紙の本
乙女の友情物語
2010/09/16 12:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近また新たに忍法帖シリーズが刊行されたと聞き、読みたくなった1冊。
個人的には5本の指に入るくらい好きな作品ですが、作者の山田風太郎は「少年小説みたい」という理由であまりお好みではなかったようで。
時代物にありがちな、世を忍ぶ将軍のご落胤である主人公と可憐な乙女二人が大活躍する話。
敵は自らの保身と野望のために躍起になって悠太郎を抹殺しようとする柳沢吉保と雇われた7人の忍者達。
対する味方は序盤で早くも殺され、唯一残るはお縫という少女。
普段はおっとり型・草食系男子の悠太郎だけれど、お縫の弟、幼い丹吉が敵の忍者に殺されたと知るや、俄然復讐の鬼と化す。
その悠太郎とお縫の復讐劇に吉保の養女鮎姫が絡み、切なく美しい三角関係が主軸となって話は展開。
この小説の成功のカギは何と言っても鮎姫というキャラクターに尽きる。美しく傲慢で我儘で勝気な姫がひょんなことで悠太郎に拉致され、一目惚れ。
悠太郎の正体を知り、養父がその彼を抹殺しようとしている陰謀を知って、愛に目覚めた姫は自分が何をすべきなのか次第に理解するようになる。
悠太郎を巡って対立していたお縫と鮎姫。育った環境も性格も正反対の2人だけれど、お互いを知るにつれて憎しみは同情と変わり、最後には友情へと変わってゆく。そして互いの窮地に身体を張って救出に向かう姿が、潔くてカッコいい。
読み方を少し変えて、女同士の友情を描いた作品として読むのもまた一興。
読んでいていつも思うことだけれど、山田風太郎の忍者物は女性キャラの活かし方がもの凄く巧い。大抵の時代小説において女性は単なるお飾りや添え物にすぎないのだけれど、こと山田忍法帖に限っては違う。今作のように主人公を喰ってしまうことが多々あるし。
物語終盤、お縫と鮎姫の純粋な友情に悠太郎は心打たれ、それが勇猛果敢に敵陣へ乗り込む原動力となる。そして悠太郎への愛を知り、お縫との友情を知った鮎姫の、養父の恐るべき悪事をも断罪しようとする決死の覚悟に感動せずにはいられない。
この作品、個人的には鮎姫とお縫の友情物語だと思っている。ゆえに、主人公である悠太郎は少しばかり影薄いけれど。
が、しかし、山田忍法帖としては珍しくハッピーエンドで爽やかな読後感。大トリには「控えおろう~」の、あの水戸黄門サマもご登場。笑いをとる場面か~コレは? と思いつつもきっちりと締めてくれるのでした。
作者サマ、お見事。
BIBLIO HOLICより
紙の本
美女が4人も出て来るわりには……
2001/11/07 09:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る
風太郎忍法帖は20年ほど前に角川書店が (確か「魔界転生」の映画キャンペーンの一環だと思うが) 復刻した時にかなり買い込んで読んだつもりでいたのだが,考えてみれば当時ワタシは時給600円に満たない雀ボーイの酔っぱらいだったので,「かなり」のたかが知れていた。この「江戸忍法帖」は読んだ覚えがなかった。
筋立てはこうだ,徳川四代将軍家綱は,世継ぎの男子を設けることなくこの世を去り,弟綱吉に将軍職を譲った。ところがこれは表向き,実は家綱の世嗣を身ごもりながらその権謀術数渦巻く大奥を逃れた女人一人あり,時を経てこの男子葵悠太郎が江戸に出現する。綱吉の寵愛めでたい大老柳沢吉保はそれを知り,甲賀七忍と呼ばれる必殺の暗殺団を差し向ける……。
解説で日下三蔵氏が述べているところによれば,風太郎翁この作品を「なんだか少年小説みたいで,B級にも入れていない」と語ってたそうなのだが,話はなかなかどうして良くできている。
女忍者一人を含め,美女が4人も出て来るわりには得意の閨房に関わる忍術が出て来ないどころかマトモなセックス・シーンの一つもないのが,おそらくは「少年小説」たるゆえんだろうが,天下の将軍の座にも無頓着な主人公が女色に限って貪欲ではヘンだろうし (実人生においてはママいるタイプだけどね) ,まぁその点はこんなもんではなかろうか。
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表紙が刺激的なわりに内容は案外やばくない。まあ、若い女の子が裸のまま立ち回りを演じるシーンがやばくないとすれば、だけど。
それにしても、この人の小説はうまい。勢いのままに読んでしまう。この作品は、絵に描いたような時代劇で、水戸黄門が話をまとめるあたり約束通りで、その忍法帖的ではない。安心して読めるけど、ちょっと刺激が足りないかなって思った。どうもあいまいなヒーローの性格づけにも問題があるのかもしれない。
早朝起きて読み終え、そのままホールに演劇講習会へ行く。なんと「メリハリのついた」生活だろうと思う。こうありたいもんだ。
2006/8/17
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2011年6月読了
主人公より女が活躍する、角兵衛獅子の娘がくのいちばりの体術と度胸、敵を葬り去る。姫様お鮎に翻弄される悠太郎は、柳生忍法帖の十兵衛を思い出す。
忍法帖にしては爽やかなラスト、虚無感に落とされることなくホっと安心できる。
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権力を握ろうと画策する将軍家側用人・柳沢吉保が、邪魔者となる先代将軍家綱の御落胤・葵悠太郎を亡き者にすべく、手飼いの忍者甲賀七人を放つ!
