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このちょっとベン・シャーンあるいは山藤章二を思わせるカバーイラストが、ちょっと時代を感じさせて、奥田英朗の小説の現在を予感させる。懐かしい東京!
2004/12/07 21:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《名古屋から上京して予備校に通い、大学受験には成功したものの、中退。コピーライターの道を歩む田村久雄の三十歳までの軌跡》
三十歳の男が活躍する青春小説と書くと異論もあるだろうが、現代においては、犯罪を別にすれば三十歳は、男が本当の大人になる年齢かもしれない。ヒキタクニオの『鳶がクルリと』にも、主人公の女性がそう呟くシーンがあるけれど、奥田のこの小説からも、その感がヒシヒシと伝わってくる。悪質犯罪の低年齢化と、本当の成人になることの遅れ、ついこの前まではこんなことに悩みもしなかったのに。
大学受験に失敗して、一人東京に住むことを決めた名古屋生まれの田村久雄。母親と新幹線に乗って向かう東京、それは1978年のことだった。
初めて住む北池袋のひなびた様子に安心する二人の様子や、同じ上京組の友人を訪ねていくうちに知る東京の巨大さに圧倒されるあたり、渋谷でレストランに入ることも出来ず、名古屋の喫茶店であれば食事も出来るのにと、今朝出てきたばかりの故郷を思う久雄には、東京で生まれ育った私も共感を覚えずにはいられない。
マクドナルドのハンバーガーを抱えたまま水道橋に向かい、キャンディーズのさよならコンサートの人ごみに紛れる18歳の生年は、大学の演劇部で密かに憧れる先輩に口を利くことも出来ずに日々を送る。部員たちと飲み暮らす毎日。女子部員の一人の心を傷つけたことを皆に非難され、東京中を彷徨う青年の悲喜劇。若き日の唐十郎やつかこうへい、野田秀樹の姿。そんな大学に見切りをつけて飛び込んだコピーライターの生活。
それを5年ごとのスパンを置きながら時代を上手く取り入れ描いていく。日本がバブルに出会うまでの元気で向こう見ずで、幸せだった日々。ただ懐かしむのではなく、あったものとして淡々と描く。
カバーはノグチユミコ、ベン・シャーンあるいは山藤章二風とでもいったらいいのか、味のある画が本を飾る。『邪魔』などでミステリー作家として注目を浴びる作家だが、個人的には推理などは切って捨て、こういった普通の小説で押し通して欲しいし、それが伊良部のシリーズになって開花したというべきだろう。方向は違うけれど、東京好きの人には逃せない本。群ようこの『ヒガシくんのタタカイ』と一緒に読めば、ライト感覚な東京という都市の青春が見事に甦る。
世相を映す
2017/10/21 06:16
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
1980年代バブル経済の異様な熱気が伝わってきました。夢を見ながら実現できない、若者の葛藤が良かったです。