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なぜか橘さんがよく登場
2018/12/06 07:09
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『陰陽師 第13巻 酔月ノ巻』もいつも通りの短編集です。収録作品は、「銅酒(あかがねのさけ)を飲む女」、「桜闇、女の首」、「首大臣」、「堂満、酒を馳走されて死人と添い寝する語」、「めなし」、「新山月記」、「牛怪」、「望月の五位」、「夜叉婆あ」の9編。
「銅酒(あかがねのさけ)を飲む女」は、橘盛季(もりすえ)が正体不明の「おひいさま」のところへ通い、危うく取り殺されそうになる話。
「桜闇、女の首」は、橘透子が「桃実(とうじつ)」と呼ばれる散らずの桜の下で琴を弾くうちに消えてしまう話。
「首大臣」では藤原兼家の生きている首が安倍晴明のところに運ばれてきて、体を取り戻してほしいと頼みにくる話。
「堂満、酒を馳走されて死人と添い寝する語」はタイトルの通り。
「めなし」は、糺の森で賢木参りをしていた橘為次が奇妙な女に両目を取られてしまう話。
「新山月記」は、白楽天の詩を唱えながら人を食らう虎(?)の話。出典『唐代伝奇集2』、張読「虎と親友」。
「牛怪」は、機織りの上手な幡音(はたね)とお付きの老女が牛を連れて検非違使の橘貞則の家へ身を寄せ、夜な夜な牛の持ち主を探しに行く話。実は牛宿の織女星と牽牛星のお話でした。
「望月の五位」は、東三条殿の南の築山に夜ごと丈三尺ばかりの五位の装束を着た太った男が李白の詩「月下独酌」を吟じながら徘徊する話。
「夜叉婆あ」は、狩りを生業とする兄弟が母親に喰われそうになる話。
この巻はなぜか橘さんがよく登場してますね。
紙の本
一日で呼んでしまいました
2015/11/08 10:42
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投稿者:玄米ごはん - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章がやわらかくとても読みやすい一冊でした。
作者の円熟した人間観察があり、それが文章に反映されていて
人間の優しさが伝わってきました。
紙の本
相変わらず楽しめる平安時代の大人の童話
2015/03/08 21:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢枕獏の陰陽師の酔月ノ巻であるが、この物語には終わりがなさそうである。いつまでも続くようだ。大人の童話のようなもので気楽に読める点が気に入っている。また、陰陽師のオカルト的な点は不要なのだが、平安時代という時代設定が最もよい。平安時代といえば、今から千年近くも昔である。
そこでの人の会話は、安倍晴明と源博雅のような現代的なやりとりがなされていたのだろうか。そうはいっても、その記録が残っている訳もなく、そうしないことには話が始まらないのも確かである。
平安時代の京での出来事であるし、安倍晴明、そして源博雅といえば、当然当時の政治に関わる重要人物が登場してくる道理である。今回も藤原兼家がよく登場する。兼家は関白を務める要人ですが、これまでもよく清明に相談事を持ちかけてきましたが、本巻でもありました。
いつもながら話は、雪が降っているにもかかわらず、縁側で酒を酌み交わしながら庭の風景を愛でる晴明と博雅の二人の会話から始まる。また、敵か味方か分からない存在の蘆屋道満もよく顔を出す。怪しげな現象のほとんどはこの道満が原因を作っているようだ。そして、その解決は清明に委ねられる。それを道満も心得ているし、晴明も覚悟しているようだ。
本巻では、山月記にヒントを得た『新山月記』が9つのエピソードの一つに含まれている。そして今回は詩もよく登場する。白楽天の詩が引用されてもいる。詩にはあまり興味が向かないので、エピソード全体に加えられた味付けの意味が分からず、大変残念である。
酔月ノ巻というので、縁側での二人の会話も、エピソードも多少酒に酔ったものかといえば、ほんの僅かにその香りがする程度であった。次回作を楽しみにしたい。
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【大人気シリーズ、澄みわたる筆が都の怪異を活写!】 可愛い故に我が子を食べようとする母、己れの詩才を恃むあまり虎になった男。都の怪異を鎮めるべく、今宵も安倍晴明と源博雅がゆく。
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あとがきによると、作者の獏さんがこのシリーズを書いてから二十五年になるそうです(単行本の刊行当時と推察されます)。
晴明の屋敷の縁側で、簀子の上に座して、晴明と博雅がゆっくりと酒を呑んでいる。ロマンチストの博雅が季節の移ろいや何かを語り、晴明が呪の話に結びつけようとするのを博雅が押しとどめる。
やがて屋敷に人が訪ねてきて怪異を語り、二人が腰を上げてその謎解きに出かける。
この黄金パターンに飽きることなく魅了され続けております。
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感想はブログでどうぞ
http://takotakora.at.webry.info/201501/article_5.html
