ブックキュレーター哲学読書室
ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
ブライドッティ『ポストヒューマン』訳書の作業は、翌日からの集中講義のために沖縄入りした日の夕方に校了した。偶然ではあるが、何かこの本に相応しい仕事の終え方だったように思う。以下、「状況に置かれた知」のひとつの実践として、この偶然を起点とした5冊を紹介する。【選者:門林岳史(かどばやし・たけし:1974–:メディア論)】
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ポストヒューマン 新しい人文学に向けて
ロージ・ブライドッティ(著) , 門林 岳史(監訳) , 大貫 菜穂(共訳) , 篠木 涼(共訳) , 唄 邦弘(共訳) , 福田 安佐子(共訳) , 増田 展大(共訳) , 松谷 容作(共訳)
ポストヒューマンについて真剣に考えることは、同時にポストヒューマンに抗して考えることである。ポストヒューマンになるとは、単に人間を捨て去ることではなく、むしろ、人間をめぐる既存の観念に異議を突きつけつつ、それでも人間であり続けるしかない運命を肯定することだからだ。そのことは本書を読み通せば納得していただけると思う。
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人文学と批評の使命 デモクラシーのために
エドワード・W.サイード(著) , 村山 敏勝(訳) , 三宅 敦子(訳)
したがって、ポストヒューマンについて思考することとは、人間についての新しい知、すなわち、新しい人文知を思い描くことにほかならない。それにあたっては、西洋を中心に構築されてきた人文主義にとっての他者の問題を生涯考え続けたサイードが、9.11以後のアメリカにおいて批評が引き受けるべき使命を説いたこの晩年の著作は、繰り返し読まれるべき参照項である。
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猿と女とサイボーグ 自然の再発明 新装版
ダナ・ハラウェイ(著) , 高橋 さきの(訳)
しかし、ポストヒューマンな知識は、単に他者を包含し総合する知ではありえない。それはブライドッティにとって、自らが他者へと生成変化する個別的な過程なのである(そこで他者を例証するのは女性、動物、機械である)。高名な「サイボーグ宣言」とならんで「状況に置かれた知」を収録する本書は、フェミニズム理論にとっての場所の政治学の重要性を明確化している。
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本屋になりたい この島の本を売る 増補
宇田 智子(著) , 高野 文子(イラスト)
偶然だが那覇では畏友石岡良治氏もほぼ同日程で集中講義に来ていた。院生時代によくしていたように、お互いの講義が終わったあとジュンク堂書店那覇店に一緒に行き、ふと購入したのがこの本。牧志公設市場の側で小さな書店を営む店主による、沖縄という「状況に置かれた知」を発信する実践が綴られている。(石岡氏と本屋に行く経験についてはこの連載記事を読んでほしい。「石岡さんと本屋に行こう!」http://www.kaminotane.com/series/1386/)
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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