悠太郎を守ってきた忠臣3人が序盤であっさりとやられてしまい、悠太郎VS甲賀七人の不利な状況に追い込まれます。悠太郎一人でどうやって7人もの忍者達と戦うのかとハラハラする展開ですが、ここから大活躍するのは女達です。
葵悠太郎という男が、前将軍の御落胤というやんごとなき立場でありながら、立身出世に興味がなく故郷の野山で暮らしたい、というのんびりした男です。
しかし、こののんびりさは鷹揚さや器の大きさよりも、優柔不断で中途半端な印象を与え、強大な敵と戦うヒーローとしてはちょっと頼りない。
この頼りなさを覆い隠し、ストーリーに迫力を持たせるのが彼に集う女達。
道中で悠太郎と知り合った獅子舞の娘・お縫。
吉保の養女でありながら悠太郎を愛した鮎姫。
甲賀町を嫌い悠太郎に手を貸そうとするお志乃。
甲賀七人衆の紅一点・葉月。
エロさや戦いの迫力は忍法帖シリーズの中ではイマイチ…ですが、この女達がとにかく魅力的で悲恋映画を観ているようでした。
最後の刑場での戦いは素晴らしいです。
鮎姫とお縫の友情、悠太郎の未熟さと決意。葉月の薄絹が舞う場面は、映像化したらさぞ綺麗だろうと思いました。
分かりやすい勧善懲悪もので、忍法帖シリーズでは珍しく希望のあるラスト。
作者本人の評価は低いようですが、わたしはとってもおもしろかったです。
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鮎姫可愛いよ。鮎姫。
筆者が『B級にも満たない作品』と評したらしい一作。
なるほど確かに、他の山田作品に比べ情念と言うかパワーと言うか、そういう熱量はあまり感じられなかったかな。
と言うのもやっぱり悠太郎の振る舞いが影響してると思う。
べらぼうに強い訳でもなく、一貫した強い思念がある訳でもなく・・・
ちょっと読んでいて爽快感を得られない部分はあったかな。
お縫に鮎姫に敵方である葉月に、女性登場人物が軒並み印象深い立ち位置であるがゆえ、尚更。
とは言えあくまでも『忍法帖シリーズ』という期待感が高いせいでもあるけどね。柳生と比べちゃったりするから。
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話は面白いのだが、意外と主人公が弱い。
超絶スーパー剣豪かと思いきや、サブキャラよりちょっと
だけ強いというだけでちと残念。
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解説にあるとおり、少年小説みたい。エロもすくない。女は誰一人としてやられない。忍法は地味。忍者多数対一人の活躍は伊賀忍法帖と同じだが、伊賀の方が面白かった。
鮎姫が可愛い。山風のかく無鉄砲なじゃじゃ馬キャラはかわいい。ラストの小塚原突入でなかなか悠太郎が吹っ切れないせいでイマイチのりきれなかった。
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http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2013/07/post-54bb.html
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爽やかである。主人公の人となりもさることながら、これが忍法帖か、と見紛うほどの死人の少なさ(でもないか)と、エロシーンの少なさ。というより、お色気シーン、ぐらい。べ、別にいいですよ、それが目的じゃないから。
敵忍者は例によって超自然現象を引き起こす輩なのに、主人公は忍者ではない。さあ、どう戦うのか。これもまた爽やかというかサッパリというか。忍者たちの動機も、なんだか可愛げすら感じる。
誰が死ぬとか生き残るとか書いちゃうとつまらなくなるので書きません。読んでね。
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楽しい時代劇
あからさまに テレビ時代劇 水戸黄門 だった
甲賀忍者の巻 だ
野心を持つ大老の陰謀に使われた
甲賀七忍
七人の忍者の忍法が楽しい
それを撃つ、主人公 葵悠太郎
忍法に苦しみながらも、ひとりづつ倒して行く
著者本人はこの物語りをB級以下の少年小説と評したそうだ
水戸黄門が最後に、悪大老を締め上げて正義を庶民に示して終わるこの小説のヒューマニズムは、少年にも読んでほしいのかもしれないが実際に読むのは年寄りでしょう
助さん格さんも登場するが、今回は ちょい役 だった
まぁ忍法がメインの水戸黄門だから珍しいのかもしれないけど、やっぱり物足りなく感じる
山田風太郎の別の本を読んでみよう
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以外、面白かった。
エロが少ないのでちょっと・・・とは思って読んでいたが
最後は結構一気読みしてしまった。
忍者じゃない女性の活躍が読んでいて楽しく、鮎姫の最後には結構泣けます。
ネタバレです。
最後の最後に「ひかえおろう!このお方をどなたと心得る!!」登場。そういえば最初に出てきていたねぇ。