「娼年」というタイトルながら、少女のように心震わせる女たちに目が吸い寄せられる
2004/05/24 10:34
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミケ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「娼年」というタイトルが、目に飛び込んできた。
電車で居眠りをしていて、ふと目が覚めたそのときに。
少女漫画「正しい恋愛のススメ(一条ゆかり)」を読んだことがあるので
あんな感じで美少年の男娼が出てくる話かな、と思って読み始めた。
そう、その通りでした。
美少年(美かどうかわからないけど)が、ふとした好奇心から男娼になり
普通のホストクラブなどには、たぶん来ないであろう種類の女性たちを相手にする。
タイトルが「娼年」だから、20歳の大学生リョウが主人公の、ひと夏の成長物語であると
思うのだが、私はリョウが相手をした女性たちの方に意識が流れていった。
それは私が女性だからかもしれない。
男性作家の描いた女性なのに、これほど彼女たちの哀しみのようなものが私の心に
沁みてくるのが驚きだった。
名のある男性作家の描く女性像というのは、今までちっとも心に響かなくて
「何なの、コレ。」という感じで反発を覚えたものだ。
女性が女性を描いた時もまた、特に官能的な場面は生臭い感じがして私は好きではないのだが
この小説の中の女性の描写には生臭さを感じなかった。
女性が知っている女性というものを、生臭くなく、まるで少年のような透明さで描いていると思う。
陽炎のような、水のなかでゆらめいているような、そんなつかみ所のない印象の中で
(つまり、そのことで登場人物すべての不安な心の揺れを感じ取れるのだが)
ひときわ実在感を持って迫ってくるのが、リョウの大学の同級生メグミだ。
あの、断定的な物言いは、「常識的」すぎて、逆に何かに取り憑かれているような狂気を感じた。
「きっとリョウくんも、いつかわたしに感謝するようになる。
わたしはすべてリョウくんのためにやるんだからね。」
とたたきつけるように言ったメグミの姿は、そのまま子どもに対する母親の姿と重なって怖かった。
リョウが男娼として売れっ子になりダブつくほどのお金を稼いでも、金銭的な感覚が
マヒしないようにとバーテンダーのバイトを辞めないのと同じで、メグミのその怖いくらいの
「常識的行動」もまたこの社会で生きているんだという実感を忘れないためにリョウには
必要かもしれない。
石田衣良の小説は「うつくしい子ども」とこの「娼年」しか読んだことがないけれど
繊細なタッチがかなり読み心地が良いので、他の作品も読んでみたいと興味が湧いてきた。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
石田衣良を知らずしてこの本を手にする人はあまりいないだろうが、もしそんな人がいたらちょっと眉を顰めるような内容かもしれない。20歳の青年リョウが、娼夫として一夏を過ごす中で色々な女性と知り合い、成長していく?と言った物語。特殊な趣味を持った女性もいる。いや特殊な趣味をもった女性の方が多い。中には自分の祖母より年上と思しき女性とも、ベッドを共にする。その中で、女性と人間とを知っていく。
性的描写が細かく具体的で、ちょっと面食らう部分もあったが、しみじみと胸に染み入って来る物が確かにある。そして、確かに彼の作品でしかありえないと思わせられるテイストがある。
大変な売れ行きを見せ、直木賞候補になったのもうなずける1作。彼の作品はどれも素晴らしいが、その中でも珠玉の1作と言っていいのではないだろうか。特に女性ウケしそうな作品に思えた。
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投稿者:かい - この投稿者のレビュー一覧を見る
セックスの描写も繊細で、男の感情の起伏をうまく表現されています。リョウがおもう、年上の女性への価値観に深く共感しました。
ごく普通の大学生が
2021/07/18 13:01
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
夜のネオン街へと堕ちていくようで圧倒されます。様々な性的嗜好を持つ客たちとの、一夜限りの関係にドキドキです。
映画も見てみたい。。。
2020/12/05 21:59
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投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り大学生の青年が娼婦になる話。特にお金に困ってるわけでもない青年が、その仕事内容やその仕事で知合った人間関係にはまっていく過程で、雰囲気たっぷりの物語に自分もはまっていった。静かな雰囲気の主人公の芯の強いところも交換が持てる。とはいえ、電車の中で読むにはちょっと気がひけた。映画はまだ観てないけど、この雰囲気を出せているのかどうか見てみたい気もする。
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結構好きだなー。
最後の方の
「どこまでも正しいメグミは強制をやめないのに
法や常識の外にいる咲良は最後の瞬間までぼくの自由を大切にしてくれる。」
とか。
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「これ、官能小説?」と思ってしまいました。それくらいの内容のものが次々と出てきたので。でも、官能だったらもっと細かい描写になるか・・・多分。読んだことないけど。ただ、この作者は男性なのに、いかにも女性の気持ちがわかりきってるかのように書かれていたのですごいと思いました。
