ブックキュレータープレジデント社 編集者 中嶋愛
アメリカの最底辺白人層を描いた『ヒルビリー・エレジー』と併読して読みたい
トランプのコアな支持層である貧しい白人労働者層の現実を描いて話題の『ヒルビリー・エレジー』。失業や貧困がもたらす家庭の機能不全は「学習性無気力」の温床となり、コミュニティ全体を蝕んでいきます。貧困から格差の固定化を経て社会の分断へといたる負の連鎖はどうしたら止められるのか。根が深すぎる問題ですが、まずは知ることから。
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ニッケル・アンド・ダイムド アメリカ下流社会の現実
バーバラ・エーレンライク(著) , 曽田 和子(訳)
2001年にアメリカでミリオンセラーとなった本です。当時既に50歳を超えていた著者が、ウエイトレス、掃除婦、スーパーの店員などを装って潜入取材。時間、健康、安全だけでなく、尊厳、感情、希望をも奪われている底辺労働者の窮状。その後大統領がブッシュからオバマに変わっても事態は改善しませんでした。
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父はアルコール中毒、母は鬱病という家庭で、貧困と孤独のなかを生きていた少年が、ある女性に人生を変える「マジック」を教わります。それはいまでいうマインドフルネスでした。その後、彼の人生は劇的に変わりましたが、マインドフルネスが流行する背景にはこうした「それ以外に救いようがない」人たちの存在があります。
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1980年代以降、アメリカの製造業に従事していた白人労働者層の多くが中流から下流に転落していきました。著者もそうした白人底辺層から、軍隊を経て大学へ進み、名門大学院を卒業した後に弁護士になります。しかしこれを「アメリカンドリーム」とはとても呼べません。彼らは別の夢をトランプに託したのではないでしょうか。
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『ヒルビリー・エレジー』の著者も含め、トランプ支持者の中心は「かつて製造業で栄えた」地域の人々。本書は「製造業復活」というシナリオがだめな理由を挙げ、それにかわる地方再生の鍵はイノベーション産業だと説きます。地域間(都市間)の経済格差が拡大、固定化するメカニズムを雇用の観点から分析した先駆的な研究。
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ルポ貧困大国アメリカ
堤 未果(著)
日比谷公園に年越し派遣村が出来たのが2008年末。本書が書かれたのはその前年です。教育や医療、果ては戦争までも民営化した結果、中流層から一度こぼれおちると這い上がるすべがない「貧困大国」となったアメリカ。丁寧に取材して書かれていますが、今読むと新自由主義ですべて説明しすぎな気も。続編も出ています。
ブックキュレーター
プレジデント社 編集者 中嶋愛新聞記者、雑誌編集者を経て書籍編集者に。経済・ビジネスから実用まで主にノンフィクションジャンルの本を手がけている。2014年にビジネス大賞を受賞した『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著)、をはじめ、担当した本は『哲学用語図鑑』(田中正人著)、『年収は「住むところ」で決まる』(エンリコ・モレッティ著)、『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー著)、『諦める力』(為末大著)、『疲れない脳をつくる生活習慣』(石川善樹著)、『戦略読書日記』(楠木建著)、『チャーチル・ファクター』(ボリス・ジョンソン著)など70冊以上。スタンフォード大学大学院国際政策プログラム修了。
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