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「夜叉婆」がダントツに心に残った。
この巻は比較的蘆屋道満が多め。
ある種パターン化している陰陽師がいまだにある程度受けているのは、キャラクターの書き方の妙だろう。
晴明はある程度パブリックイメージで怪しくひとをくったような怜悧な美青年として書かれ、相方はその反対に陽を求められる。
しかし、博雅の「陽」をとことんまでつきつめ、笛の名手であやかしにも愛される才能の持ちぬしにすることで、晴明に負けない魅力をもたせている。(これを理解しない監督が映画化で大失敗していたが)
この蘆屋道満も今まで何度となく、不気味な敵として扱われてきたが夢枕獏の陰陽師では晴明とよく似た人物として書かれている。
風体や立場は違うが、権力などに興味はなく有り余る力を退屈しのぎに使う。
ひとを外から見ているような言動が多いが、人が嫌いなわけではない。
決定的な違いは博雅がいるかどうかということだけだ。
今回の蘆屋道満主人公の『夜叉婆』はそれがよく出ていたと思う。
昔話の母親が鬼にすり替わっており命を狙われる兄弟もののモチーフだ。
偶然出会った道満はあってもいない彼らの母親を「可愛い」と評する。
愛おしいわが子を死ぬまで見守りたい母親の妄執も、彼にとってはあさましいからこそいじらしく映る。
哀れですらない、最強の呪術師のひとりである彼には「かわゆく」しか思えないのだ。
喰うことで子供を取り込めるわけがないことをよく知っているから、そんなこともわからない愚かしさはたんなるかわゆさに過ぎない。
彼がとった行動も、攻撃的なものではなく、誰も傷つけない優しいやりかただ。
だが、このエピソードを晴明でやると無理が生じる。
かわゆい、と表現するには晴明には人世界への縛りがあるような気がするからだ。
もちろん、その縛りは博雅なのだが。
それがいいわけでも悪いわけでもない。
そして、晴明ではできない陰陽師の表現を賀茂保徳(今回は登場なし)や蘆屋道満で行うことで小説の世界を広げている。
だからタイトルが「晴明」ではなく「陰陽師」なのは偶然の結果なのだろうが上手にはまっていると思う。
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巻末のあとがきには、書き出すそのおりおりの季節のことから筆を起こす、おおよそ25年書き継いでいるとある。
清明と博雅の世界は、もはや、美しい絵巻物のよう。
灯明の火を愛でるように、ただ、愛でるのがいい。
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暗い夜は暗く、明るい朝は明るく、寒い冬には雪が降り、春には桜が芽吹き、夏になれば草が茂る・・・。そんなことを肌に感じながら、この世のものではないモノ達と折り合いをつけながら、生きていく。
体が首から離れたり、彦星さまが浮気をしたり、その中を晴明はするすると流れて行き、時々博雅の素直な言葉に助けられている。
この話はずっとどこまでもどこまでも続いて欲しい・・・と、思っていたら、あとがきで作者が仕事の整理をしているような話が・・・。この話は続けてもらえるようですが・・・。
いつまでも、晴明と博雅はこの館で酒を酌み交わして居てほしいです。
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季節がうつろうう美しい晴明の屋敷の庭
その庭を眺めながら酒を酌み交わす晴明と雅博
そこに、晴明への頼み事が持ち込まれ、その解決のため
「ゆこう」「ゆこう」と二人連れだって出かける。
その形式で変わらぬ雰囲気を感じさせながら、
妖という形を持つにいたった、人の妄執が描かれる。
それにしても、人の妄執は尽きないねぇ。
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漫画版は妙な方向へ行ってしまったが、原作のこちらは晴明と博雅を巡る世界が楽しめる。男女の悲しい業を描きながらも飄々としていて、いやな後味は残らない。
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晴明と博雅が庭の風景を肴に呑んでいるところに客人が…といういつもの感じ。
ただ、今回は道満が色々と出てきてたので、今後は彼に軸足を移す布石かな、とも
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久しぶりに陰陽師を読んだ。いつまでも変わらぬ安倍晴明と源博雅。恐ろしきことにも、いつでも風流な形で話は進む。書いて25年。変わったけど、変わらないこの物語はステキである。
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ワンパターンなんですけど、イヤではないので読んでいます。なんとなく読むと心が落ち着く気がします。
読み続けているのは、TVで毎週水戸黄門を観る感じに似ているかもしれません。
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高校の時に図書館で手に取ってから今日まで、ずっと読み続けてるシリーズ。
今回もおなじみ「ゆくか」、「む。。。」、「ゆこう」、「ゆこう」のくだりで色々な体験をする晴明と博雅。
この巻では、「新山月記」、「牛怪」、「望月の五位」の3話が気に入った。
短編で文字数もそこまで多くないし読みやすいので、オススメ!