ブックキュレーター哲学読書室
運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
人間には自由意志があるのか?全ては神や環境によって決定されているのか?それは哲学や宗教のテーマでもありますが、近年のウェブ社会化や脳科学・神経科学・行動経済学などの発達によってあらためて身近な問いにもなってきました。『ジョジョ』の運命論を読み解くために役立つ著作を紹介します。【選者:杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-:批評家)】
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未知との遭遇 完全版
佐々木敦(著)
運命論の基礎を押さえつつ、それらをサブカルチャー領域における宿命論や平行世界的なモチーフの拡がりや、情報化やウェブ社会化などの現代的な問題へと結びつけていく。入門書としても最適。「唯一の現実世界」でも「多数の可能世界」でも「最善のこの世界」でもなく、「現実世界の複数性」をポジティヴに受け入れよう、という「最強の運命論」。
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後悔と自責の哲学
中島 義道(著)
自由の考え方のコペルニクス的転回。意志や選択の自由ではない。むしろ「あの時なぜ自分はああできなかったのか」という取り返しのつかない後悔こそが、そうでしかありえなかったという形で、この私の「自由」をあらわにする、と。運命論に頼って現実をごまかさず、誠実に後悔し続けよ。孤独な哲学者の凄みを感じる。
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多宇宙と輪廻転生 人間原理のパラドクス
三浦 俊彦(著)
『可能世界の哲学』において可能世界論をクリプキ型/ライプニッツ型/ルイス型に分けて明晰に論じた著者は、本書ではオカルトとも見紛う過激な場所へ行き着いた。論理的に考えれば、多宇宙も輪廻転生も存在する、と。本書の様々なノンヒューマンな結論(不幸な人生よりも転生後の次の人生に賭けよ等)は、多くの人を途惑わせつつ、思考の深みに誘うだろう。
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人はみな妄想する ジャック・ラカンと鑑別診断の思想
松本 卓也(著)
すでに精神の病や狂気は、生物学と薬理学と資本の論理によって基礎づけられ、非定型抗精神病薬と認知行動療法で治りうるものと見なされている。ならばそうした管理化と標準化の中で、君だけの特異的な妄想・狂気・自閉症のモードの中に、運命を超える「自由の限界」を見つめるとは。本書の問いは『ジョジョ』の運命論とも深く響きあう。
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ジョジョ論
杉田 俊介(著)
弱さや狂気や障害もまた運命なのかもしれない。しかし、内なる弱さ・狂気・障害こそが、その人の最大の才能や能力になりうるとしたら。資本主義の苛酷さを受け止めながら、強さと弱さ、正気と狂気、能力と無能力の境界線を超えていくこと。オルタナ自己啓発としての自立=スタンド。拙著ではそうした思想を『ジョジョ』から受け取ってみた。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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