ブックキュレーターartscape編集部
写真と言葉。「批評家」中平卓馬の横顔を現代から眺め直す5冊
日本の戦後写真史において、実作/理論の両面で存在感を放った写真家・中平卓馬(1938-2015)。約20年ぶりの開催となる大回顧展「中平卓馬 火―氾濫」(東京国立近代美術館にて2024年4月7日まで開催)に関連し、中平が自らの眼を通して探索した写真と言葉の相互関係をより豊かに受け止められるようになる5冊を紹介します。
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見続ける涯に火が… 批評集成1965−1977
中平 卓馬(著) , 八角 聡仁(編) , 石塚 雅人(編)
1977年に記憶喪失と言語障害を患い、後に再起を果たしたという異例の経歴をもつ中平。「中平卓馬 火―氾濫」展で特に印象的なのが、彼が60年代末〜70年代にかけ数多のメディアに執筆した文章の鮮烈さ。代表的評論集『なぜ、植物図鑑か』と共に、中平の世界の見方と瑞々しい批評の言葉に腰を据えて対峙できる一冊。
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寺山修司の写真
堀江 秀史(著)
中平の活動初期に深い接点があった人物の1人、寺山修司の活動を写真という媒体から紐解く貴重な視点の論集。森山大道撮影の『あゝ、荒野』表紙写真には中平の姿もあり、雑誌連載「街に戦場あり」では中平と森山が写真を交互に担当。彼らの協働関係から生まれたイメージが社会に何を問いかけていたのかを知りたい人へ。
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見るということ
ジョン・バージャー(著) , 飯沢 耕太郎(監修) , 笠原 美智子(訳)
写真の発明以来、大量のイメージに日夜取り囲まれ、その総量も増大の一途を辿る昨今。「見る」行為とは何かを解き明かす本書は、自身と世界の交わり方や、その接点としての肉眼/身体について思考を重ねた中平の姿勢とも共振する部分がありそうです。イメージの洪水に疲弊しがちな現代人としても実感を伴って読めるはず。
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言葉の果ての写真家たち 一九六〇−九〇年代の写真表現
高橋 義隆(著)
中平や森山らの写真を指して代名詞のように使われる「アレ・ブレ・ボケ」など、60年代以降、日本の写真の新潮流をつくった大きな要素である「言葉」の存在にフォーカスした一冊。まだ見ぬ写真表現を模索する写真家たちと、彼らを囲む時代の質感。中平を含む個性の異なる5名の写真家の作家論としても各章読みごたえあり。
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作品に触れ、分析し、そこで考えたことを人に伝える。SNSの台頭以降、誰もが無縁でなくなったとも言える「批評」の基本に立ち返り、その楽しさを教えてくれる入門書。撮ることと書くことの両輪で進んできた中平としても、外の世界に身を浸し相互に干渉し合うための道具として、批評は心強い味方だったのかもしれません。
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