紙の本
アイデア勝ち。高級なエンタテインメント。
2004/08/08 21:03
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投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイデア勝ち──「理科系の小説」と言われる森の出世作を文科系の読者である僕が読んでまとめるとこうなる。文章は別に巧くない。人物の造形は非常に人工的で類型的。この手の小説には文章の巧さや人物造形の妙を求めない読者が多いだろう(いや、この程度のものでも褒められたりする)から、一般の読者に対してはそれで良いだろう。でも、僕のような読者にも途中で読むのを止めさせないのは、それ以外の要素があるから──それは、小説の骨組みとなる部分=構成=アイデアの勝利である。
この構成が理科系ならではの、コンピュータ言語や16進数やバーチャル・リアリティやらが入り乱れた、とても文科系には思いつかない、けれど読めば概略は理解できて「ふーん」と思ってしまう世界である(勿論、これらのことがさっぱり理解できない文科系もいるだろう。そういう人には残念ながらお薦めできない)。
「解説」で瀬名秀明が「このシリーズの主人公・犀川が漏らす言葉に目から鱗が落ちた」と書いているが、僕は全然そうではなかった。いや、犀川の言葉が的外れだと言うのではない。あまりにも当然のことを言っているとしか思えず、瀬名が感動している何箇所かの台詞を何も感じずに通り過ぎてしまったのである。僕は変な文科系なのだろうか?
瀬名はさらに「この小説は通常の小説的な『お約束』に縛られることがない」と書いている。僕が一番気に入らないのはその点である。「お約束」から離れすぎてしまうと、それは単なるそらぞらしい読み物となる。僕は変な読者なのだろうか?
ま、これは筋を読む小説である(だからあらすじについては何も書かない)。行間を読む小説ではない。それはエンタテインメントというジャンルである。そして、これは高級なエンタテインメントである。
紙の本
印象的トリック
2017/12/02 18:01
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
トリックの素晴らしさは特筆ものです!ただ、全てが大仰過ぎる気がしました。あの人に関してはここまでしなくてもという感じです。
電子書籍
森博嗣さんのはこれが初めて読んだ本です
2016/12/09 09:49
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投稿者:みるちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
友人に借りて読んだのだけれどもタイトルがすごく面白いなと思いました。前半はかなり衝撃的な内容でした。後の方はそうでもないかなと思った。
紙の本
「すべてがFになる」ってどういうこと?と思う人はぜひ。
2002/06/14 22:34
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投稿者:ふーみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに惹かれました。森博嗣はタイトルをつけるのがうまい。「すべてがFになる」ってどういうこと??
それはネタバレになるので書けません。裏表紙にある程度のことまで書くと、孤島のハイテク研究所で隔離された生活を送る天才工学博士の女性の部屋から、ウェディングドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れて、偶然島を訪れていた大学助教授犀川とその生徒西之園萌絵がその謎にとりくむ、というもの。とりあえず、シリーズ中では一番グロかったかも。
犀川と萌絵がコンビを組むシリーズ第一弾です。謎解きよりもこの2人が魅力的で次、次、と読み進めてしまいました。話の中では、西之園萌絵は天才的な頭脳の持ち主ということですが、謎解きの課程を見ているととてもそうは思えない…。
タイトルのセンスもよく、会話にテンポがあり、読んでいてあきません。自分で謎を解こう、と意気込む人以外は、あまり頭を使いたくないときの楽しみにいいかもしれません。
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前評判どおり、満足。トリックも納得のできです。ネットワーク系の描写は、この本が書かれたときのことを考えれば、それほど陳腐とも思えない。登場人物のキャラはいい感じだが、メインの人以外はわりと描写はぞんざいですね。
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孤島のハイテク研究所で隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。 彼女の部屋からウエディングドレスを着せられ、両手両足を切断された死体が現れた。 島を訪れていたN大学助教授の犀川創平と同大学生・西之園萌絵が密室殺人のトリックに挑む。 犀川&萌絵シリーズ第1弾。メフィスト賞受賞作品。
理数系のミステリーというと、一見小難しそうに思えるけれど、そういう概念を消し去るほど面白かった。 実際の初稿完成では第4作目とのことだが、それをシリーズの1作目に持ってきただけあって、内容も充実。 ラストも余韻を残した終わり方で、次ぎ(その後)を期待してまう(笑)
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孤島の密室を舞台にした、ミステリー。両親を殺害した天才少女が15年誰にも会わずっていう時点で、ちょっと無理矢理かねぇって思ってしまった。ついでに、生まれてから一度も言葉をかけられなくて死んでしまう赤ん坊の話を思い出してみたり…(微妙にネタバレ?)
