ブックキュレーターHONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞
ものをつくる人々
さまざまな才能をもち、ものをつくる人々。彼らはどんなこだわりをもち、製作の背景にはどんなドラマがあるのか。それぞれの分野の深淵な世界にも夢中になれる本を紹介する。
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京職人ブルース
米原 有二(文) , 堀 道広(絵)
塗師や蒔絵師、指物師、友禅職人など、京都の伝統工芸を支えてきた職人たちの飾らない姿を切り取る一冊。よくある職人本かと思えば、ひと味違う。著者はその道の職人を目の前にして、なかなか口に出せない素朴な質問を臆することなく発する。それが実に含蓄のある言葉を職人たちから引き出してくれるのである。職人の手仕事に対する敬意と愛情は疑いようがない。
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測って描く旅
浦 一也(著)
インテリアプランナーの著者による、測って図って描きまくった旅を綴る一冊だ。世界各国のさまざまなホテルの客室の間取り図には、ソファやベッドの寸法、ときには角度や展開図などが細かく書き込まれ、美しい部屋のスケッチも添えられている。また、メジャーの使い方や法定寸法と最少寸法といった実践的なノウハウや、人間身体の部位や所作に適切なスケールである「ヒューマンスケールの世界」といった理論も展開。手で考える、手のスキルを落とさないことは、読者にも一脈通じる話だ。
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ニューヨークのヴァイオリン職人 現代の名器をつくる
ジョン・マーケーゼイ(著) , 中島 伸子(訳)
世界最高のヴァイオリンを生み出したアントニオ・ストラディヴァリを超えようとする、ひとりのヴァイオリン職人にまつわる物語である。ヴァイオリン製作に興味をいだいた著者がたまたま訪ねた工房は、現代最高の職人 サム・ジグムントーヴィチであった。そして彼の製作プロセスに密着する。注文者は超一流のヴァイオリニスト。彼の要求に、超一流の職人はどんな答えを提示するのか。読み終える頃には、ヴァイオリンのもつ深淵な音色の世界に夢中になっているだろう。
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パリ左岸のピアノ工房
T.E.カーハート(著) , 村松 潔(訳)
パリの左岸に住まうアメリカ人の著者は、裏通りにひっそり佇むピアノ修理屋とおぼしき店を見つける。なかなか入ることができなかったが、晴れて足を踏み入れた店のアトリエには、18世紀から今に至るまでの、ありとあらゆるメーカーのピアノがあったのだ。それはすべて売り物で、著者は一台の中古の小型グランド・ピアノと出会い、その物語を知ることになる。まるでおとぎ話のようなパリの裏通りの温かな人間模様、職人の手仕事、ピアノの深淵な世界をしっとり読ませてくれる一冊である。
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ランドセル俳人の五・七・五 いじめられ行きたし行けぬ春の雨 11歳、不登校の少年。生きる希望は俳句を詠むこと。
小林 凛(著)
本書は俳句集であり、文芸書だ。しかし、いじめを受け、不登校になった子どもをもつ家族の手記でもある。著者の凛くんは12歳の小学生。超低出生体重児で生まれ、小学生になると小さくて力が弱く視知覚にもハンデもある凛くんは同級生にいじめられる。激しい暴行が続くが、担任も教頭も見て見ぬふり。自らの命を守るために不登校になるしかなかった凛くんだが、文才という才能を授かっていた。家で安らぎの時間を過ごす間に、たくさんの俳句を読む。朝日俳壇で何度も入選するほどの、素晴らしい才能だ。
ブックキュレーター
HONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『2040年の未来予測』(日経BP)など著書多数。
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