ブックキュレーターマーケター 井上大輔
たまには後ろを振り返ろう。大人が涙する「思い出」の物語5選
アニメ映画を家族で見て親子ともに涙した。そんな物語もすばらしいのですが、子供にはまだ解らない、大人だけが涙できる作品もいいものです。心のおりを洗い流し、視界をクリアにしてくれる深い涙のカタルシスは大人の特権。そんな特権を楽しめる、「思い出」にまつわる文芸作品5冊を紹介します。成長したいなら常に前向きに。でも、ときには疲れてしまう。そんなときは少し後ろを振り返りましょう。
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主人公の少年と、年の離れた従姉妹のスック、愛犬クイーニーの物語。60歳を超えても無垢で童心を失わない独り身のスックは、田舎の大家族の中では浮いた存在。でも、少年にとってはかけがえのない友達です。二人は毎年お小遣いをため、クリスマスにフルーツケーキを焼いて好きな人たちに送ります。しかし、そんな大人の世界の防波堤のような存在のスックとクイーニーも、決して永遠の存在ではありません。
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AIを備えたロボット、人工友達(AF)のクララと、病弱な少女ジョジーの心の交流を描く著者の最新作。人間とは何か?それは思い出が蓄積された記憶のことであり、誰かの記憶に蓄積された自分の思い出である。どんな人にも大切な思い出が蓄積されている。だからこそどんな人も尊い。そんなことに気づかせてくる一冊です。物語は淡々と進みますが最後に大きな感情の波が。
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同名のジブリ映画の原作です。幼い頃の思い出がつくりだすファンタジー。大切な人はいつまでも思い出のなかで生き続け、勇気を与え続けてくれることを描いた物語。児童文学ですが、いくつかの別れを経験した大人であれば感動もひとしおです。映画のファンが読むと、映画がいかに原作を再現しているかにも驚きます。
ブックキュレーター
マーケター 井上大輔マーケター。ソフトバンク株式会社コミュニケーション本部メディア統括部長。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社MS統括本部マーケティング本部長を経て現職。NewsPicksアカデミアプロフェッサー。ad:tech Tokyoアドバイザリーボードメンバー。文学部出身で文芸をこよなく愛す。近著「マーケターのように生きろ」では、マーケティングとは思想であると説く。天職=コーリングは、自分ではなくまわりの人が見つけてくれる。好きなことではなく、まわりが自分に求めることを理解しそれを追求することでも、個性を輝かせることができる。そんな主張は、悲喜こもごもを経験した大人ならより深く共感できるはずです。
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