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はぴえださんのレビュー一覧

投稿者:はぴえだ

52 件中 16 件~ 30 件を表示

新たなる出会い

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

雛見沢に新しいキャラクターが登場する。
園崎詩音。
彼女は存在するのか、しないのか?
そこからまず読者は圭一同様、振り回される。
詩音は魅音に似ているが、魅音とはどこか違う。
話を読み進める内に、まさか魅音にそんな一面があるだなんて、と驚かされたり。
読者はそのギャップにときめかされるかもしれない。
ひねりが効いていて、ミステリアス。

この巻は鬼隠し編でキャラクター紹介が済んでいる状態で進んでいるので、キャラクターがより際立ちはじめている。
いわゆる“萌え”というものがかなり多くで導入されていて、楽しく読ませる大きな要因の一つとなっている。テンションが非常に高く、おかしくて笑わされるのだ。
けれども、それに騙されてはいけない。
この物語のおもしろさはそこだけには留まっていないのである。
ただの繰り返しだけではないストーリー。
起きる事件も、過去に起きた事件、それは同じなのだが、プレゼンテーションの仕方が異なっている。
鬼隠し編とキャラクターたちの行動や内面(考え方)が少しずつずれているのだ。
新たなキーとして、鷹野・富竹・詩音・祭具殿。
今回、圭一は果たしてどのような行動を取るのか?

見事な前ふりは終了した。
事件は本格的に下巻で動き出す。
続きがもう待ち遠しくて仕方がないのである。

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「ひぐらしのなく頃に」の魅力

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何故こんなにも、この物語に惹き付けられるのだろう?と思う。
さまざまなキャラクター達に、謎めいたストーリー。
上巻と下巻でのキャラクターの性格のギャップに、不可解な謎を軸にしたストーリー運びがとても上手く、魅力的なのだ。
上巻ではほとんど話が動くことがなく、少々苦痛を感じるくらいで、どうしてこんな話を延々と読まされなければならないのか?と思うほどだったのだが、下巻に入ると、もの凄い勢いでことが動き始める。それも怖いくらいに。
その勢いの内に、主人公の圭一に感情移入させられ、物語の世界に引きこまれていく。
ひたひたと恐怖が迫り……幸せだった日々が嘘のよう。
上巻でぬるい日常がつらつらと綴られていたのは、このためだったのか!とはっとさせられる。
この落差がこの「ひぐらしのなく頃に」のミソで、恐怖、倍増!ということなのだろう。
些細な猜疑心がちょっとしたことの積み重ねでどんどん膨れ上がっていく。
信じていたものが信じられなくなり、誰にも相談できなくなり、一人で抱え込むようになってしまった圭一。
そんな圭一に訪れたラストとは!?
謎はいくつも残るが、話はきちんと終わっている。
残された謎は自分で考えてみるもよし、次を楽しみに待つのもよし。
恐怖を、読者を楽しませる装置として導入している小説だが、ただ人を怖がらせるだけのものにはせず、大事なこともきちんと伝えようとしている作品。
だからこそこの物語に、こんなにも惹き込まれてしまうのだろうと思うのである。

