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モンゴルについての深い造詣。
2020/11/29 13:00
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直モンゴルについては殆ど知らず、しいて言うなら元寇くらいでした。また、イメージについても本書のあちこちで述べられている通り騎馬民族の獰猛振りにしか感じ得ていませんでした。それが、ボロボロと剥離していきました。
本書を通して一番良かったのは、著者の肩入れがなく、出来る限り文献と史実に照らして本書が著述されている点です。クビライの経済政策の素晴らしさは瞠目すべき最大点です。本書を読む迄この様な治世は知りませんでした。本書から学ぶ事が出来て良かったです。
3%の税のみで、後は基本的には自由通商という内容は当時として画期的だったでしょうし、血を流す侵略よりも無血での攻略を進めた点は意外であり、且つ凄さを感じました。侵略を主眼に置いたというよりは、大経済大国の設立を確立したクビライは先進的人物であり、高い評価を得て良いと思います。ただ時代がそれに追い付いていない感が致命傷でした。
多民族であっても良し、その地方の文化を奪略せずにそのままとし、交易を活発化し、人民を傷つけない、など凡そ縛り付けと逆のやり方で、世の発展に寄与した優れた手腕が現代に発揮されていれば・・、と考えてしまいます。
元寇についても少し触れられてありました。非常に興味深かったです。もっとこの部分を知りたい次第です。
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クビライの挑戦
2022/04/19 19:28
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
単なる中国の一王朝としてだけではなく、他のユーラシア地域との関わりも含めて論じている。元は中国において歴史を書き記している儒者たちによって否定的に扱われつつ、後に明に引き継がれた政策が多かったことも知れてよかった。
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モンゴル帝国のことがよく分かる良書です。
2017/09/06 09:07
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、13世紀初頭に突如築かれたンゴル大帝国について詳細に解説した歴史書です。チンギスハンの孫であるクビライハンの世界帝国の構想を探り出し、我が国で一般的に呼ばれている「元寇」や「タタルのくびき」などといったイメージを一掃する発想の大転換をもたらしてくれる良書となっています。
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通商を中心にした近代国家の成立
2015/10/25 10:04
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投稿者:okadata - この投稿者のレビュー一覧を見る
1説によると4000万人を殺したというチンギス・カンや元寇からモンゴル帝国・元は「文明の破壊者」という野蛮なイメージがある。最も悪者イメージを持つのは中国史においてだ。科挙の廃止なども文化の破壊として取り上げられている。しかし、どうやらこのイメージは多くが清の時代に作られた様なのである。満州族の清は漢人から夷狄と呼ばれるのを嫌がり少しの批判でも処刑した。その鬱憤が元の悪口に向かったと言うのだ。
1260年チンギスの孫の時代、第四代モンゴル帝国皇帝モンケの弟フレグがシリアに侵攻中にモンケの崩御の報せが届いた。兄クビライの即位を聞いたフレグはイランにフレグ・ウルス(国)を立ち上げた。アフガンあたりにはチャガタイ・ウルス、中央アジアからロシアにかけてのジョチ・ウルスそしてモンゴルから華北に広がり南宋を滅ぼすクビライの大元・ウルスと書くとモンゴル帝国が分裂した様に見えるが元々遊牧民族は緩やかな連合国家のようなものでクビライは大元・ウルスのカンでありモンゴル帝国のカアンとなったのだ。
クビライについては37才で表に出るまで目立った記録が残っていない。しかし帝国を代表する姻戚集団と譜代集団の長が義兄にあたりこの集団を代表する形で力を持ったらしい。クビライは科挙を廃止する代わりに実力主義でアラブ商人や江南の水軍、中華の官僚制度と何でもとりあげ世界貿易システムを作り上げた異才である。モンゴル騎馬軍団の武力、直轄する当時最も豊かな中華特に江南の経済力、そしてその富を循環させるムスリムの商業力がその力の源泉である。
大都(北京)を首都にしたのも明らかな理由がある。中央アジアと中華の接点だけであれば北京と言う場所はあまりにも辺境によりすぎている。しかし西安になく北京にあるものが水運だ。また当時世界最大の都市だった杭州を結ぶ京杭大運河を復活させたのもクビライだ。クビライの構想では海上の通商網が重視されているだから北京が首都になったのだ。同時に陸上交通網も整備され中央アジアの全ての道と駅伝網は夏の都、上都につながっている。
戦争の手段もなかなか独創的である。華北の地は北宋の時代に金と南宋の時代にすっかり荒れ果てており騎馬軍団が長期に軍をおける場所ではなくなっていた。さらには黄河、淮河、長江が横たわりこれを越えるのも大きな問題である。華北地域の荒廃が万里の長城以上の大きな壁になっていた。クビライは黄河沿いの開封を根拠地として漢水上流の襄陽を包囲、しかしまともに城攻めはせずやっているのは土塁を築いて少数を残し、籠城側が攻めて来たら飛び道具で追い払うという黒田勘兵衛の様な戦だ。
