ブックキュレーター文筆家 吉川浩満
閉じ込められること、その恐怖との闘い!
狭くて暗い場所に閉じ込められる・・・私には幼い頃からそうした状況への怖れが強迫観念のように取り憑いていました。それが人類共通の恐怖であるらしいことを知ったのは本を読むようになってから。身の毛もよだつホラーから大冒険小説まで、閉じ込められる恐怖を描いた、あるいはその恐怖と闘った先人たちの作品をご紹介します。
- 15
- お気に入り
- 5894
- 閲覧数
-
神々のワード・プロセッサ スケルトン・クルー 2
スティーヴン・キング(著) , 矢野 浩三郎(ほか訳)
本書に収められた短篇「ジョウント」は、閉じ込めの強迫観念を忘れかけていた高校生の私にその恐怖をありありと蘇らせたトラウマ小説です。近未来のワープ旅行で、好奇心旺盛なアメリカ人少年のちょっとした悪戯心が悲劇を呼び起こします。
-
虎よ、虎よ! 新装版
アルフレッド・ベスター(著) , 中田 耕治(訳)
その「ジョウント」の元ネタとなったのが、この作品に出てくるテレポーテーション。アメリカの作家アルフレッド・ベスターが、大デュマ『モンテ・クリスト伯』のような復讐譚を目指して書き上げた名作SFです。閉じ込められる恐怖とはあまり関係ありませんが。
-
ポオ小説全集 3
E.A.ポオ(著) , 田中 西二郎(ほか訳)
文学作品における閉じ込めというモチーフは、生きたまま埋葬されることへの恐怖にその原点があるかもしれません。ありとあらゆる恐怖を描いた天才作家エドガー・アラン・ポオは、本書に収録されたその名もズバリの「早まった埋葬」で、それを芸術作品に昇華しました。
-
ジョニーは戦場へ行った
ドルトン・トランボ(著) , 信太 英男(訳)
第一次世界大戦の戦場で、目(視覚)、鼻(嗅覚)、口(言葉)、耳(聴覚)を失い、さらには両手両足も切断されてしまった兵士ジョニーの悲しい物語は、いわば戦争が生んだ「早まった埋葬」でした。ハリウッドの赤狩りに抵抗した反骨の脚本家・映画監督ドルトン・トランボの反戦小説です。
-
意識は正常なのに四肢麻痺により意思表示ができなくなる「閉じ込め症候群」という難病には、モンテ・クリスト症候群なる別名があります。それはこの病状を描いた最初の小説が『モンテ・クリスト伯』だといわれているから。『虎よ、虎よ!』や「ジョウント」との偶然の符合が因縁のようにも感じられます。
ブックキュレーター
文筆家 吉川浩満1972年生まれ。文筆家。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、現職。著書に『理不尽な進化──遺伝子と運のあいだ』(朝日出版社)、『脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座』(山本貴光との共著、太田出版)、『問題がモンダイなのだ』(山本との共著、筑摩書房)ほか。関心は哲学/科学/芸術、犬猫鳥、デジタルガジェット、単車、映画、ロックなど。卓球愛好家。紙の本・電子書籍・ウェブ・自炊本、なんでも読む。また、路上・電車・寝床・トイレ、どこでも読む。そして、朝・昼・晩、いつでも読む。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です