世界にはまだまだ自分の知らない側面がある、と思わせてくれるコミック

ダンジョンで冒険者が食材を現地調達、調理をする異世界グルメ漫画。とはタイトルから予想できます。でも、その「予想」をずっと超えてくるおもしろさ。さまよう鎧を食べるような発想の奇抜さに加えて、魔物好きな主人公のダンジョンとの新たな関わり方は、私たちの無意識の線引きを大いに揺さぶってくれます。

男と女、LGBTQも含めて、その差異と関係性は人類にとって永遠のトピックですが、そこに「食べる側」と「食べられる側」という極限の差異をぶち込んだ問題作です。肉食動物と草食動物が共生する世界で、肉食殺人が起きて、オオカミの青年はウサギの女の子に恋をして・・・。ダイバーシティや共生について、深く考えさせられます。

『嘘喰い』の迫稔雄による青春バトルコミックです。冒頭は何がテーマの漫画なのかもよくわからないまま、シリアスさとシュールさに包まれた主人公の幼少期からスタート。気づけば「カポエイラ」という極めて個性的な武術の世界が広がっています。地球の反対側で生まれたこの武術には、知れば知るほど惹かれる深さがあります。

荒木飛呂彦ワールドのユニークさは言わずもがなですが、第8部、通称『ジョジョリオン』にはこれまでと大きく違う点があります。それは主人公が記憶を持たず、アイデンティティがない状態で始まるところ。何が善で何が悪、誰が味方で誰が敵、そういうものが不明瞭まま物語は進みます。でも、だからこそ見えてくる世界があるのです。

『ちびまる子ちゃん』のさくらももこの未完の名作。半魚人にやかんにカメ、太陽に雷、天使と悪魔とナゾ怪人。これでもかという多様性に満ちたメルヘンワールドで繰り広げられる日常。抱腹絶倒のユーモアが満載な一方で、主人公コジコジの純粋な振る舞いには、別世界にいる私たちにもグッと訴えかけてくるものがあります。