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小説「ひぐらしのなく頃に」のはじまり

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人気同人ゲームのノベライズだが、侮るなかれ!きちんと小説になっている。
もちろん、シナリオライター本人が小説化したというのも大きいのだろうが、ゲームに全くひけを取っていない。
ほとんどのノベライズ作品は大体が物足りないものばかりだ。
ドラマやマンガのノベライズは本当にドラマやマンガがそのまま文章化されたものばかりで、面白みに欠ける。
背景やキャラクターの演技をさらっと描写し、当たり前なのであろうが、台詞はほとんどそのまんま。オリジナルを越える必要は決してないとは思うが、オリジナルの面白みが伝わってこないというのはかなりせつない。
その中でもこの「ひぐらしのなく頃に」の成功は冒頭でも挙げたとおり、クリエーター本人が手がけたという点が成功の鍵を握ったのかもしれないが、ゲームの時よりも成熟を見せているように感じる。
小説は立ち絵もなければ、効果音も、音楽も、背景もない。そうすると、ある程度の背景やキャラクター描写が必要になってくる。
従来のノベライズ作品はその描写が足りなかったり、過剰だったりして、物語のバランスを失っていた。
しかし、この作品ではそのさじ加減が絶妙なのだ。余計な描写はないし、何か足りないなと感じさせるところがない。
過不足がないというのは実に大切なことだと思う。過剰であれば、冗長と感じてしまうし、不足であれば、あっさりしすぎてしまい、物足りなく感じる。ひいては、おもしろくないという烙印を押されてしまう危険を孕んでいる。
そこのバランスが上手く取れているだけで、この作品は十分成功を収めているといっても過言ではないと思う。
けれど、この作品が優れているのはそこの部分だけではなく、テンションを上手くコントロールして、落ち着いて読ませる点にもある。
ゲームの時はユーザーを引っ張る力がもの凄く強くて、死に物狂いで着いていくだけだったが、小説では強引さだけではなく、上手い具合に強弱をつけて、読者の手をひいていってくれる。
どちらがより物語の世界に没頭させるか、ということに関して評価をつけるとしたら、それはとても迷うところではあるが、小説は勢いだけでは成り立たないと個人的に思っているので、落ち着きをも手に入れたこの作品に付けられたあおり文“これぞ小説!”というのは決して過大ではないと思う。
さて、肝心のストーリーについてだが、今は我慢が必要と書いておこう。この巻は、キャラクターと雛見沢という世界についての紹介といった印象が強い。第一話の上巻だから、仕方がないと思うし、これから先のために必要なことなのであろうと理解できる。
普通の楽しい日常が延々と綴られ、ぬるいなあとしみじみと思ってしまう。ラスト近くになってきて、<綿流し>を境に、普通の楽しかった日常に影が落ち始める。さて、どうなっていくのか!?
おもしろくなるのはこれから。下巻が大いに楽しみなのである。

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紙の本花物語

2011/04/11 23:09

今はまだつぼみ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ザ☆青春小説。

西尾維新の作品と言えば、ほとんどが青春エンタで、エンターテイメントであるということは理解しているのだが、私の読解力のなさなのか、青春小説としては、分かりにくさを覚えている。
大体が斜め上や下を行っていたり、回りくどかったり、飄々としていたりで、煙に巻かれているかのよう。それが、楽しくおもしろくて、クセになるのが特徴で、最後まで読んで、青春だったね?と思うくらいで。

それが今回は、失礼ながら、非常に分かりやすく。

語り部が、神原駿河という、思いの外、普通の人格の持ち主だったがため、設定は怪異なのだが、根本はその世代の若者が生きていく上で抱く悩みを彼女を通して、素直に表現されているので、大変共感しやすい。

ベースは、本当にいたって普通。
それを普通すぎる仕上がりにしないのが、西尾維新の真骨頂。
個性的なキャラクターたちに、会話のおもしろさで、見事に普通には見えないストーリーを紡いでいる。
いつもよりは、笑える要素は少なかったが、それと引き換えに誰にでもストレートに伝わるという長所が加わった。

鉄壁!青春エンタの鉄板!といっても過言ではないと思う。

今、青春のまっただ中にいるすべての人たちにとって、救いとなる小説となっているので、彼らにはぜひ手に取って欲しい。
もちろん青春を通り過ぎてしまった方々にも、十分楽しめる作品なのでぜひ!

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紙の本少女

2009/03/28 22:32

因果応報という言葉の重さ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最初に、ミステリだという認識があって、読み始めた作品。
けれど、読み進めていくと、これは上質な青春小説なのでは?と。
思春期の悩み。
丁寧な友人関係の描写。
ぐらぐらと日々揺れ動いていく少女たちの想いがリアルに描かれていて圧巻だった。
感動すら覚え、すごいなあと感心していたら、最後にまた驚愕が待っていた。
無駄が何一つとしてなく、すべてがつながっていた。

