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hachiさんのレビュー一覧

投稿者:hachi

35 件中 1 件~ 15 件を表示

日本人で良かった!

32人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ブッダとキリストが東京で、ルームシェアして
休暇を楽しんでいるという、宗教に無頓着な日本でしか
読めないような漫画だ。

浪費癖がある上にカナヅチで、ジョニー・デップに
似てると言われて喜ぶキリスト。
小学生が天敵で、シルクスクリーンが趣味の
手塚信者なブッダ。

後光が差したり、奇跡を起こしたりもするけど、
そういえば彼らも元々人間だったんだなぁ、
と思わずにはいられなかった。

しかし、やっぱり神と仏ということもあってか
引くような下ネタや、暴力シーンはないので、
家族で読んで笑えると思う。
こんな漫画が読める日本に住んでいて良かった!

続きが本当に楽しみな作品だった。

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紙の本車輪の下 改版

2007/09/20 23:00

結局何が車輪の下敷きだったのか。

13人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヘルマン・ヘッセの自伝的小説とも言われている「車輪の下」。
ハンスが神学校の試験を志すところから、不遇の最期
を遂げるまでが描かれている。

「車輪の下敷きになってはいけない。」という言葉が非常に印象的だ。
何気ない台詞のようにも思えるが、作品のタイトルにもなって
いるように、実は重要な言葉である。

ハンスは純粋で正直すぎる子供で、また天才だった。
ギーベンラート氏含め、周りの大人たちはハンスに勉強
することを進めた。ハンスは期待に応じようとせっせと勉強
するが、疲れていくばかり。大人たちは休む暇もくれない。
神学校に入れば、ハイルナーという親友ができるものの、
結局その友情も大人によって引き離されてしまう。
やがてハンスは疲れきり、世間についてゆけなくなってしまう。

一見すると不幸な少年の物語、で終わってしまいそうだが、
「普通の人にはわからない天才の生きる苦悩」というものが
所々垣間見られる。年齢の近い友達がほとんどいないハンス。
周りの人間と衝突し、神学校から脱走するハイルナー。
飛びぬけた才能というものは、なかなか理解できるものではない。
この二人の天才も本当ならば、自分を理解してくれる人を
欲していたに違いない。だから2人は親友になれたのだろう。
もし、あの世界にあの二人の少年しか存在しなかったら、
二人は引き裂かれることなく、親友でいられただろう。
天才と世間とは相反する言葉なのかもしれない。

この物語で一番の車輪の下敷きになったのは、ハンス自身
ではなく、むしろこの二人の友情なのではないだろうか。

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許される物語。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昔の少女漫画に興味を持ち、割とすぐに手に取った作品だった。
「風と木の詩」を読んだ直後で、よく比較されているこちらの
作品はどのような話なのだろう、と読んでみた。
はっきり言うと、それぞれ「愛」というものを視点を変えて捉えてあり、
比べるだけ野暮ということがよくわかった。

トーマという少年が陸橋から身を投げ自殺した。
トーマはユーリ(ユリスモール)という先輩を慕って自殺した。
ユーリはトーマの遺書に困惑し、さらにトーマそっくりの転校生、
エーリクにトーマの影を見ては、その都度感情を露にしてしまう。

難しい内容なので、何度も読まないと理解できない部分はあるが、
理解できた時には読んでいる自分も、なんだか許されたような
気分になってしまう。
最近は流し読みをしただけでも、割と理解できる漫画品が多いが
そういう作品が多い今だからこそ、読むべきだと思う。

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紙の本デミアン 改版

2007/12/12 23:46

永遠のテーマ

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

10歳の少年だったシンクレールが、デミアンという
少年に出会い、それがきっかけで今後の人生が自分自身
を見つめるとともに、少しづつ変わってゆく。

最初は気弱な少年が、いつしか飲食店で不良少年たちと
酒をあおるようになり、そのうち恋に目覚めその生活
を改め、その後は自分に助言をしてくれる新たな友人に
出会い、18になったころに再びデミアンに再会する。

シンクレールがデミアンと密接に接触するシーンは
出会った10歳くらいのころと、ほぼラストの方に
あたる18歳をすぎたころだけである。
しかし、シンクレールにはデミアンという人間が
言葉も姿もなくとも、いつもそこについている。
それは不良少年と一緒にいた頃もそうだし、新たな
友人に会ったときにも変わらない。
デミアンはそれだけ、シンクレールに影響を与えた人間だったのだ。