元寇自体が南宋攻略の一環であり、実際に主力となったのは江南の水軍である。当時人類史上最大の外洋大艦隊でありもし元寇が成功していたらと想像してみるとおそらく日本の自治は大元の統治の元で守られていただろう。役立たずと見られた制度は廃止されたかも知れないが博多が大元や世界との貿易港として栄えイスラム商人もやってきていたことだろう。
クビライの政策が受け継がれていればモンゴル帝国による大航海時代が生まれており、日本の姿も大きく変わっていたに違いない。モンゴルを追い出した明は紫禁城を造り北京を引き継いだが、鄭和の大艦隊は長続きせず北京を攻められた影響もあり万里の長城にエネルギーを注いだ。そしてモンゴルが活用したイスラムの海商ルートはルネサンスを経たヨーロッパが跡を継ぐことになった。
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ヲーラーステインをもくさす
2021/12/14 01:01
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
中央ユーラシア史を専攻する著者が、
モンゴル視点で元の時代を描写した
本です。
クビライの事績が現代迄の中国史に
及ぼした影響がよく分かります。
ところで、著者の本を読むにあたっては、
釣り合いをとる為に、岡田英弘氏の本も
併読しておきたいところです。
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モンゴル帝国にして元朝の皇帝クビライの人物、あるいはモンゴル帝国の研究書。従来のモンゴル帝国にたいする再評価を迫る作品である。NHK『文明の道』第5週でモンゴル帝国が海上交通や駅伝網を重視し、緻密な行政システムを作り上げていた研究成果を示した。これに関する詳細な文献を探していたところ本書にたどりついた。モンゴル帝国に関してはヨーロッパからの評価を引き継ぐ形で今まで語られることが多く、野蛮な遊牧民族の側面、軍事的な側面ばかりに注目されてきた。しかし実際は「通商王国」ともいうべき交通の発展をもたらし、東西文化の結節の役割を果たし、「大航海時代」を準備したと結論付ける。著者の主張は明快でダイナミックに富む。今後もモンゴル帝国の国際性、行政システムに関する分析が待たれるところである。中学・高校日本史の授業においてもテーマ授業として取り扱いやすく、従来の歴史観を相対化させる題材として良いと思った。
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啓蒙書のためか第一部「あらたな世界史像をもとめて」など頼りないほど粗っぽいが、これをこう書くためにはそれこそ目の潰れるほどの研鑽の蓄積があるのだろう。
数年前に「チンギス・ハーン」に関する本を小説を含めて十数冊読んだが、それと相俟って面白かった。
中国は「元」の時代を自国の歴代王朝の一つに組み入れているが、杉山は「大元ウルス」は中国を占領したモンゴル政権だという。
全体として「南宋」「明」に対する筆が厳しい。
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ブログに感想書きました→http://d.hatena.ne.jp/victoria007/20130124/1359021936
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元々史書の習慣がない遊牧民のため「元朝秘史」など限られた文献しか残されていないモンゴル帝国。ゆえに破壊者の歪んだイメージが先行しがちだが、彼らの功績にスポットを当てる。
いまの世界史の起源は東西を結び付けたモンゴルだと思うし、通商により世界を活性化させたのはチンギスでありクビライであろう。殺戮者という一方の見方の裏側を、被支配国からの視点で分析したのは面白い。
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クビライは、各王族が自立的な動きを見せながらも大カァンを中心とするシステムをユーラシア大陸に築きあげた。元を中国史の王朝交代の文脈でみるとスケールを誤るのは分かった。
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歴史の教科書では学べなかった、歴史上世界最大のモンゴル帝国でなされていたことがわかる本。どこまでが事実かわからないものの、かなり現代化されたシステムが1300年代にあったかもしれないことがわかる。
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著者らしく、既存概念へのアンチテーゼを強調しているのか、モンゴルへの称揚と伝統中華やヨーロッパへの批難が激しい。特に明朝に対しては手厳しい。残虐なモンゴルへのイメージ脱却のため、世界帝国形成の間の戦況を説明し、モンゴル征服後も人口の大幅な減少が起こっていないこと、都市の繁栄は続いていることを強調する。モンゴルの快進撃は、イスラーム帝国が急激な膨張をしたように、改宗を迫らなかったこと、降伏させて経済的に取り込むことを優先したことが挙げられる。