ラスト、作品中に出てきた、因果応報、という言葉が私の心に突き刺さり、重くのしかかってきた作品だった。


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紙の本図書館内乱

2008/05/26 20:52

正しく内乱です。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

綺麗なものだけを見て生きていけるほど、世の中そう甘くはない。

良化委員会と図書隊の戦いが中心に、かと思いきやそれだけではない。
図書館という大きな部分で、物語は複雑さを見せてくる。

その他にも親との関係性、男女の関係性、兄弟との関係性と、人との関わり合い、駆け引きがこの巻では描かれている。
よくある身近な人間関係の悩み。誰もが一度は思い悩んだことがあるようなことが多く、共感させられる。

今巻の中で、最も印象深い部分といえば、私的にはやはり女子のみなさん。

何かもう、女は強し!といった感じかな。

毬江も、柴崎も、郁も。
守られているだけじゃないんだから!と主張している。

戦う、女子。←良いですっ。

相変わらず突っ走るヒロインに、微笑ましさを覚える。

そして、今回のラストは大爆笑!

乙女の明日はどっちだ!?

もう続きが気になって、気になって、仕方がない。
ここまで読んだら、次巻も読むしかないでしょ!?的な状況に追いやられる1冊だった。

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紙の本猫と妻と暮らす

2011/12/19 21:19

ゆるぎないもの

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

テイストが今までの作品とどこか異なっている。
物語の根底に流れているものは、いつもと同じだとは思うのだけど、感覚的に違う気がするのだ。ただそれは私の中だけの印象でしかないかもしれず、どこがどうと具体的にうまく説明できないのがもどかしい。
無理に、誰にでも分かる、分かりやすい部分、私でも何とか説明できるところをひとつ挙げるとしたら、それは時代設定が小路作品において今までにないところだ。
時代がこれまでは現代か、もしくは、少し昔くらいだったのが、具体的には描かれてはいないものの、大分前であるというのを感じられる。
時代が変われば、必然的に語り口調は変わる。これだけで、印象はがらりと違って見えるのだ。
現代のそれとは違うが、旧式のとっつきにくい口語などではなく、今を生きる私たちにも分かりやすく、捉えやすいもの。どこか飄々と、淡々としていて、するりとすりぬけていくようなイメージで、いい意味で掴みどころのない感じなのだが、すいっと入ってくる。
以前の作品も、それこそあっという間に日常的な親しみやすい語りで、作品の中に引き込んではいたと思うのだが、指摘させてもらった通り、方法が今までとは明らかに異なっている。
ありのままである(自然である)、のと、前もって用意されている(作られている)、というくらい違う。
どちらも物語の世界にいざなっていくにはとても有益であり、吸引力抜群で、両方とも好みではあるのだが、今作品の目新しく、ほんの少しだけクセのある文章はつぼだった。
そして何ていっても、インパクトのあるはじまり。
奥さんが、猫になっちゃった!っていうか、なっていた!
何なに、なんなの?どうなるの?ちょっと言い方は古いけど、つかみはOKみたいな(笑)。
突拍子のない方向に行くのかと思いきや、物語は着実に、ドラマ性もきちんとあるのだけど、冷静に進んでいく。
あからさまな感情の表現なんてないし、すごくドキドキするとか、わくわくするとか、そういう感じではないのだけど、知らぬ間、こころにやさしいきもちが浸透し、いつかきっと、という信じる・信じたいきもちがむくむくと湧き上がってくるのだ。
ここだけは、普遍的であり、いつも、どの作品にも、少しの厳しさと、沢山の優しさ、温かさが、いつも音楽のように流れている。当たり前のように、自然に。
癒されて、救われて、明日も元気に生きていこう、暮らしていこうという気にさせられるのだ。
飽きるくらいに(飽きないけれど)大事な部分だけはいつもと同じ。
テイストが、作風が、ジャンルが、どれほど変化をみせたとしてもとしても、たいせつなものは変わらない。
寧ろ、作風の幅が広がったことにより、新たなる魅力が増し、私は、さらに小路幸也という作家に、惹きつけられてしまった。