理系ミステリーって言われてる所以は、いやってほどわかりました。確かに、これだけ数字がでるっていうのは斬新だったんだろうね。
でもって、やっぱり萌絵は気に入らんです(苦笑)
が、これだけくさしておいて、面白かったりするから、世の中わかんないよね>おいおい
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衝撃的であるとの前評判が高すぎて、またこれは個人的なのだがシリーズ最初の作品であるって言う気持ちが強くて、ある意味拍子抜けをした。
確かにトリックは大胆で派手だと思った。が、これはもっと鮮やかな形で前例があるような気がする。それよりもこのトリックが衝撃的なのは、人間を単なる存在としか扱っていないからだろう。それを「理系的発想」というのはあまりにも失礼なのだが、もしそれが理系なのだとしたら、犀川教授はとっても人間的であるような気がした。
ヒロインが派手に動く割には地味。ヒーローは他の作品に比べ今ひとつすごみがない。犯人ばかりがかっこいい。残念ながら、今まで読んだ作者の作品の中では一番「?」だった。
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「理系ミステリ」なんて言われてましたね。
俺は森博嗣の文体やらスタイルが好きなのでなく、「いかに動機や背景がメチャクチャでも、理屈でこれ以外の結論がないから犯人はコイツ」的なアプローチが好きでした。
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両親を殺害した為、孤島の研究所に少女時代から隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女と対面を果たした西之園萌絵は、今年のゼミキャンプをその孤島で行うように犀川に勧めた。
キャンプ一日目の夜、萌絵は犀川とともに研究所に訪れる。研究所では、真賀田博士と連絡が取れないというトラブルに見舞われていた。二人は所員らとともに博士の部屋に通じるドア前に立った時、異変が起こった。
勝手に開いたドアからワゴン型のロボットがゆっくりと現れ、それには両手足を切断され、ウェディングドレスを着た死体がのっていた。そして、その死体は誰もが真賀田博士だと言った――。
内容からくるタイトル・犯人・結末・四季のキャラ・・・好みでしたねぇ。
この人を犯人にして欲しい!と言う思い込みで、最初から犯人はコイツと勝手に決め付けてました(笑)。従ってどうやって持ってくるんだろう、ワクワクという感じ(明らかに読書の仕方が変)
でもまぁ、犯人がこの人なのは、推理ものの常套手段ですね。でも当然ながらトリックは判りませんよ。それが判ったのなら会社員辞めて別の職業に転職してますから(笑)
で、これは小説だから成し得た、という部分もある感じですけどね。映像だったらちょっと辛い部分はあるかもな。
犀川と萌絵に思い入れが無い分、四季にかなり傾倒しました。かなり好みですよ。この四季という人物。
とある事実(設定)に対し、誰も判らなかったのか!?と突っ込みを入れたくなるが、四季が天才という役柄の為、納得せざるを得ないという感じですね(笑)
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【すべてがFになる】
奇抜な題名だ。F、F、F。Final?Full?Fuji○○u?(笑)
森博嗣のデビュー作である。俺がS&M(犀川&萌絵)シリーズを読むきっかけになった作品。最初はゲーム版をやったんだけどね。
ついに原作も手にしてしまいました。
ゲーム版で内容は知っているので、最初から最後までシーンが目に浮かぶ。
ゲーム版が非常に忠実に作られていたことに今更ながら感心した。
導入から引き込まれる。天才真賀田四季が現れる。
「数字の中で、7だけが孤独」「BとDも孤独」
「すべてがFになる」
「この世界では、知りたいことは、すぐ目の前で見られる。それがごく自然なことです。」
「死を恐れている人はいません、死に至る生を恐れているのです」
「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?」
一言一言に意味がある。完成された物語。完成された天才。
完成されたトリック。Fの謎が解けたときの興奮。忘れられない。
夏の夜の蒸し暑さを、彼女は懐かしく思っただろうね
彼女は、夏を思い出した。15年前と変わらない星空を見た、虫の声も聞いた・・・
所長のヘリコプターが来るまでの間、何を感じただろう?
