紙の本
舞台に幕を引く
2009/01/19 16:36
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
萌絵の幼なじみ塙理生哉が社長を務めるナノクラフトの招待で、テーマパークを訪れた三人。空港で偶然再会した島田文子から、目的地で死体が消失するという不可思議な事件が起きていたことを聞かされる。そして実際に萌絵たちは死体が腕だけを残して消えてしまう現場を目撃する。犀川や萌絵を観客と見立てたように次々と起きる事件。その背後に見えるあの天才の影。いったい誰が何のために事件を引き起こしているのか?
シリーズを通して1話完結の形式を取りながら、作品構成としても、作中人物達にしても、それぞれに関連性を持ちながら全体として1つの作品群を作り上げたと言える。これをなしえた理由の一つとして、シリーズを一貫する思想の存在が挙げられるだろう。
すなわち、謎の全てに常に解答が用意されているわけではない、と言うこと。そして、読者は事件の直接的な観測者にはなりえないと言うこと。だからこそ、どこまでが事実でどこからが作中人物の意見なのかを見極め、解くべき課題設定を行い、事実に基づく仮定を組み立て、事実との突合せをする必要が出てくるのだ。
紙の本
存在の行方
2005/01/16 13:52
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こう - この投稿者のレビュー一覧を見る
見事でした。
真賀田博士の登場や言動から来る森ワールド独特の雰囲気もさることながら、<S&M>シリーズ前9作全てがここに到るまでの伏線であり、要素だったのですね。 10冊読み終えてみると、やはりこのシリーズの中で一番好きなのは第1作『すべてがFになる』と本作『有限と微小のパン』ですが、かといってこの2冊だけではストーリーが完成しなかったというのもよく分かりました。
ないものをあると信じること、綺麗とか美しいということ、名前というもの、1つであるということ、一瞬で消えてなくなるもの、時間という概念、生と死……前9作で提出されてきた主題が、本作で集約され、本作で「存在の意味と行方は?」というテーマの下に完成されています。好きだなあ、こういうの。
「どこから来た? 私は誰? どこへ行く?」
存在というものがどこから来てどこへいくのか、とは、もうずっと昔から使い古されているにも関わらず繰り返し問われ続けているテーマですが、それに対してこんな答を返したお話って他には知りません。
不完全だからこそ愛しい/大切だとか、逆にまったく意味などないのに生きていかなければならないという悲愴さとか、色々あるけれどこれはどちらでもない。単に意味はない。でも意味があるかないかということすらも、たいした差ではない。ただそこで生きている。そんな感じです。
このシリーズを途中で投げ出してしまった方もいるでしょうが、なんとかこの最終作まで辿りついてください。
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シリーズ最後、分厚い!
2019/02/23 23:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきたまご - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズも最後ですね。さみしいです。(短編はありますが)
犀川先生大好きです。萌絵との今後が気になります。次のシリーズ以降でも、二人のことが分かることもあるかと思うので、そこは楽しみにしたいです。
今回は某ラスボスが出てきている関係もあってか、文学的(?)要素が強いかもしれません。そこがまた楽しかったです。
正直、この作品が書かれたのが90年代ということに、驚愕しました。さすがは森博嗣と言いますか…
今回は、本当に「すべてがFになる」を読んでいないと、何も分かりません。要注意!
分厚い文庫にビビっていましたが、すぐ入り込めて、読みやすかったです。
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My favorite
2019/05/08 22:41
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投稿者:A - この投稿者のレビュー一覧を見る
森先生のSMシリーズ完結編ということで、これから読むのが楽しみです。
テレビドラマで放送されてましたが、この本を読む前にドラマを見返すのも良いかと思ってます。
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日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は。S&Mシリーズ第10弾・傑作長編。
小説に登場する天才の多くは、そのパフォーマンスだったり、他の登場人物による評価によって「天才だ」とイメージする(させられる)ことがほとんどだが、このシリーズではそれだけではない。その思考・発想、あるいは存在そのものに「天才だ」と圧倒させられる。
この作品の何作か前から、1とは、ひとりとは?と、語られてきたが、ここにきて、ようやくその答えらしきものに辿りついたような気がする。
ミステリー自体は、天才のすることだから、何でもありかな?と思いきや・・・どんでん返しが。ずっと語られている思考・思想から想像がついてしまう人もいるでしょうが・・・
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肝心のトリックその他についてはかなりアンフェアだと思うのですが(ありえないよほんと!)、トリック云々よりも本作では犀川、萌絵、そして一人の天才の物語の結末に着目すべきではないかと思われます。
崩れそうな自己を抱えて戸惑う萌絵はどうなるのか。犀川は、一体どちらにより強く惹かれるのか。天才は、これからどこへ行くのか。
どきどきの展開に厚さを感じず物語の中に入りこんでいくことができました。
犀川が海辺を延々と歩くシーンが好き。
そして最後にもう一度、驚かされました。まさかあのひとが、ってね。
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S&Mシリーズの最後を飾るにふさわしい、長編ミステリー。「全てがFになる」の真賀田四季博士が再び登場する。長崎のテーマパークを舞台に起こる様々な事件、日本最大のソフトメーカー「ナノクラフト」の存在。バーチャルリアリティを体験してるかのような、不思議な感覚。ラストはさわやかに、ちょっと寂しい展開。「すべてがFになる」を読んでから、こちらを読みましょう!