すこし風変りで、けれど、とてもやさしいこの物語が、一人でも多くの人のもとに届くことを願ってやまない。

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紙の本県庁おもてなし課

2011/04/15 20:59

ひかりはすぐそばにある

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

有川さんの作品というのは、健全で、まっすぐで、ひたすら正しいことが描かれている。
そういうのって、読んでいて、とても共感しやすい。
誰しもが分かるなぁ~と思うだろうし、そうありたいと願うだろうし、自分と重ね合わせてふがいなさに情けなくなる時があるだろう。
これがほどよいバランスの時は、素直に自分もがんばらなきゃ!という気持ちになれ、有り難い教訓となってくれるのだが、一歩間違うとバランスが崩れてしまい、おしつけがましく感じ、説教は結構だよ!という気分になる。
ここ最近、いろんなことが教訓めいていて、ちょっと一歩引いた感じになってしまっていたのだが、今回はまっすぐのめりこんで、とてもおもしろく読んだ。

今、こういう時期で、日本全体が元気がなくなっている。
この作品、今この時にとてもぴったりで、言い方は良くないが、タイムリーだったなと感じるのだ。
内容とかが、今、この現実にリンクしているわけではないのだが、観光を通して地元を元気にしようと悪戦苦闘している姿は見習うべき点が多いと思うし、観光だけに限らず、これから長い時をかけて日本全体にとって、必要なことだと思うのだ。

それ以外にも個人の仕事に対する姿勢や、取り組み方、人との付き合い方。
ほとんどが当たり前のことだが、忘れがちになってしまうことがちょこちょこと出てくる。
ためになる、と書いてしまうと、難く思われかねませんが、やさしい言葉で読者が受け取りやすく、吸収しやすいように語りかけられているので、とても参考になる。

観光と、お仕事だけでは、少々物足りなさを感じるのだが、有川さんらしい少しの胸キュンがスパイスとしてふりかけられている。
おとなでも、こういう甘酸っぱさは、心をやわらかくしてくれて、いいな!って思う。

楽しくて、おもしろくて、元気をたくさんもらった。

心の糧になってくれる作品。
たくさんの人に読んでいただいて、ぜひ笑顔になってもらいたい。

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紙の本トッカン 特別国税徴収官

2010/10/19 22:51

お仕事小説はいかが?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

掴み(オープニング)が強烈で、一気に心を鷲づかみにされる。
これは、もしや抱腹絶倒コメディかっ!?というような始まり。
だってね、ぬか漬けが飛んでくるんですよっ(笑)!
普通はコメディ展開で行くと思うじゃないですか。けれど、それだけではなかったのです。

主人公のぐー子はどこにでもいそうな、働く女子。
ぐー子自身も中々おもしろいのだが、周りにいる人々(同僚)がまた濃い。
主人公(ぐー子)が比較的普通の人なので、とても感情移入しやすく、脇キャラも楽しいので、大変読みやすいのだが、話が進んでいくにつれ、どんどんいたたまれない気持ちになっていく。
ぐー子があまりにもどこにでもいそうな人物であるが故、自分にも身に覚えがあることがたくさん出てくる。それがまたとてもリアルなのだ。
もしこれが普通の会社で働いているOLを主人公に据えて描かれてしまっていたら、いたたまれなくなるどころではなく、現実と重なりすぎてしまって、読むことを投げ出してしまっていたかもしれない。
がしかし、この小説の舞台は、国税局・税務署。特別国税徴収官というあまり目に触れる機会がない職業。税金のことやトッカンの仕事のことって私はあまり知らなかったので、興味をそそられ、読むのを止めることができなかったのだ。まさしく、舞台装置の勝利。
ただ、いろいろなことを知っていくにつれ、たとえ仕事の内容は特殊でも、仕事に対する姿勢や取り組み方は、職業によってそうは大きく異なるものではないということを改めて感じさせられた。
加えて、仕事上だけではない、人と接することの難しさ。人の一面ばかりを見ていてはその人を知ることはできない。いろんな角度から見ない限りは他人のことも、自分のことさえも分かりはしないということをどん!と突きつけられた。
人が常にフラットでいるというのは難しいのだが、その大切さを今更ながら再び教えられたのである。

