ブックキュレーター中央公論新社文庫編集部長 太田和徳
さまざまな人生に生き抜くヒントをさがす
人生ほど面白いドラマはない。役者はさまざまな人物の生涯を演じることができるが、たいがいの人は自分一個の人生を生き終わらせることしかできない。そんな多くの人にとって、自分とは違う、別人の人生を追体験できるのが、評伝・自伝の読書で、そこには生きるためのヒントがつまっている。とくに、壮絶な人生には。
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エリック・ホッファー自伝 構想された真実
E.ホッファー(著) , 中本 義彦(訳)
20世紀の世界的な思想家で、学校教育を一切受けていない人間はいるだろうか。わたしの知る限り、沖仲仕の哲学者ホッファー(1902-83)だけだ。幼年期の失明とその回復、自殺未遂、放浪と波乱に彩られた人生はドラマそのもの。肉体労働の傍ら思索を続けたホッファーが教える「勇気」について考えたい。
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ある文人学者の肖像 評伝・富士川英郎
富士川 義之(著)
富士川英郎(1909-2003)は著者の父親である。小説家でも劇作家でもなく、文学の研究者という派手な生活とは無縁の人生。しかし、ただひたすらに文献と向き合う日々に、学問への並々ならぬ情熱がほとばしる。回想ではなく、批評的な距離を保ちつつ、一人の学究としての姿を描いた本書は評伝の鑑のような一冊。
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「フロベールの才能を欠いた友人」としてのみ文学史に名前をとどめる、マクシム・デュ・カン(1822-94)。この「凡庸」な人物について大部な書物を書き上げ、しかも最後まで飽きさせずに読ませる力量は、著者ならではのもの。「凡庸の反義語は愚鈍である」というが、「凡庸」にも「愚鈍」にもなれない。
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挽歌集 建築があった時代へ 20th Century Architecture Realized
磯崎 新(著)
追悼文というのは、その人の人生の断面を垣間見せてくれるコンパクトな評伝ともいえるのではないか。著者はいわずと知れた建築界の巨匠。本書にはジャック・デリダ、岡本太郎など50人への哀悼の言葉が並ぶ。それは彼らの人生を物語ると同時に、著者自身の人生の場面をも見事に映し出している。
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石原吉郎 シベリア抑留詩人の生と詩
細見 和之(著)
戦争の世紀であった20世紀、戦争体験は多くの表現者に影を落とした。シベリア抑留を経て詩人となった石原吉郎(1915-77)もその一人。緊張感漂う詩篇と『望郷と海』などのシベリア・エッセイを丹念に読み解き、詩人にして思想史研究者である著者が、極限と日常の狭間にあった苛酷な「生」に肉薄した力作。
ブックキュレーター
中央公論新社文庫編集部長 太田和徳中央公論新社文庫編集部長。人文系出版社等を経て、2007年入社。中央公論編集部、中公新書編集部を経て、2016年より文庫編集部。2017年11月より現職。
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