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全体として大味な感じ。メイントリックは、ある種虚をつかれるんだけど、それほど意外でもない。長崎ハウステンボスがモデルであろう舞台設定と、ロールプレイングゲーム制作会社っていう設定が、うまく効果を上げているから、それなりに納得ができるのは確か。それにしても、ちょっと能書きが多すぎるような気がするが。
それにしても、この作品を書いてしまったことで、結局はシリーズ第一作「すべてがFになる」のネタバレをしてしまっているのが、どうしても納得できないのだ。それは「四季」シリーズにも言えることだけど。作者はいったいなにを考えているんだろう。ついでにいえば、「圧倒的な天才」を登場させるのは結構なんだけど、所詮作者の限界の中で想定したものであり、ちょっとしらけてしまった。
シリーズの最後の作品ってことでわりあい期待して読んだのだが…。残念。
2004/12/25
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S&Mシリーズの最終作(?)
巨大テーマパークを舞台にした連続殺人に挑む二人。
うーん、話は面白いんだよね。でも、真賀田四季の執着がさっぱりわからん。つか、すごい違和感があるんだけど。まぁ、そうしないとストーリーが成立しないのは理解できるんだけど、そこまで天才でありながら、いくら倫理観が常人を超越してるからって、これ、なのかなぁ。
結局、天才の考えてることってわかんないよね、っていうのが免罪符になって、それで誤魔化されてる気がするんだけど。
と、やっぱり最後まで好きになれない萌絵なのであった(苦笑)
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シリーズ最終作。
Fでも出てきた’彼女’が再登場です。
S&MシリーズはFに始まりこの作品で終わるのだな、と思わず納得してしまう内容となっていますよ。
九州にあるユーロパークで、次々と不可解な事件が起こります。
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今回はミステリ要素よりも真賀田四季=森博嗣の思考をトレースすることを楽しむべき作品だと思う。しかし真賀田四季とはこれほどスケールの大きな天才であるのか。ミステリの部分は機械仕掛けをにおわせておいていたってフェアなものだと思う。
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森博嗣ミステリィのS&Mシリーズの終結。
『すべてがFになる』のサブタイトル”THE PERFECT INSIDER”に呼応させたサブタイトル”THE PERFECT OUTSIDER”一貫したつながりを感じさせる。
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四季さん良いですね。テーマパークやバーチャルな世界の描写もうまく楽しめた作品。我が家はこれ読んでハウステンボス旅行に行きました。
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とうとうS&Mシリーズを読み終えてしまった・・・。到達感よりも残念な気持ちでいっぱい。もっともっと楽しみたかった。
天才というのがどういうモノなのか、真賀田四季博士という人物でなんだかわかったような、「よくわからない」ような・・・・。
犀川と萌絵のふたりも、結局のところどうなるのかわからないのが、唯一の救い。だってもしかしたらどこかで続編があるかもしれないから。「僕にだよ」という犀川の発言に、シリーズ最初の頃とは違う人間らしさを感じさせて、とても好きなシーン。今までの作品の楽しさひっくるめて★5つ。
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S&Mシリーズ第10弾。
シリーズ最終作。
ものすごい長編で、読むのは大変だったけど、読み終わった後の満足感はたっぷり。
「F」で登場した、天才・真賀田四季の圧倒的な存在感を再度実感。