心、旅する夏

ろくに高校にも行かず時間を持て余していた主人公大田の元に、元ヤンチャだった中武先輩から「バイトをしないか」と連絡が入る。しかし、聞けばそのバイト「1歳の娘鈴香の子守りを1ヶ月間頼む」というもので‥。16歳夏、あなたはどんな挫折を味わいましたか？子供の澄んだ心が主人公の背中を押してゆく姿を見て、あなたもきっと走り出したくなるはずです。

「グライダーになりたい。エンジンなしで、目的地があるのかないのか、とにかく優雅に旋回しているグライダーみたいに生きたい」かつてそう願った孤独な少年は今、エージェント・ハルトという名前でスパイとして活動している。ドジな相棒エージェント・オハラのせいでいつも作戦通りには行かない。そんな旅の中で出会った人たちとは‥。猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」でしか手に入らなかった連作短編の書籍化。「生きるため」に含まれるジレンマを笑いあり切なさありで描き切る一冊です。

ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークションが迫る香港。その裏では、「アノニム」という謎の窃盗団がアーティストを夢見る高校生・張英才に「本物のポロック、見て見たくないか？」と声をかけ、何かを企んでいる模様‥。スピード感のあるストーリーと、物語が繋がっていく爽快感が味わえる一冊。きっとあなたの感覚もポロックの力で研ぎ澄まされちゃうことでしょう。

3年に一度開かれる「芳ヶ江国際ピアノコンクール」。そこには、様々なバックボーンを持つ天才ピアニストたちが集まって来る。かつて天才少女と呼ばれた女の子。名門音楽院からやってきた優勝候補と目される少年。サラリーマンとして働きながら最後の挑戦に立ち向かう男性。そして、突然現れた謎の天才少年‥。「夢」って誰かからの評価を貰うためにあるのではなく、自分のためにあるのだと思わせてくれる胸熱な一冊です。映画化もされていますので、そちらもぜひ！

1945年夏、日本は敗戦した。誰もが呆然としながらも前を向こうとする中、一人の男が動いた。甲子園を取り戻し「高校野球大会」を復活させなくてはならない、と。「希望」と聞くと、誰からも「そんなもの」と言われる時代に、戦争で失った心と希望を取り戻そうとした人たちの青空と汗が似合う青春小説です。私たちも、せっかく生きているのだから何かに熱くありたい。そんな背中をぐんと押してくれます。