紙の本
不慮の死を迎える本人と家族の苦悩。
2009/03/31 14:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松作品は命の尊厳をテーマにした物語が多いけれど、本作もやはり生と死を見つめた7つの物語である。最後の3篇、表題にもなっている「その日のまえに」と「その日」と「その日のあとで」は、それぞれのタイトルからも分かるとおり、連作になっている。しかし他の4作「ひこうき雲」「朝日のあたる家」「潮騒」「ヒア・カムズ・ザ・サン」はそれぞれ独立した短編物語となっている。・・・のだけれど。物語の最後に、まるで並べられたドミノがスタートを目指してパタパタと倒れるように、後ろから7つの物語が紡がれていく。こういった演出はさすがとしか言いようが無い。
人はみな「その日」を迎える。いつかは迎えるのだけれど。老いもせず、その日が来てしまったら。突然「告知」という形で余命を区切られてしまったら。本人の苦しみ、家族の苦しみ。まだ幼い子供たちを残して死ねない、死にたくない。誰もがそう思うことだろう。でも不条理にも、死は向こうから圧倒的な存在感を伴ってやってくる。どんなに嘆き悲しみ叫んでみても、刻一刻と命の炎は弱まっていく。死は全ての人間に与えられた、唯一にして絶対の平等だと言う者もいるが、こういう物語を読むと果たしてそうなのだろうかと疑問に感じてしまう。
歴史上誰一人、死ななかった者はいない。生あるものは甘んじて「その日」を受け入れなければならない。しかしそれを日々リアルに実感しているかと言えば、全くそんな事は無かったりする。しかし世の中には、こんな理不尽な死を迎えなければならない人たちが、たくさんいるのだ。自分に今、生ある事が。そして大事な人達の生に囲まれている事が、奇跡のようにさえ思えてくる。この奇跡を、たった今生きている事を、大事にしなければいけないな、と痛感させられる。
しかしどうにも、ココロが重くなってしまう。すごくリアルに明日は我が身と思えてしまうから、一生懸命に生きよう、というよりあせりと恐怖さえ浮かんでしまう。正直気持ちが沈んでいる時には、読むのをお勧めする事はできない。自分と大事な人の命の尊さをもう一度しっかりと見つめなおしてみよう、と思う時にぜひ手にとってもらいたい一冊です。
紙の本
悔いが残りますね
2020/10/26 15:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:てくちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦愛と家族愛にあふれていますあふれています。死を覚悟するとこんな感じで限られた余生を過ごす物なのかとも考えさせられました。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
妻の夫を思う気持ちに涙がとまりませんでした。
自分が結婚してこんなふううに別れがきたら、自分のことより先に相手を思いやれるのか?
投稿元:
レビューを見る
幾度となく涙腺が壊れかけてしまった。
「死を迎える家族は、より幸せを感じるのかもしれない」というシーンは忘れられない。余命を宣告され、本当にこの家族で良かった事を死を送る人、迎える人、それぞれが幸せだったと感じる一瞬があるのだろう。
短編小説ではあるが、様々な話が時を超え繋がりエンディングを迎えるのには驚いた。
重松清の小説は「流星ワゴン」「カシオペアの丘で」以来の3冊目、改めて何気無い当たり前のシーンが心に沁みてくる。
投稿元:
レビューを見る
短編集かと思ったら立派な群像劇。
「疾走」とは違う感じの重さ。
(逃げようがないんだろうけど)登場人物が逃げてないのがいい。
「その日」「その日のあとで」で泣けた。
もちろんその前の伏線のせいで。
投稿元:
レビューを見る
「生きること」「死ぬこと」「残されること」「歩きだすこと」が、まっすぐに描かれている作品だった。
「死」という重いテーマなのにも関わらず、温かな気持ちでいっぱいになるこの作品から、命を授かったからには確実にやってくる『その日』を迎えるまで、「生き続けること」「生き抜くこと」の大切さを教わることができた。
この作品は、「感動した」というだけで終わりにしてはいけない気がする。
結婚してから、子供を産んでから、そして私自身&愛する人たちの「その日」の前にまた読みたい。
投稿元:
レビューを見る
死について考えてみた。
いい本だと思うけど・・・しっくりこなかった。