デミアンははじめに「カインとアベル」の話を持ち出し、
殺されたアベルよりも、カインの方が偉いのではないか、
という一つの説を教えてくれる。
しかしこれは単純なアベルへの批判ではなく、デミアン流
「自己とは何なのか」ということを示すための、一つの例のように思える。

その証拠にデミアンに会ってからのシンクレールは、
周囲の人間とあまりかかわりをもたず、一人自分自身に
ついて思い悩んでいるように見える。
特に絵を描くシーンからは、それが強くうかがえる。

「カインのしるしのあるもの」というのは、
「罪深き人」ということではなく、「自己に没頭しすぎて
周囲に順応しにくい人」ということのように思える。
確かに、シンクレールのように自分自身のことを考えすぎると、
周囲のことはそれで手一杯になってしまうように思える。
しかし、それは悪いことではなく、むしろ大切なことだと気づかせて
くれたのがデミアンだったのだ。
人間は実際自分自身でも、自分のことは良くて半分くらいしか
わからないだろう。「自己を見つめる」というのは一生かけて
考え続ける、永遠のテーマなのかもしれない。

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ロマンチックね。そうかもね。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


私は北国生まれの北国育ちなので、雪と言えば
吹雪、雪かき、圧雪アイスバーン・・・
などと、嬉しくない言葉が多く浮かんでくる。

雪の降らない地方の人が「雪ってロマンチックね」というのを
聞くたびに、「雪かきしてみろよ」などとよく思う。



この写真集を手に入れたのは、去年の夏だった。
ちょっとした事情があって買ったものだったが、
一ページ、一ページめくるごとに、表情の違う雪の結晶に
いつの間にか夢中になっていた。

写真そのものの出来もよく、細かいところまでよくわかる。
見れば見るほど、まるでガラス細工のようで、これが自然に
作り出されたものだとは思えない。
美しいの一言に尽きる。


また、雪の性質や、結晶の出来方などの解説も豊富だ。
セーターやマフラーの模様にあるような、五角形の雪の
結晶はない。雪のほとんどは綺麗な結晶ではない。
など、このような本格的な研究の内容も知ることができる。


夏に読めば涼しい気分に。
冬に暖房の効いた部屋で、うっとり酔いしれるのも良い。



こんな綺麗な結晶が振って積もっているのだ。
やはり雪はロマンチックなんだろうと思った。
(しかし、雪かきは是非していただきたい)



余談になるが、雪の結晶の出来方などを詳しく知りたい場合は
中谷宇吉郎氏の「雪」(岩波文庫)がお勧めである。
結晶の写真はいまひとつではあるが、雪の研究の部分は
非常に興味深い。

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紙の本アーモンド入りチョコレートのワルツ

2007/10/05 23:25

なんだか切ない。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「子供は眠る」、「彼女のアリア」、「アーモンド入り
チョコレートのワルツ」の3つの短編が収録された、短編集だ。
それぞれ主人公は中学生で、短く駆け足で過ぎて行きそうな
時間を、クラシックをモチーフにゆったり描かれている。

「子供は眠る」は主人公や従兄弟達が、親戚の別荘に
泊まりに行き、そこで夏休みを過ごす話だ。
毎日、勉強し、海に行き、買い物に行き、皆で料理をし、
そして寝る前には必ずクラシックの時間。
勉強はともかく、主人公を含めクラシックを聞かせている
章という少年以外は、この時間がとにかく苦手だ。
しかしラストまで読むと、このクラシックの時間を、
最後まで寝ずにいられた少年が、一人もいなかった
ことが本当に悔やまれてしまう。
最後の最後に主人公が最後まで聞いた時、
ゲームの隠しステージのように隠れた、章の優しさが
垣間見られるからだ。

他の少年は寝入っていて、それを知らないのが
読み手としても、なんとも歯がゆい。
反対に主人公だけでも、その一面を見ることができて
よかった、とも思ってしまう。



「彼女のアリア」、「アーモンド入りチョコレート」の
ワルツも「子供は眠る」とはストーリーは全く違うものの、
不思議な優しさに包まれた作品だ。
性描写などを無駄に入れたりせず、それぞれ短い作品ながらも
時々読み返したくなるような、気分にさせられる。

