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不幸でも幸福でもなく、ただ幸せであるために
2007/11/02 22:06
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
血が繋がらないものと思っていた義兄と義妹が本気で愛し合い、実は本当の兄妹であったことがわかる。離れて忘れようとして、別々の人生を歩み・・・
それでも十数年たって後、再会した時に彼らは思い知る。
お互いを思う心が「再び燃え上がった」のではなく、ただの一度もこの火が消えたことはなかったのだということを。
そんな兄妹がメインではあるけれど、この作品の「星々」たちは彼らを取り巻く家族。片方ずつ血の繋がった兄弟姉、両方の血の間で苦悩する妹、
戦争の中で大切な人を失うという「取り返しのつかない」傷を負った父。
さらに彼らの夫や妻、子供の世代にまで話は及ぶ。
仏教に「諦念」という観念がある。欲を捨て自分と世界に向合い、更なるものを望まず現状に満足する、無一物からはじめよ、ということだ(と私は解釈している)がこれがなかなか難しい;;
私は到底たどり着けない境地だが、この星々はまさに諦念のなかに輝いている。
本書の最後の言葉・・・「幸福とはいえない幸せもある」この一言がすべてを語っているのだ。
「幸福」、そうあることが当人の幸せであると、誰が決めたんだろう?
「幸福」、自分の望んだ通りに成らず手に入らずとも、想い続ける幸せはどんなに大きいことだろうか。
単なる家族小説でも、恋愛小説でも、反戦モノでもない。
けれど幸福でなくても幸せであるために、ぜひ読んでほしい一冊である。
平凡そうに見える家族にもドラマがある
2019/09/21 23:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は、この作品で第129回(2003年上半期)直木賞を受賞している。水島家という、東京近郊で工務店を営む家族それぞれを主人公にしている連作だ。家族構成は父の重之、母の志津子、長男の貢、次男の暁、長女の沙恵、次女の美希である。 志津子は後妻であり、二人の兄弟は重之と前妻の晴代の間に出来た子であり、二人の姉妹は重之と志津子の間に出来た子である。 暁と沙恵のように、小説の題材としては濃すぎる二人から、平凡な地方公務員一家にしか見えない貢一家のまさかのドラマまで堪能できる。美希が愛人の頭の髪の毛をいじくって「サリーちゃんのパパみたい」とはしゃぐ場面は、このさくしゃは私と同年代なんだとにんまりしてしまった