もがき苦しみながら、それでも一歩ずつ成長していく、ぐー子が愛おしい。

読み終わった後、私も彼女のように、ゆっくりでもいいから前に進んでいけたらいいな、と心から思ったのでした。

働いている人すべてを後押ししてくれる、リーダビリティの高いお仕事小説。
一人でも多くの人に読んでいただきたい作品である。

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いくつもの世界

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

掲載誌が変わったせいなのか、雰囲気が大人っぽくなり、変貌を遂げている。

あらたなる人物の登場。
ヴェータ、彼女はかの日のノンナを見ているようなのだが、今までのライバルとは違うし、ノンナともまた異なる。
勝気で、努力家で、そして急いでいる。潜在能力は高そう。
そんな彼女にノンナはかつての自分とを重ね、恐れる。自分の場所を奪われるのではないかという不安は、読者をも揺さぶる。
エーディク、彼は才能溢れる、ニヒルなユーリのライバル。
ただ、エーディクが一方的に彼をライバル視しているようにも見えて。

ノンナを中心に、各々の思惑や駆け引きが複雑に絡まって、思いもよらぬ方向へ進んでいく。

ヴェータも、エーディクも、季節のように通り過ぎていくのだが、彼らの立場になって読んでみると、あまりにはがゆく、なんてせつなく、厳しい人生なのだろうか、と。
彼らのバレエに対する情熱は、ノンナやユーリと全く変わらないし、ひけを取らない。
タイミングや環境の、僅かな、ほんの少しの差で、人生はここまで大きく変わってしまうものなのか、と愕然とさせられる。
フィクションの世界のことなのだが、あまりのことに胸が締め付けられてしまう。
実際、これは現実世界でも同じというかありうることで、その事実をこの物語は、残酷なまでに淡々と描き出しているのだ。
ストレートにこれらを描いてしまうと、重苦しくなってしまうだけなのだが、恋愛やバレエと絡めて表現することにより、フィクションの世界を見事なまでに構築し、ドラマ自体に読者を引き込むことに成功している。そう、とても読みやすくしているのだ。
ただ、読みやすくすればするほど、浮世話になってしまうというリスクもある。あまりに夢物語にすると、いつかあっさりと目覚めてしまうものだ。
この作品は、すべてを絵空事にはせず、時代の影をも取り入れることにより、現実世界との完全乖離を回避し、絶妙なバランスを取っているのだ。それがこの巻では顕著に見られた。

舞台装置に、テーマ、見せ方。
すべてが大きく、幅広くなり、あらゆる世代が楽しめる作品に進化していることを実感させてくれた一冊だった。

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紙の本あられもない祈り

2010/06/14 22:22

真摯な祈り

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

濃密な空気と、不可思議な恋愛。
最初から惹かれあうものがあるにもかかわらず、どうしてこうも素直に飛び込んでいけないんだろう、といらいらしつつページをめくるのだが、人というのは時として、奇妙な行動を取るものだし、天邪鬼な部分もあるからこそ、分からなくない。
寂しいのが、一人がダメで、いつも誰かといたくて、恋に、相手に依存して、息苦しいほどにのめりこむ。すべてを捧げて、どうしようもなくなると、すべてを投げ出して、逃げる。ただ漠然と読んでしまうと、何だかなあと思い、冷めてしまいがちだが、実のところ、これは正しい行動なような気がして、理解可能だったりする。
そう、表面上は理解しがたい人、理解しがたい恋愛を描いているように見えるが、突き詰めて考えてみると、人の本質を突いているような気がしてならないのだ。
恋をすると、感情の降り幅が大きくなる。それを淡々と、時には熱く描き出し、主人公が変わっていく過程を見事に書き切っている。恋を、愛に、昇華させて。
まだ弱いかもしれないけれど、強くなりつつある。
孤独におびえながらも、孤独を選び、生きていく。
自分がすべてだったのに、それだけではなくなって。
そして、祈るのだ。いとしい人の幸せを。
それは決して、あられもない祈りなどではなく、真摯な祈り。
今は弱くても、きっといつの日か、人は強くなるのよ、と教えてくれる恋愛小説だ、と感じた。

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紙の本つめたく、あまい。

2010/04/05 22:19

つめたく、あまく、ゆるい。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何とも言えないバランス感覚を持った作品集。

ありそうでなさそうな恋愛模様を描いている。
さらっとしてるんだけど、ねっとりしてて、少しマニアック。
萌えまではいかないんだけど、ぎりぎりのラインでストーリー性を保っている。