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確かこれ、直木賞の候補になっていたような…。(微妙な記憶)下半身が疼くような小説でした。(笑)ああ、でもこういう世の中の憂いを全て身につけちゃったような、悩ましげな子っているよなぁって感じ。この話でリョウくんを買った女の人たちはお金で男の子を買うというより、お金でエクスタシーを買う感覚なんだと思う。出しちゃえば、とりあえず頂点に達する男の人とはそこが決定的な違いで、女の体は色々あるんですヨ!…というわけで、男たちよ、読みなさい。(笑)
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スッと読めてしまう作品ではあったけど、なかなか良かったのでは。
深いテーマ故にくどくどとページを割く事も出来ただろうけど、何気なしにさらっと書いてあるからこそ考える所もあった。
濡れ場もあったけど、設定上それは仕方のない事だし、取り方によっては只のそういう小説と言われてしまう向きもあると思うけど、私はそうは思わなかった。
(エロ小説としか取れなかった人は、それはそれでいいんじゃないかと思う。)
女性をセックスの相手としか見ていなかった主人公が、様々な女性の様々な美点に気付いていく課程がなかなか面白く読めた。
主人公は男娼という設定ながら、”金の為にセックスする”という本来の定義から離れて、あたかも一人一人の女性と”恋”をしているかのように描けていた点も良かった。
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かなしい、あたたかい気持ちが流れ込んできました。新幹線に乗る前に品川駅で買い、新大阪に着くまでに夢中で読破。翌日帰京するまでに、計3回。静香さんの手が領の頬を包むところで涙、シュミットさんが窓の外を指差すところでもう一度、涙。内面、外面ともにきれいになれる本だと思います。・・・ 領(主人公)くんや静香さんのように、相手の心をやわらかに受け止める人になりたいと思い続けて、これからを過ごそう。
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テレビで見かける石田衣良さんの作品。
穏やかそうな外見なので、どんな作風なのか気になってました。
娼年は、娼婦プラス少年。
いろんなことに退屈してた大学生が、娼夫として働き始める話です。
なかには先を読むのをためらうような、飛ばしたくなるような描写もありましたが、イヤラシサを感じない小説でした。
正しい人生なんて答えがでるものじゃなく、いい生き方なんてわからない。
「いい人生」の選択肢が多くなりすぎて、こういう本が売れたりするんだろうなって思う。
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やわらかな口調で描かれた物語だなあと。そのやわらかさが登場人物のありようにもつながっているように思える。……でも立ち読みする本ではなかった(笑)。
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珈琲一杯分の時間つぶしに何気なく買った本。バイオリズムによってはこういうものも読むが、概ね「ふーん」で終わってしまう。
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主人公は光は持っているがぱっとしない大学生。彼が女性に言われたはじめたことは…人のやさしさをかんじることが出来る読みやすい本
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京都の友達のうちに泊まったとき彼女のうちで見つけて、読んでみた一冊。
この人の書く話(というか根底に流れている性善説みたいな感覚)は好きだと思うのだけど、多分文が合わないのだと思う。私は。好きだけどいまいち胸を張って好きと言う気にはならない作家。金城一紀が「僕」を書くのを許せても、この人の「僕」はなんだか妙な違和感を感じるのだ。
ストーリーは、何かと人生にやる気を感じない主人公(僕)が、デートクラブ(出張ホストクラブ?)の女社長に見込まれて、娼年になっていくという話。
http://d.hatena.ne.jp/raspberry/20040723
この人の日記にも書いてあるとおり、セックスのことばかり書いてあった。まあ、つまらないとも思わなかったけど、テーマが際どいので微妙。娼年をしていくことで性欲という人の「欲望」に興味がわき、人それぞれ様々な形のあるそれを愛しく見つめる主人公。ていう他者受容を書くならば、別にセックスを主題にしなくてもよかったんじゃないかとも思う。そんなこと言ったらあれか、どんな小説でもそうか。人として一番見せたくない(恥ずかしい)部分を許容するということがその人全体を許容するということに繋がるのかなあとは思う。単純に私はこの種の(特殊な、と言ったら失礼なのかしら)欲望が理解できないから、そういった文章の大半を割かれる描写にも興味がわかず「面白い」と思う部分が少なかったのかも。とか言ったら理解できる人のが少数。ええ。
貸してくれた友達が言っていたけど、「気持ちがキレイ」というのは石田衣良の小説全般に言えることだと私は思う。
http://jin.jugem.cc/
この人の10/27に書かれる
テロや戦争が起こっている現実を見て、外野から「まあ世界には色んな考えがありますがな」と悟ったように言うのは簡単だけど、それじゃ何も解決しない。
というのは本当に分かる。「自分は自分、人は人」というのは、まともな意見な様でそれを言ったら終わり、という言葉であるといつも思う。コミュニケーションが成り立たない。それ以上進めないっていう、これもまた「バカの壁」だろうって思う。でもこの小説はそういうんじゃない、暖かい「人は人」をよく描いていると思う。
あと見た日が近いこともあって「ズーランダー」と似たようなものも感じた。ベン・スティラーがアホモデル(やショービジネス)に向ける眼差しと、主人公が女性たちに向ける眼差しは、一緒のものであると思う。愛、だ。
ちなみに女社長の娘である咲良(漢字に自信がない)は、そうとう私好みの女の子だ。やべー私男だったらマジで惚れてるよ!