ブックキュレーターHONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞
美術館へ向かう電車の中で読む本
絵画の技法や、新たな鑑賞の視点を身につければ、絵を見る目線も変わってくるだろう。美術館に行く前に、そして向かう電車の中でも読みたい、見て楽しく、読んでためになる本を紹介する。
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西洋絵画独特の約束事が詳説されており、美術館めぐりには必携のサブテキストである。たとえば、純潔や権力の象徴であるアイテム”百合”を、ロセッティの「受胎告知」やリゴーの「ルイ14世の肖像画」などの図版を見ながら理解できるという構成になっている。鳩は平和(ヴィーナス)、壺はパンドラ、天秤は公平など、よく知られている象徴もあるが、蝶は魂、竜は悪と異教、鳩は聖霊などは、絵を見ながら説明を読むとよくわかる。こうした約束事を覚えておくと、今までただの風景画と思って見ていた絵がじつは強烈な風刺画であったり、明るい色彩なのにテーマ自体が異常に暗い理由がわかったりと、目だけでなく頭でも絵画を見られるようになる。美術館で新しい発見に出会えるだろう。
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色彩について理解していないと、どんなに素晴らしい名画を眺めていても、「きれいな色」としか言えない。それでは少し物足りないと思ったら、本書を手にとってみてほしい。著者は色彩学の研究者だ。本書は、絵の中から色彩を拾って説明しているため、見事なまでにわかりやすい。ターナーの赤はコチニール・レーキ、セガンティーニの輝きはカドミュウム・イエローといったことが一目瞭然だ。使われている色は何色なのか、なぜその色がそう見えるのか。本書を一読すれば、画家がどのような意図でその色を使ったのかがわかる。
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風景画をテーマにした技法解説書である。サブタイトルにあるように、20のメソッドを構図、形、色の3章に分けて説明する。たとえば、構図の章では「中心型」「囲む型」「散開型」など6つのメソッドを設定し、ブリューゲル、セザンヌ、北斎、デュフィなど多数の名画を取り上げながら解説する。囲む型では樹木で囲む、湖湾で囲む、門で囲む、小径で囲むなど、巨匠たちがどんな意図でそうした構図を使っているかよくわかる。絵を描く人だけでなく、絵を見る人も楽しめるテクニック解説書である。
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ブックキュレーター
HONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『2040年の未来予測』(日経BP)など著書多数。
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