ブックキュレーター哲学読書室
オーウェル、ディストピア、そして楽観主義なき希望へ
フェイクニュース蔓延やロシアのウクライナ侵攻など、『一九八四年』を彷彿とさせる事件に事欠かない現代は、ディストピアが実現した時代なのだろうか? 困難な状況のなかでなお希望を追い求めたオーウェルとウィリアムズ、そして彼らの試みを現代に継承する道を模索する5冊を紹介する。【選者:秦邦生(しん・くにお:1976-:東京大学准教授)】
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オーウェル
レイモンド・ウィリアムズ(著) , 秦 邦生(訳)
イギリス・ニューレフトの代表的思想家レイモンド・ウィリアムズは、早逝した同時代人ジョージ・オーウェルの遺産といかに格闘したのか。敬意と批判、共感と反発、好意と嫌悪までも入り混じった両面価値的な筆致が、かえってオーウェルが奉じた理想にあらたな生気を吹き込んでいる。
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オーウェルのマザー・グース 歌の力、語りの力 増補
川端 康雄(著)
マザー・グースなどイギリス民衆文化についての深い知識を駆使して、色眼鏡で見られがちなオーウェルの代表作に「希望のかけら」を見出した先駆的著作。オーウェルの動植物への顕著な愛着に注目する著者の目線は、レベッカ・ソルニットによる最新のオーウェル論『オーウェルの薔薇(Orwell’s Roses)』にも先駆けている。
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ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む ディストピアからポスト・トゥルースまで
秦 邦生(編)
ディストピアについての一面的理解を退けて「古典」としての『一九八四年』を精読すると同時に、受容史や映画・演劇へのアダプテーションなどテクストの継承を多角的に検討した論集。マーガレット・アトウッドとジャン=フランソワ・リオタールの翻訳やディストピアの現代的展開についてのコラムも収録。
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希望とは何か オプティミズムぬきで語る
テリー・イーグルトン(著) , 大橋 洋一(訳)
わたしたちの生きる「暗い時代」に、なお「希望」を持つことはできるか? 著者はこの問いに「オプティミズムなき希望」と「悲劇的リアリズム」の可能性を説く。社会主義の後退局面にあってなお「希望の源泉」を追い求めた師ウィリアムズの教えを継承しつつ、アイロニーとユーモアに満ちたイーグルトン独自のスタイルで希望を擁護。
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『一九八四年』にインスパイアされた数多の作品のなかでも特に注目すべき小説。若き女性主人公の一人称語りによって急速に資本主義化する現代中国社会の実相に迫る本書は、わたしたち自身の時代経験とも呼応する。アトウッド『誓願』(早川書房、鴻巣友季子訳)とならんで、近年再興するフェミニズムによるオーウェルの批判的継承の一例。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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