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紙の本どんなときもきみを

2010/02/24 02:48

神様がいたころの記憶。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。



この本を何度か読み終えた時に、頭を過ぎった歌がある。

「小さい頃は神様がいて 不思議に夢をかなえてくれた」

アニメ映画のエンディングにも流れる、松任谷由美のあの歌だ。



この物語は子犬が主人公の物語である。

子犬は、大好きな女の子を守るためには何だってする。
小さな虫や動物を追い払ったりすることは勿論、
挙句の果てには「あれくるうなみだってしずめる」なんて
ことまでしてくれようとする。
その姿は頼もしくもあり、いじらしくもある。


子犬の女の子に対する愛情はとても大きい。
それは、この物語の世界が小さく、愛する対象が少ないからだろう。
子犬と女の子(その家族もいると思われるが)とその自宅が
中心の世界である。そんな世界にある家はとても大きい。
まさしく「おしろ」である。


しかし二人が成長していくにつれ世界は広がるのだ。
女の子は学校へ行けば友達ができるだろう。
その友達の家に遊びに行くこともあるだろう。
世界が広がるにつれ、おしろだった家は小さくなっていく。

子犬は女の子ほど身動きが取れないだろうし、
女の子自身も成長するにつれて、友達や恋人に
夢中になって、子犬と一緒にいる時間も減るに違いない。

小さい世界だからこそ、これほどまでに大きな愛で
守ってもらえるのだ。


本当はこの本は
「愛する人を守るためなら、自分を犠牲にだってできる。」
と解釈するのが正解なのかもしれない。
しかし、二人(特に女の子)の成長のことを考えると、
少し切ないような感慨を抱くような、そんな気持ちになった。


女の子が成長しても、神様(子犬)に見守られていた日々を
忘れないでほしい、そう思ってしまった。

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様々なテーマで自己主張しよう。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

久しぶりに英語を勉強しようと思った。
しかし、いかにもテキストらしい、というか
単純に解説文がだらだらと書かれたものは、読む気がしなかった。

あまり高額ではないものが良い、手紙を書けるようになりたい、と
本屋で数種類のテキストを見比べていた時に見つけたのが、
本書だった。


価格も手ごろ(学生には少々高いかもしれないが)で
一つ一つの例文が長くなく、読みやすい。

またキャラクターの設定があり、前半はデザイナーに復帰した主婦、
後半は女子大学生。この二人がそれぞれ、英文メールやブログに
取り組んでいる。


テーマも豊富で、花見やクリスマスなどの四季の行事、仕事、家庭、
学校、趣味など一般的で使いやすいものから、親としての悩み、皇室、
自動車免許、ラッシュアワーなど、日常的だが少し変わったもの
まである。

文章そのものも面白く、
友人から来た手紙を読むような感覚だった。
解説もわかりやすい。



ただ、一つ残念な点をあげるとすれば、キャラクターの設定である。
前半の主婦のブログの内容は、やや愚痴っぽい部分が目立ち、
後半の女子大生は、高学歴で留学経験有り、何故か文才有り、
やや自信過剰、休日は派手に遊んでいる様子。
気にならない人は気にならないだろうが、せっかく
内容が面白いのだから、読者が友達になりたいと思えるような
キャラクターの方が良かったのではないだろうか。

しかし、リアルさはある。
愚痴っぽい話、自慢げな話はすると嫌がられるが、
本書の書き方を上手く利用すれば、上手な自己主張になるだろう。



自己主張上手になって、楽しく手紙はブログを書いてみたくなった。

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紙の本さらば、わが愛 覇王別姫

2009/07/02 00:00

悲しい

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何が悲しいかと聞かれると、総てが悲しいのだ。


母と別れて、辛い京劇の修行に耐える日々。
戦争による日本軍の侵略に怯え、
戦後は共産主義運動のいざこざに巻き込まれる。
実らない愛を貫こうとする、主人公(京劇では女役)。
その愛に気づかないもう一人の主人公。
そして、タイトルにもなっている「覇王別姫」。


「覇王別姫」は四面楚歌で有名な
項羽と虞姫の物語である。
四方から楚の歌が聞こえる中、虞姫は項羽のために
舞を一さし舞い、項羽の刀で自害し愛を貫く。
総て失った項羽も、後を追うように死を選ぶ。
悲劇、という言葉以外に何が言えるだろう。


