記を書きつづけている。英語にコンプレックスのある人、必読。