ブックキュレーター哲学読書室
哲学と地理の関係を考えるための五冊
哲学は古代ギリシアで生まれた。この独特な思考の営みはなぜエーゲ海のほとりで誕生したのか。古代ギリシアは海の上に広がる商業空間であると同時に、民主政の実験が行われた地でもあった。こうしたことは何か意味をもつのか。哲学を新たな角度から考えるための五冊。【選者: 大久保歩(おおくぼ・あゆむ: 1972-: 哲学・政治理論)】
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哲学とは何か
ジル・ドゥルーズ(著) , フェリックス・ガタリ(著) , 財津 理(訳)
なぜ哲学は古代ギリシアで生まれたのか。この問いが「哲学地理」と題された章で追究される。フラクタルな地形、商業都市、民主的な社会などの要因が挙げられたうえで、哲学は「脱領土化」の運動に支えられていると結論づけられる。土地に属しながらもそこから離れ浮遊しようとする抽象の力が哲学に固有のものなのである。
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地理哲学 ドゥルーズ&ガタリ『哲学とは何か』について
ロドルフ・ガシェ(著) , 大久保 歩(訳)
脱構築研究で知られるガシェは『哲学とは何か』を緻密に読み込み、ドゥルーズとガタリの描く哲学の姿を鮮明にする。そして彼らが哲学の特性のひとつだとする「土着性」が、ことばの意味とは裏腹に、脱領土化の運動そのものであることを明らかにする。古代ギリシア人が誇った「土着性」とは、大地に縛られないことだった。
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ギリシア人の神話と思想 歴史心理学研究
ジャン=ピエール・ヴェルナン(著) , 上村 くにこ(訳) , ディディエ・シッシュ(訳) , 饗庭 千代子(訳)
哲学の誕生を考えるときまず参照すべき研究がヴェルナンの仕事である。ドゥルーズとガタリが参照している『ギリシャ思想の起原』(みすず書房、1970年)と同様に、本書最終章で哲学がどのように生まれたのか論じられる。神話的思考から合理的思考へと離陸するとき決定的だったのは、民主的なポリスの存在だった。
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地中海 普及版 1 環境の役割
フェルナン・ブローデル(著) , 浜名 優美(訳)
エーゲ海を含む地中海は、そこに暮らすひとびとにとってどのような環境だったのだろうか。平原は、山岳地域は、海は、沿岸は、それぞれどのような文化を生み出したのか。壮大なシリーズの第一部である本書でブローデルは、人間の活動や思考が地理環境に大きく左右されるさまを、豊富な実例を挙げながら優雅に描きだす。
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脱構築の力 来日講演と論文
ロドルフ・ガシェ(著) , 宮崎 裕助(編訳) , 入江 哲朗(訳) , 串田 純一(訳) , 島田 貴史(訳) , 清水 一浩(訳)
哲学が地理と関係しているだけでなく、哲学そのものがひとつの地層だとしたら?ジャック・デリダが創始した脱構築とは、思考の前提を問い直す運動であり、思考のなかの地層を掘り起こす試みである。ガシェは本書で、本領とする脱構築を再検討するだけでなく、ハイデガーやアーレントの思想の地層にも分け入っていく。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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