この物語には勿論、希望も少なからずとある。
しかしその希望のほとんどは、いずれ打ち砕かれてしまう。
厳しい修行の中、相方になるもう一人の主人公を常に信じ、
京劇に命をかけて生きても、愛す彼は娼婦を妻にし、
共産主義の運動の中で、京劇の存在も民衆に身近だったものから、
贅沢な伝統芸能の保存のように姿を変えていく。


希望が費えたラストのシーンは、京劇の「覇王別姫」と
重ねて描かれている。演じている二人はもう若くない、
とわかっているにもかかわらず、美しい。


二人も「覇王別姫」の項羽と虞姫のように四面楚歌
なのだろう。それは愛を貫いたばかりに、我を貫いた
ばかりにそうなったに違いない。
ただ、この主人公二人が項羽と虞姫と違うのは、
死を選ばないというところだ。
二人はただ、過ぎ行く時代の渦に、ただ流されていくだけである。
その姿は本当に死を選ぶよりも、貫くものがなくなった以上
本質的な死に近いように感じる。


激動の中、民衆に親しまれてきた京劇の終わり、古き良き時代の終わり
そして二人の京劇俳優の終わり、様々な終わりの描かれた作品だと思う。

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紙の本いつかはきっと

2009/02/15 22:27

大人になっても・・・

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


この本は大人になってから、久しぶりに何か
新しい絵本を読みたい、と思い購入したものだった。

買った理由としては、絵本にしては比較的価格が安い、
ということと、小さい頃にアーノルド=ローベル氏の
絵が使われている絵本を、読んだことがあったから
ということだった。



1度目に読んだときは、文章があまりにも
簡単だったので「これは小さい頃に読んでおくべき
本であって、今読むにはあまりふさわしくなかったかな。」
と思ったが、それは誤解であった。

2度目読んだとき、小さい頃のことを思い出した。
おけいこごとで「あなたが一番すばらしい」と言われる。
欲しいと思っていたものが、突然届く。
いつもはいじわるなお兄ちゃんが、大人の女の人の
ように扱ってくれる。
お金持ちになって、みんなにプレゼントをあげる。


大なり小なり、統一性もないけれど、
小さい頃はいつも、そんな夢を見ていた。

この絵本には、そんな幸福で優しいものが詰まっていると感じた。



「いつかはきっと」は大人と子供、
それぞれ違った視点で楽しむことができる本である。

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紙の本小川未明童話集 改版

2007/11/05 16:31

大人も子供も

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書を手にするまで小川未明という作家は、
「名前は知っているけど作品は知らない」作家の一人だった。

表題作が「赤いろうそくと人魚」だったため、
少しダークな大人の童話を書く作家なのかと思っていたら、
良い意味で予想を裏切られた。

25編の短編が収録されているが、ジャンルは現代物、
ファンタジー、寓話的なものなどとバラエティに富んでいる。
しかし、そこには予想していたダークさはなく、
むしろ暖かさや輝かしさを感じるものがほとんどである。
バッドエンドのものでさえ、悲惨すぎるという結末には
なっておらず、そこには小川未明自身の優しさが伝わってくる。

どの作品も短いものばかりだか、読むたびに何かを
考えさせられる内容だ。
また文章も美しく、日本人でよかった! とさえ思ってしまった。

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紙の本水晶 石さまざま 他三篇

2010/01/08 15:26

きらめく世界

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何年か前、ファッション雑誌か何かでこの本のことを知った。
水晶というタイトルに引かれ、思わず手に取ってしまった1冊である。

ストーリーはほぼ皆無に等しいか、もしくは「だからどうした?」
というようなものである。他人の日記を読んでいるような感覚を覚える。


星5つをつけたことには理由がある。
情景描写である。
情景描写は今まで読んでいた他の作品とは、
比べ物にならないくらい美しかったのだ。


「水晶」は幼い兄と妹が祖父母の家から帰る途中に、
深い雪のために、途中の山に迷い込む、という話である。
ただ二人が雪振る山の中を、歩いて行くだけなのである。

しかしシュティフターの手にかかると、
そんな何の変哲も無い情景が一遍してしまう。
あたり一面真っ白な雪景色は、魔法のようにきらめき出す。
雪が降っている、そしてそこを2人の子供が歩いているだけ、
という世界に吸い込まれそうになるのだ。

