行く前に読んでおきたい。情緒あふれる金沢を舞台にした文学

金沢を舞台にした四つの短編が収録されています。どの話も金沢の街並みや雰囲気を感じられる小説ですが、特に冒頭の「金沢あかり坂」は茶屋町の描写が非常に細かく表現されています。金沢の伝統行事や芸能などについて幅広く知ることができる一冊です。

金沢出身の作家、泉鏡花の小説です。水芸太夫の滝の白糸と法律家を目指す青年の悲恋が、古風な文体で描かれています。金沢には滝の白糸の像や2人が出会った梅の橋などがあります。読んでから訪れれば、恋に生きた滝の白糸の面影を探しながら散策を楽しむことができるでしょう。

徳田秋声が、兄の見舞いのために金沢へ帰郷した際の経験をもとに書いた私小説です。金沢のひがし茶屋町や、女川とも呼ばれ金沢の代表的な川である浅野川周辺の雰囲気が、芸者たちとの交流を通して描かれています。廓として栄えたころの茶屋町をより感じることができる一冊です。

金沢を代表する文豪の1人である、室生犀星の自伝的青春小説です。友人や女性に対して複雑な感情をめぐらせる少年の姿が、茶の湯や寺といった金沢らしい文化的でしっとりとした雰囲気のなかで語られています。現在でも物語に登場する賽銭箱や犀星ゆかりの品が展示されている、雨宝院が舞台となっています。

詩人・中原中也が金沢再訪をきっかけに、幼少期の思い出を綴った文章です。短い文章ですが犀川や松月寺、兼六園などの名所が登場します。跡地として現在も残されている場所もあるので、中也の思い出の場所をめぐって子どもの頃の中也を想像できる楽しみもできます。