ブックキュレーター哲学読書室
映画論で見る表象の権力と対抗文化
現代世界史を通じて映画やテレビ番組などの映像メディアは、大衆文化・国民文化・対抗文化として、圧倒的な影響力をもってきた。その人種/ジェンダー/階級の表象は資本主義を広め強化してきた一方で、被支配者・マイノリティの側もまた映像メディアを用いて別様の表象を試みてきた。【選者:早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-:社会思想史)】
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支配と抵抗の映像文化 西洋中心主義と他者を考える
エラ・ショハット(著) , ロバート・スタム(著) , 早尾 貴紀(監修・編) , 内田(蓼沼)理絵子(訳) , 片岡恵美(訳)
ハリウッド映画産業が国内向けには「白人・男性・金持ち」の支配的文化を形成する一方で、第三世界に対しては植民地主義的表象によってアメリカ資本と相補的であったことを分析。それに対して中南米・インド・中東・アフリカの側からも映像による抵抗戦略が編み出されていった。膨大な作品分析で全体像を描き出す。
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フランス植民地映画、ベトナム戦争映画、マルグリット・デュラス映画、トリン・T・ミンハ映画の四部構成となっており、旧宗主国フランスと旧植民地ベトナムのあいだの(ポスト)コロニアルな関係の表象として映画を分析する。亡命者・移民・難民といったトランスナショナルな位置にある女性作家による女性表象に着目する。
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中華人民共和国で1980年代末に始まった民間「独立」制作によるドキュメンタリー映画の潮流を論じる。民族的にも地域的にも階層的にも多様でかつ急速に変貌する現代中国社会のリアルな姿をいかに描写するか。ビデオカメラ撮影の普及とインターネット視聴の普及が社会や生活を「記録」する運動を広めていった。
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トランス/ナショナルアクション映画 冷戦期東アジアの男性身体・暴力・マーケット
李 英載(著)
娯楽としてのアクション映画が戦後の「東アジア冷戦」(背後にアメリカ)という政治状況を無意識化している様相を、日本・韓国・香港にまたがりトランスナショナルに描く。その「アクション」という暴力には男性身体のマッチョ性と軍事主義が重なる。同著者の前作『帝国日本の朝鮮映画』(三元社)と合わせて二部作をなす。
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君よ観るや南の島 沖縄映画論
川村湊(著)
北海道網走という北端の「辺境」生まれの著者が、南端の「辺境」たる沖縄の映画を渉猟しつつ〈ヤポネシア〉を照射する。琉球処分と米軍占領という二重の植民地性を負った沖縄の表象は、エキゾティズムと政治性とが混在するがゆえに、領土問題から核問題までを内包する戦後日本社会の歪んだ欲望と権力=暴力を映し出す。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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