ブックキュレーター哲学読書室
批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
「古典」に新たな息を吹き込むという意味で、ルネサンスの人であるドゥルーズを出発点に、古典やその(再)読解を行う著作を選びました。様々なる意匠から遠く離れて、マルクスやカントを、一言一句、丁寧に(かつ野蛮に)読み直すことは、今日でも依然として、きわめて重要だと思っています。【選者:堀千晶(ほり・ちあき:1981-:仏文学)】
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マゾヒズムを、サディズムから徹底的に切断したことで知られるマゾッホ論の古典であり、カント的な「批評(批判)」と倒錯の「臨床」を結合させた倒錯的実践理性の書。S/Mをめぐる議論が、特異な「暴力」論である点にも注目したい。文学や精神分析に関心のある人はもちろん、初めて読むドゥルーズとしてもお薦め。
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マルクス(主義)からドゥルーズ゠ガタリが継承したものを明確化したのをはじめ、DGの政治哲学をきわめて堅実かつ緻密に分析した力作。DG研究の必読書というにとどまらず、国家・戦争・資本主義という三重の暴力が渦を巻き、絡み合う現代世界を解き明かす。「生成変化」論を、革命組織論として読んでいるのも興味深い。
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ドゥルーズ゠ガタリが『資本論』において重視したのが、「本源的蓄積」の議論であった。すなわち、資本主義というものが、どれほど経済的な現象「ではないか」を論じた箇所である。マルクスは、ある経済体制を導入するための可能性の条件として、「暴力」の存在を指摘した。これ以後、批判哲学は暴力批判と切り離せない。
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中立性を装う知の形成のうちに、それを条件づける権力の痕跡を、独自の仕方で読み解いてみせたフーコーは、ドゥルーズとは別角度から、「批判」と「臨床」を結合させた。問題なのは病む身体、狂気の言語であり、脱隷従化の武器としてのマイナーな歴史である。同時期の『レーモン・ルーセル』とあわせて推薦したい。
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フーコーをフーコーたらしめたのは、他の誰も知らない文献を渉猟し、他の誰もしなかったような仕方で時代・領野を特徴づける「言表」の尖端を剔抉したことである。その際に、彼は精神分析を脱特権化した。本書は、世界的な視野で精神病理の概念史を論ずる。特に日本の精神医学史に関して、類書はほとんど見当たらない。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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