ブックキュレーター哲学読書室
なぜ〈国籍〉にこだわるのか、抗いの歴史を読む
かつて在日外国人のほとんどは、植民地支配の結果渡日した朝鮮人のほか、中国や台湾出身者でした。祖国の戦乱と分断の痛みに苦悶しながら戦後日本を生きたこの人びとにとって、国籍とは、そして日本の外国人法制とは何を意味したのでしょうか。当事者たちの声を伝える5冊を選びました。【選者:鄭栄桓(ちょん・よんふぁん:1980-:明治学院大学教授】
- 22
- お気に入り
- 1719
- 閲覧数





-
歴史のなかの朝鮮籍
鄭 栄桓(著)
外国人登録制度がはじまったとき、すべての朝鮮人は国籍欄に「朝鮮」と記載することを指示されました。この国籍「朝鮮」はどの国を指し、いかにして生まれ、今日まで残ったのか。この問いに答えるために書いたのが本書です。植民地の残滓であった朝鮮籍が、分断への抗いのなかで「祖国」の象徴へ変わる過程を追跡しました。
-
ルポ思想としての朝鮮籍
中村 一成(著)
なぜ朝鮮籍を維持するのか。植民地時代に生まれ、戦後日本を朝鮮籍者として生きた六人へのロング・インタビューを収録した本書は、そのこだわりの基底にある「思想」を聞き取ろうとします。各人の実存を賭けた答えに、ぜひ耳を傾けてください。関連書籍として李里花編『朝鮮籍とは何か』(明石書店)もあわせて推薦します。
-
行動する預言者崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯
田中 伸尚(著)
国籍保有の権利は何びとも侵しえない基本的人権である。日本政府の朝鮮人の日本国籍剥奪をこうした観点から批判した崔昌華の主張は、当時としては破格の訴えでした。本書が描きだすのは、1930年に朝鮮平安北道に生まれ、1954年に渡日した韓国籍の牧師・崔昌華の、国籍、名前、そして指紋への権利のための闘いの記録です。
-
在日台湾人の戦後史 呉修竹回想録
呉修竹(著) , 何義麟(編)
台湾出身者の法的地位問題は、日本の外国人法制の歴史を理解するうえで避けて通れません。本書には1922年に台湾に生まれ1940年に渡日し、戦後の華僑運動のメンバーであった呉修竹の回想録と論考が収録されています。外国人登録や花岡事件の慰霊事業、母国との連帯と葛藤を内側から見聞した、日中/日台関係史の貴重な証言です。
-
華僑二世徐翠珍的在日 その抵抗の軌跡から見える日本の姿
徐 翠珍(著)
「日本国家の悪法にそむいても人間の道にそむきたくありません」。上海出身の両親のもと1947年に神戸で生まれた著者は、法廷で指紋押捺を拒否した理由をこう陳述しました。本書には、朝鮮・台湾出身者とは異なる処遇を受けた中国大陸出身の華僑二世として、国籍条項撤廃や指紋押捺拒否、靖国合祀取消を求めた「抵抗の軌跡」が綴られています。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です