失礼ながら、おもしろいんだか、つまらないんだか、というふしぎ感覚を持った作品なんですね。
多分、その日の気分でおもしろかったり、つまらなかったりするかもしれないというなんとまあ、ある意味稀有なコミックス。

絵は、さらり・すっきりで、おんなのこが非常に可愛い。
ふわんとしていて、エロさもあったりする。
妙な色気があるのね。

扱っている題材にもエロがあったりして、そういう描写もあるのだが、生々しさがなく、いやらしさ度が存外低い。
それって、身構えず読めて、とてもいいと思う。
あまりにリアルだと、引く部分があるので。

どの話も結構ぐるぐるしてて、でも恋をしている時というのは、自分や回り、そして相手が見えなかったりすることが多いわけで、そういうところはリアルで秀逸な作品だな、と感心した。

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紙の本ガーデン・ロスト

2010/02/03 21:50

青春のかたち

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

4人の少女たちのいびつな青春。

果たして、これは歪んでいるのだろうか?
決してそんなことはないと私は思う。

確かに、極端なエピソードもあるが、彼女たちはリアルに、どこにでもいるような気がしてならないのだ。

寂しくて仕方がなかったり、優しくありたかったり、人に嫌われたくなかったり。自分をすきになれなかったり、自分を大切にできなかったり。
青春時代の悩みが苦しみが、覚えのある、誰もが通る道が、目を逸らすことなく見事に描き切られている。
それは、それは、痛いくらいに、忘れていたあの日を、抉り出しているだ。

苦しい、つらい、いやだ、ということが本当にたくさん綴られているのだが、それだけではない。
ラストには、僅かだが救いも用意されている。
救いというよりも、勇気なのかもしれないが・・・・・・。

綱渡りの友情も、それは確かな絆。
いつかは、失われてしまう少女たちの花園。
不安を飲みこんで、一歩を踏み出す。

この作品を読むことは、青春の中にいる人にとっては勇気になるだろう。
青春を終えた人にとっては、青春の日々の追体験となるだろう。

私にとっては、失われたあの日々を思い出すかのようなひとときだった。




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紙の本宵山に啼く恋し鳥

2010/01/20 23:25

言葉の妙

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一途で、せつなく、ひたむきで、不器用な恋。
恋に落ちる過程、ストーリー展開はごくありふれたものなのだけれども、舞台装置が秀逸で、物語を風情あるものとしている。
昭和初期の京都が舞台。それに沿った文章がきちんと使われている。
京言葉に、時代に合った言葉使い。懐古的なものというと、堅苦しいイメージがあるのだか、分かりやすい言葉選びがされているので、世界にも入りやすく、寧ろ目新しさを感じさせる。
物語の設定に影が持ち込まれていて、話がせつない展開で進んでいく。影と古い言葉(漢字言葉)の多用が、雰囲気にあった文章を生み出し、見事融合させ、しっとりと趣のある世界にしているのだ。
それらが恋を、情熱を引き立てて、読者の心を掴み、揺さぶる。

落ち着いた、和風な世界。
静かなのだけれど熱い恋。
世界に浸って、心を焦がしてみるのも、いいだろう。

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紙の本スノウ・ティアーズ

2010/01/07 11:06

涙の行方

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

風変わりな小説なんだけど、根底に流れるものは、せつなさ、かなしみ、恋、そして生きるということ。

ジャンル分けがとても難しい小説で、恋愛ものといっていいような気もするんだけど、青春ものといっていいような気もするし、幻想ものといっていいような気もする。

主人公は不思議体質で、こどもの頃からそれに振り回され、それでも閉じこもることなく何とか生きている。
ある意味、ここに強さを感じた。

そして、恋をする。
初恋だったり、淡い恋だったり、背伸びした恋だったり、すれ違いの恋だったり、打算の恋だったり。
地に足がついた時には、もう・・・・・・

ファンタジーまで突き抜けてないので、少しのふしぎなんだけど、その変わった感じに煙に巻かれそうになりつつも、じっくり考えて味わってみると、心締め付けられる作品で。

せつなさに、涙に、溺れそうになった。

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