ダークBLコミック界の鬼才！はじめてのはらだ

デビュー作でありながら、著者独特の世界観が濃縮された短編集です。はらだの作風の一つとしてストーリーの「どんでん返し」が挙げられますが、表題作「変愛」からその醍醐味をしっかり味わうことができます。そのほかファンタジーや学園モノなど、一筋縄ではいかない話のオンパレードに心を掴まれること間違いありません。

生活能力ゼロのうえ色々な意味でだらしないモモと、面倒見がよくオカンのような年下男の八田。ひょんなことからモモに出会った八田は同情心から世話を焼き、代償として彼を抱くなか、モモの過去に直面します。ろくでなしなキャラクターのモモですが、読み進めるうちに愛おしく感じてしまう不思議な感覚がクセになるBLコミックです。

女にモテたい一心でバンドを始めた朝一は、自身の弱小バンドのサポートメンバーとして加入したヨルと一晩の過ちを犯してしまいます。健気なヨルの気持ちを利用し、欲望のままに彼を扱う朝一の傍若無人な態度に初めは度肝を抜かれますが、終盤のストーリー展開はまさに圧巻の一言です。

仕事は丁寧ながら不愛想なため顧客が少ない美容師・笑吉のもとに現れた人気美容師の福介。正反対な性格でぶつかる2人が徐々に打ち解けるなかで、笑吉の周りに次々と事件が起こります。物語に散りばめられた違和感が明らかになっていくさまは、ミステリーを読んでいるかのような緊迫感に包まれる新感覚のストーリーです。

「ゆい」が幼い頃遊んでくれた「にいちゃん」は、あるきっかけを理由に会うことができなくなってしまいます。時が経ち、高校生になっても忘れられないにいちゃんの存在。そんなゆいがようやく再会した彼には、当時のやさしさはなく・・・。ストーリーの明るさは少なめですが、リアリティーのある展開が心に残ります。