クビライが大元大蒙古帝国として志向したのは、経済統合による世界システムだった。ムスリム商人を取り込んでの自由経済の奨励と、そこからの商税、そして大半を占めるのが塩の専売から上がる富が中央政府の財源であり、その富を各地の王室へ銀として賜与して政治的に繋ぎ止め、各王室は賜与銀をムスリム商人へ投資し、商税として回収する。そうした経済的な点と点の支配がクビライ構想の支配体制だった。
モンゴル帝国が崩壊した理由を、世界的な寒冷化天災を一因ともしつつ、クビライのシステム構想が早すぎ技術的条件が整っていなかったためとしている。私見では、時代的な早さもだが、勢力拡大時に極力現地文化制度をそのままにしたため、強固なシステムを構築・根付かせることができなかった速さが大きな要因だと思う。
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いつも書いている事だが、やっぱり歴史の面白さがわからない…
書いてある事実の理解はある程度できるが、それのどの部分に面白さを見出すのかがわからない。
今とても流行っているcoten radioも聞いていたが、やはり歴史の面白さをあまり感じられない私は何かおかしいのだろうか…
おかしいと言うよりも頭が悪いのだと思う。
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ジャンル:グローバル リベラルアーツ
出版社:講談社
定価:1,122円(税込)
出版日:2010年08月10日
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杉山正明(すぎやま まさあき)
1952年、静岡県生まれ
京都大学大学院文学研究科教授を経て、京都大学名誉教授、2020年没
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flier要約
https://www.flierinc.com/summary/2994
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222
[通商帝国・大モンゴルが世界史の流れを変えた。本当に「野蛮な破壊者」だったのか? 西欧中心・中華中心の歴史観を覆す。13世紀初頭に忽然と現れた遊牧国家モンゴルは、ユーラシアの東西をたちまち統合し、世界史に画期をもたらした。チンギス・カンの孫、クビライが構想した世界国家と経済のシステムとは。「元寇」や「タタルのくびき」など「野蛮な破壊者」というイメージを覆し、西欧中心・中華中心の歴史観を超える新たな世界史像を描く。サントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫)]
「著者は、京都大学でモンゴル研究に取り組み、従来の定説を次々とくつがえす刺激的な議論を展開する気鋭の学者です。世界史の教科書に必ず載っている事項について、オゴタイ・ハンは存在しなかった、マルコ・ポーロは実在したか疑わしい、等新説を発表している。ー思い込みと伝説に彩られたモンゴル帝国の歴史を、新しい視点でズバズバと斬っていく杉山説は、読んでいるだけで楽しく、次から次へと新しい発見があります。みなさんもぜひそんな快感を味わってみてください。杉山さんの他の本もおすすめの力作。」(『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)
第一部 あらたな世界史像をもとめて
1 モンゴルとその時代
モンゴルの出現/目に見えるユーラシア世界/モンゴル時代のイメージ
2 モンゴルは中国文明の破壊者か
奇妙な読みかえ/杭州入城の実態/政治ぬきの繁栄
3 中央アジア・イランは破壊されたか
チンギス・カンの西征と「破壊」/中央アジアでの「大虐殺」/中央アジアは駄目になっていない
4 ロシアの不幸は本当か
「タタルのくびき」/アレクサンドル・ネフスキーの評価/ロシア帝国への道
5 元代中国は悲惨だったか
抑圧・搾取・人種差別はあったか/科挙と能力主義のはざま/元曲が語るもの
6 非難と称賛
文明という名の偏見/極端な美化という反動
7 世界史とモンゴル時代
ふたしかなシステム論/世界史への視角
第二部 世界史の大転回
1 世界史を変えた年
アイン・ジャールートの戦い/戦いのあと/ふたつのモンゴル・ウルスの対立/モンケの急死
2 クビライ幕府
クビライの課題/混沌たる東方/なぜ金蓮川なのか/あるイメージ
3 クビライとブレインたち
モンゴル左翼集団/謎のクビライ像/政策集団と実務スタッフ/対中国戦略
4 奪権のプロセス
鄂州の役/クビライの乱/世界史の大転回
第三部 クビライの軍事・通商帝国
1 大建設の時代
なにを国家理念の範とするか/第二の創業/「首都圏」の出現/大いなる都/海とつながれた都/運河と海運、そして陸運
2 システムとしての戦争
おどろくべき襄陽包囲作戦/南宋作戦のむつかしさ/戦争を管理する思想/モンゴル水軍の出現/新兵器マンジャニーク/驚異のドミノくずし現象/中国統合
3 海上帝国へ���飛躍
南宋の遺産/世界史上最初の航洋大艦隊/海洋と内陸の接合
4 重商主義と自由経済
クビライ政権の経営戦略/国家収入は商業利潤から/銀はめぐる/ユーラシアをつらぬく重量単位/紙幣は万能だったか/「高額紙幣」は塩引/ユーラシア世界通商圏
5 なぜ未完におわったか
モンゴル・システム/早すぎた時代/記憶としてのシステム/ふりかえるべき時
あとがき
学術文庫版あとがき