ブックキュレーター翻訳者 稲村文吾
すこし角度を変えて、これも華文ミステリー
華文(中国語)ミステリーは近年、中華圏各地で大きなムーブメントを形成しつつあります。しかしその流れをはみだすところにも、ミステリー好きが見逃してはいけない作品は存在しています。華文ミステリー史の各側面や、「ミステリー」のラベルの付いていない小説、また児童文学や漫画から作品を集めました。
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沙蘭の迷路
ロバート・ファン・ヒューリック(著) , 和爾 桃子(訳)
中華圏では西洋のミステリーが伝わってくるより前から、「公案小説」と呼ばれる犯罪捜査もののジャンルが栄えていました。オランダのロバート・ファン・ヒューリックによる狄(ディー)判事シリーズは、公案小説のストーリーやアイディアを参考にしたあくまで新たな創作ではありますが、唐朝を舞台にした物語の運びからは原作の雰囲気をうかがうことができます。
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上海のシャーロック・ホームズ
樽本 照雄(編・訳)
19世紀末にシャーロック・ホームズ譚が紹介された上海では、それからいくらもしないうちにホームズを登場させた創作が続々とおこなわれていました。ごく短いパロディもあれば、真面目にホームズ譚を模倣しようとした(ただし中国的な要素は明確に残った)作品もあり、新しい西洋の形式が当時どう見られていたかを面白く読むことができます。
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盗みは人のためならず
劉 震雲(著) , 水野 衛子(訳)
開発の進む北京を中心にして、何人もの小悪党たちがひたすら右往左往し、微妙なすれ違いをくりかえすクライム・コメディ。人気作家の作者は、ブラックな笑いを随所に込めながら、情けなくもふてぶてしい登場人物たちを活写していきます。
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浮き橋のそばのタンムー
彭 学軍(著) , 渡辺 仙州(編訳) , 中山 成子(絵)
やんちゃな少年のタンムーはある日、「夏休みまでにタンムーを殺す」と話す男たちと遭遇してしまう。タイムリミットまでの三週間を、タンムーはどう過ごすのか?児童文学の分野でももちろんミステリーは書かれています。本作は正面からの謎解きものでこそありませんが、明朗な物語に取りいれられたサスペンスのアクセントが印象的。
ブックキュレーター
翻訳者 稲村文吾中国語翻訳者。早稲田大学在学中はワセダミステリクラブに所属。中国語短篇ミステリの翻訳企画「現代華文推理系列」が第17回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)候補に。ほかの訳書に胡傑『ぼくは漫画大王』、文善『逆向誘拐』(ともに文藝春秋)、陸秋槎『元年春之祭』(早川書房)。
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