またこの二人はさらに山奥に進み、氷の洞窟を見ることになる。
タイトルの「水晶」。まさにそれである。
薄青と、白の静かな世界。
吸い込まれて、ついには意識が遠のくような気分さえ感じる。



雪の情景描写のみ優れているように述べてしまったが、
植物の緑、何も無い岩山の灰色、水の無色など
その他自然物の描写が、お世辞抜きで優れている。


そこで一つ問題があるとすれば、情景描写が巧みすぎて
この時期に「水晶」を読むと、寒々しさを感じるところだろうか。

夏の暑い日に読みたい1冊である。

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紙の本ふしぎな夢

2008/05/20 21:44

ショートショートだけじゃない。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

星新一といえば、ショートショートで有名だ。
私自身も星作品との出会いは、小学校6年生の頃に
読んだ、ショートショートだった。


本書にもショートショートは勿論収録されている。
しかしショートショートよりも長い、「短編」と言った方
が良さそうなものも多い。

星作品のショートショートといえば「ブラックユーモア」や
「どんでん返し」といったイメージがあるが、「短編」は
そういったイメージが覆されるものばかりだった。
しかし、それは決して悪い意味ではない。

確かに驚くような展開は少ないかもしれない。
だがその分安心して読むことができ、
ブラックな話は少し怖くて苦手、という人も
読みやすい内容になっているだろう。



また本書の魅力は、その表紙の可愛らしさだろう。
(残念ながら、表紙が表示されていないが)
多くの星作品の新潮文庫の表紙は、いつ描かれたか
わからないくらい、古めかしい表紙のものが多い。
「それも味」という人もいるかもしれないが、
表紙は本を買うときに、背表紙の次に目が行く場所である。
読者が「読みたい」と思う装丁にするのも、大切なのでは
ないかと思わされた。

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紙の本太陽の塔

2007/12/03 00:24

確かに良い。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最近の作家で面白い作品を書く作家はいないか、という話
を友人としていたところ、森見登美彦を進められた。
「文章がお洒落で、言い回しが面白い」というのが
理由だった。


読んでみて「確かに」と思った。
内容も言い意味で馬鹿馬鹿しく面白かったが、それ以前に
文章が面白い。気に入らない男の心の器は子猫のミルク皿
程度だし、風呂場は昭和基地並みに寒く、ゴキブリキューブ
には麻薬的な魅力があり、太陽の塔の異次元宇宙の気配に振るえ、
クリスマスファシズムと戦い、世界は残酷な神が支配して
いる(これの元ネタは萩尾望都の作品だろうか)。

面白くないわけがない。
主人公たちは多少変なところがあるとはいえ、いたって真面目だ。
しかし、こんな文章で書かれては笑わずにはいられない。
電車の中で読んでいたが、何度となく笑わされてしまった。

小説は内容も重要だが、文面はその内容をしるためのもの
なので、さらに重要なのだと改めて感じさせられた。
久しぶりに1冊読んで他の作品も読みたい、という作家に出会えた。

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紙の本江戸の性談 男たちの秘密

2008/04/14 00:13

タイトルはあまり気にせず手にとってみよう・・・

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙を見ただけでは、一瞬買うのをためらう
人もいるかもしれない。
タイトルがまさに「性談」だし、表紙のイラストも
直接的ではないものの、そういったイメージを
彷彿させるイラストだからだ。


本書はその名の通り江戸時代の男性の、性について
書かれてある。
知られていないものも多く、割とよく知られて
いると思っていた「男色」や「遊女」のことでさえ、
意外な事実を知ることができた。

特に「遊女」は時代劇などでは「哀れ」、「可愛そう」
などといった風に描かれているが、実際の遊女は
もっとエネルギッシュで、計算高いようであることが
書かれている。自分の店だけではなく、近所の普通の宿
にまで押しかけて、男を誘惑し、断られても無理やり
布団に体をねじり込むその姿は、図々しいと言うよりも
かえって清々しく、笑いをそそられてしまった。
しかし迫られる男性にとっては、たまったものでは
なかっただろう。


これとは反対に「男色」の方では、若い侍の恋人同士が
最後には心中してしまうという、物悲しくも美しい物語
の紹介と解説が載っている。


その他にも興味深い話が、惜しげもなく詰め込まれている本書。
最後まで読むと「江戸時代はこうだったのか。」と思う反面
「いつの時代も変わらないな。」とも思ってしまう。
いつの時代だって、男性の性生活は大変なのだ。

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