ブックキュレーター作家 日上秀之
大切な人に贈るとしたらこの5冊
大切な人がそもそもいないのだけれど、もし大切な人ができるとするならば世界の見方や有りようを共有できる人が良いと思い、そんな本を選んでみました。「趣味は読書」と言ってもジャンルは雑食で、話が合う人にはなかなか出会えないので、その一助にもなればと思います。
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あいつが悪い。あいつさえいなければ。あいつは得ばかりしてずるい。大切な人がそんなことを思っていたら贈りたい本です。観光客という独特な視点で現代社会の構造を明らかにします。このある種の軽さが頑強に固定された視座を動かすきっかけになるかも知れません。
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奈良登大路町・妙高の秋
島村 利正(著)
一方ではフィクション要素の強い菊売りの女性らの人生を追いつつ、他方では事実に立脚した志賀直哉らとの交友を端正な筆致で描いています。初見ではフィクション作品の方が完成度も高い気がするし、心を揺さぶらされるのですが、もう一度読んでみると事実側の作品にも惹きつけられます。短編集なのでどの作品が良かったかを読んだ方と話したくなる本です。
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世界泥棒
桜井 晴也(著)
一見ファンタジック?SFチック?な世界観。残酷で異様な風景の中で、命がどうということもなく失われていくのですが、それは現実なのか幻想なのか。それらが臨界点を超えて文学になっている様を、言葉もいらずに納得しあえるとしたならば、それこそ私にとって大切な人ではあるまいかと、そんな風に思います。読むのに難儀することもあるかも知れませんが、途中からそれが快楽になる独特の文章です。
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アルファンウイ
R.S.フェルロシオ(著) , 渡辺 マキ(訳) , スズキ コージ(絵)
幻想的な風景に差し挟まれる、世界の突拍子もない変化、有様。アルファンウイという少年が人々に出会い、「社会の規範から逃走し固有の現実を作り上げて行く」らしいのだけれど、果たして現実は作られていったのでしょうか、それとも元からそこにあったのでしょうか。それは判然とはしないのだけれど、それらをくぐり抜けた先にある寒々としたリアリティは必見。
ブックキュレーター
作家 日上秀之1981年生まれ。岩手県出身。秋田大学工学資源学部卒。2018年に『はんぷくするもの』で第55回文藝賞受賞。基本引きこもって本を読んでいることが多い。そのほか引きこもって映画を見たり、引きこもってネットを閲覧したりする。メールもLINEも極めて稀にしか来ないので来たとしても気づかないことが多い。猫が大好きで、道ばたで出会うとテンションが上がり話しかけるけれど、不審者ではない。猫カフェなるところに行くのが今現在の目標である。
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