著者の他の本も読もうと幾つかピックアップしてたけど
これだけでやめよう。
投稿元:
レビューを見る
この本は、決して公共の場で読んではいけません。。
ましてや朝の通勤電車なんて。。もってのほかですよ。。
号泣をまぬがれませんから。。
自分の「その日」を知った時。。あなたはどうしますか。。
大切な人に「その日」が訪れる事を知った時。。あなたはどうしますか。。
そして。。「その日」のあと。。。残された人達は。。
最後・・複数の物語が。。少しつづ隣り合わせであった事がわかる。。
短編の中での登場人物達のその後が少しづつ、他の短編のお話の中で隣り合わせ描かれていて、「その日」の後に続く歩みが垣間見えます。。
「死」は怖いし。つらくて悲しくて。。そんなイメージばかりだけど。。
誰にでも突然に訪れる事でもあるなら。。。
出来るなら。。自分の死も。。大切の人の死も。。
やさしく迎えいれたいですね。。。
涙は。。必須ですが。。心暖まるお話でもあります。。
投稿元:
レビューを見る
重松さんらしい本です。
特に「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」の3編は題名が示す通りに一連の作品ですし、「潮騒」は主人公が違うとは言え、関連を持つ作品です。若くして余命宣告された主人公が過ごす、死までの日々。
とても良い作品だとは思うのですが、ある過去の事情から感情移入仕切れず、むしろ辛さばかりを感じてしまいました。身近すぎたのでしょうね。
「その日のあとで」で奥さんが残したたった一言の手紙。愛し合った夫婦だからこその一言にジンと来てしまいました。
投稿元:
レビューを見る
もうホント卑怯だよね。こういうの。重松さんの作品を読むたびにそう思うんだけど、泣かせる設定で泣かせるストーリーをハイどうぞって差し出してくる。(むかしはこれに結構興ざめしてしまっていたんだけれども)
そして一番の問題点はしっかり泣かされしまうこと。その中でも本作の卑怯振りと泣かされぶりは秀逸だった。『ヒア・カムズ・ザ・サン』で最後の最後まで弱みを見せないようにする母親のホントはものすごい弱いんだけど強いところ。『その日』に関してはもう10ページに一回くらいは泣き所がくる。チクショウ。
ハンカチを持っておらず、手で拭いて啜り泣いていたので読み終わった本はちょっぴりしなってしまっている。そのぐらいの感動作。思うんだけどこのひとはほんと平仮名の使い方がうまいよな。
「お盆の花火。それは大きな迎え火です。ふるさとを出て行ってしまったひと。会いたくてもなかなか会えないひと・・・・たくさんの思い出を胸に、会場におこしください」(p273)で鳥肌。
(2008.10.1)
投稿元:
レビューを見る
ひこうき雲/朝日のあたる家/潮騒/ヒア・カムズ・ザ・サン/その日のまえに/その日/その日のあとで
家族ものを書かせたら右に出る者なし。
生と死を通して見つめる幸せの意味。切ない。
投稿元:
レビューを見る
昨日までの暮らしが、明日からも続くはずだった。
それを不意に断ち切る、愛するひとの死。
僕たちは「その日」に向かって生きてきた—。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。
投稿元:
レビューを見る
先日学生時代の友人が亡くなりました。
彼女がどのような思いで「その日」を迎えたのか、「その日」を迎えるまでにどれ程の苦痛に耐えてきたのか。
真正面から病気と向き合い、周りの人間に笑顔をふりまき、常に感謝の気持ちを忘れない。
私は今、そんな風に自分の「その日」を迎える自信はない。いつか彼女のように強くなりたい。
そんな時期に出会った小説でした。
この小説に登場する妻の和美は、その強さを持った人なのだと思う。「その日」のあとまで、その強さは変わらない。
今ちょうどこの時期に読んで、良かったと思える作品でした。
投稿元:
レビューを見る
昔、守ってあげられなかった友達のことを思い出して、やっぱりホームレス中学生の時みたいに、心を閉ざして読んでしまった。 この内容で、この人物配置をした余裕というか、冷静さ。 作者には壮絶な人生経験があるのかなあとやっぱり思ってしまった。
投稿元:
レビューを見る
7編の短編小説。
表題作の「その日のまえに」「その日」「その日のあと」の三部作以外も全てが「死」について書かれている。
余命を先刻された後「その日」までどう生きていくのか・・・。
泣かないはずがなく、「その日」を迎える夫・子ども達・・・せつない。
死後の手紙のたった一言「忘れていいよ」には嗚咽しました。