電子書籍
最悪の将軍
著者 朝井まかて
生類憐みの令によって「犬公方」の悪名が今に語り継がれる五代将軍・徳川綱吉。その真の人間像、将軍夫妻の覚悟と煩悶に迫る。民を「政の本」とし、泰平の世を実現せんと改革を断行。...
最悪の将軍
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最悪の将軍 (集英社文庫 歴史時代)
商品説明
生類憐みの令によって「犬公方」の悪名が今に語り継がれる五代将軍・徳川綱吉。その真の人間像、将軍夫妻の覚悟と煩悶に迫る。民を「政の本」とし、泰平の世を実現せんと改革を断行。抵抗勢力を一掃、生きとし生けるものの命を尊重せよと天下に号令するも、諸藩の紛争に赤穂浪士の討ち入り、大地震と困難が押し寄せ、そして富士山が噴火――。歴史上の人物を鮮烈に描いた、瞠目の歴史長編小説。
目次
- 一 将軍の弟/二 玉の輿/三 武装解除せよ/四 萬歳楽/五 生類を憐れむべし/六 扶桑の君主/七 犬公方/八 我に邪無し
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紙の本
意外な人物造形
2020/03/11 17:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
将軍綱吉と言えば「生類憐みの令」。人名よりもお犬様というトンでも将軍のイメージ。だから「最悪」の将軍か。もちろんこのような綱吉へのステレオタイプを覆す作品だと知って選んだ一冊でしたが、それでも予想外の綱吉像でした。ただ、その人物造形に強引さは感じられません。それどころか、文治政治を目指した、ストイックなまでの彼の言動に引き付けられました。気持ちよく読み終えることができた一冊でした。
改めて、現在の高校日本史の教科書を見ると、生類憐みの令に関しての記述が私が高校生のころとは変わっていました。
紙の本
快作
2020/01/23 01:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白い小説は一行目から面白い。
実在の人物をモデルにした小説は、
盛り上がるところまでの助走が長い傾向も強い気がするのだけれど、
この作品は一行目から面白い。
“犬公方”徳川綱吉。
第5代将軍。
ページにして300ページ強。
長くはないが、濃い物語です。
紙の本
本当はどうだったのだろうか
2019/12/18 16:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「歴史小説」とは主に歴史上に実在した人物を用いて、ほぼ史実に即した物語で出来ている。一方、「時代小説」は同じような歴史を描いてもそこには実在しない人物や出来事などで出来上がっている。
江戸幕府の第五代将軍徳川綱吉を描いた朝井まかてさんのこの長編小説の場合、徳川綱吉も実在の人物だし、その正室信子も側用人柳沢吉保も実在した。
また将軍になる経緯であったり、生類憐みの令の発令なども歴史上の事実である。
朝井さんが尊敬してやまない葉室麟さんの『花や散るらん』はほぼ同じ時代を描いていて、綱吉であったり吉保という人物も登場するが創作が多い。
この二つの作品で「歴史小説」と「時代小説」を比べるのも面白いかもしれない。
ただ「歴史小説」といっても、その当時の人々の心情までが正しいかというとそれはまた別の話で、綱吉と信子が果たしてどんな会話をしたのか、それは作者の想像力に委ねるのは仕方がない。
特にタイトルが示すように「最悪の将軍」であったかもしれない綱吉だが、朝井さんの筆はけっしてそうではない。
むしろ、民を思い、国を憂いた名将軍かと思わせられる書きっぷりだ。
同じ人物、同じ事件を描いても、書き手によってそれはいかにも変化する。だからこそ、「歴史小説」は面白いともいえる。
綱吉が亡くなったあとの最後の場面、吉保はこう信子に話す場面がある。
「政の目指すところとその果には、必ず齟齬が生じまする。(中略)それを判じるには時を要します」。
しかし、こうも言えないだろうか。
時が経ても不明かもしれない、と。
紙の本
定説を覆す人物造形
2020/10/17 11:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
犬公方として有名な徳川綱吉が新しい人物像で描かれている。
生類憐みの令も俗に言われる戌年だからとか、母親に勧められてとか、ではなく、人も動物も慈しんでこそ、世が静謐に保たれる、という考えのもと、仁政を敷く、文治政治の現れでもあったという。
将軍になった経緯から、将軍としてやりたいこと、などしっかり描かれ、理想と現実の乖離に悩む姿が十分に伝わってくる。
綱吉だけでなく、妻の信子の視点からも描かれ、夫婦で歩んでいく姿も好ましく感じられた。
紙の本
徳川綱吉の生涯がこの1冊に
2020/02/05 21:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
徳川綱吉といえば生類憐れみの令で人より犬を大切にしたというまさにこの本の題名のとおり最悪の将軍のイメージしかなかった。
でもこの本では、乱暴狼藉や切腹で命を落とす者が多くいる中、命の重さをこの世に取り戻すためにすべての命を大切にし、慈愛で満ちた世の中にという民を思う綱吉の思いが生類憐れみの令の背景にあったとされていて、衝撃を受けた。
将軍はたくさんの人に囲まれて生活しているが、信頼できる相談相手は少なく孤独に満ちている。2人の子どもを亡くした綱吉はなお孤独で、また民に真意が伝わらないもどかしさに眠れない日々もあっただろう。
大地震や富士山噴火、赤穂浪士の討ち入りなど様々な出来事に翻弄されながらも自ら決断し、民を導いた姿に徳川綱吉の印象は全く違うものとなった。
死ぬ間際まで民のことを思い、「我に、邪無し」と言い切った綱吉は最悪の将軍などではなかった。
時をこえて将軍綱吉の思いが現代を生きる私達に届けられたような感覚になる1冊だった。
紙の本
最悪の将軍
2022/03/29 07:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者浅井まかて氏の小説は今回初めて拝読しました。
主人公は犬公方と言われた徳川五代将軍の綱吉である。
将軍に推挙された経緯や次期将軍の決定に関する心理状況も上手く織り込まれていました。
生類憐みの令や赤穂浪士討ち入り、大地震や富士山噴火など様々な困難な状況に立ち向かう綱吉が描かれていました。
紙の本
歴史の再評価
2021/09/27 11:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
徳川綱吉に対してよく迫っていると思う。歴史上の人物は様々な角度から検証されるのがその事績について公正な評価につながると思う。
その意味ではとても良い作品だった。特に綱吉が当初は全く将軍にはなれないしなる気もないというところは面白かったし、いきなり将軍継嗣に決まったところは迫力があった。