あらゆるシーンが思い出される。その描写。天才に惹きつけられている自分。
今までの著者の他作品が霞む。正直、別次元だ。
もうこのシリーズは最終の「有限と微小のパン」しか読まない。
また天才に会うために。それだけのために。
コンピュータの世界を知る方のほうが、楽しく読めると思いますが
万人にも薦められる本書のオススメ度は★★★★★です。
ちなみにゲーム版は別ENDも用意されているし、絵が原作のイメージと
合ってますのでこちらもオススメ★★★★☆です。
ただし
「私には正しい、貴方には正しくない・・・」かもしれない。
「いずれにしても、正しい、なんて概念はその程度のこと」ですからね。。。
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電子書籍で読みました。主人公の女の子があまり好みじゃないけど、ストーリーは面白かった。コンピュータウイルスの解説とかに時代を感じた(笑)
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確実に私の読書傾向にどでっかい影響を与えた一冊。ミステリをモリモリ読むようになった。人ってなんだ?自然ってどういうことだ?私たちにある固定観念は刷り込みみたいなもんで、本当にそれは事実に即しているのか?森ミステリィはそんな疑問を心地よく促進&深化してくれる。読後感は非常にスッキリして後腐れがない。目からウロコが落ちたあとで、見える世界は果たして同じなのだろうか?
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理系は森博嗣、文系は京極夏彦。じゃあ、お前は森博嗣だ。というわけで、先輩からお借りした森博嗣の第一作。俺自身、ミステリーというものあんましを読まないので、久々に読んだわけです。
理系、しかも私が情報系の学生、というわけでタイトルの謎は予想通りというか、読めていたのですが、それで冷めたところ以外はすんなりよめました。科学考察的推理関係もミステリーっぽいトリック以外はだいたい解ってしまった。というより、科学の範囲で攻めるならそこしかないだろと、消去法をとっている内に解けてしまった。まぁ、核心部はさっぱりだったので楽しませてもらったが。
なんだろ、抱いていたミステリーのイメージより、最近の傾向なのかな、登場人物のキャラクターがはっきりしているのが気になった。初めに人物の日常描写から攻めて、ライトノベルから入ったせいもあるだろうが、それでキャラクターの位置づけをはっきりと読み取る事が出来た。あとはそれが均一のまま推理小説に突入していくのだが、森博嗣らしさを示すには必要だったかもしれないが、ちょっと助長に感じたのもあった。解説に人物像について大仰な事がかかれていたが、キャラクターノベル慣れしている者としては気にならなかったのは良い事か悪い事か。
ただ、凄く不可思議だったのが、私のような理系、しかも情報科の人間には全てすんなり理解できたり、会話を全て享受できて楽しませてもらったのだが、それが理解できない人たちには当てつけのように思われて不快にならないのであろうか。国立N大学の工学部の教授さんだけあって、工学系の描写は非常に面白いし、的確である。そこをトリックとする点もあり、私としてはおろそかにも感じたが、著者が同胞の様に思えて面白い。だが、それが解らなければ、外国語で話が進むようなもので眠くならなかっただろうか。
冒頭の天才真賀田四季との会話シーンがあるが、解説はあれを著者の魅力に仕立て上げていたが、どうも私にはあれがおろそかなものに見えて仕方がない。要するに頭がよいか悪いかを見せつけられただけであって、ちょっと思考する余地があればあの程度なら表現できる気がする。と言うよりは、哲学的思考の談義を過去に行った事があるならば、その程度の思想にはたどり着くのではないか。これらが私の全くの思い違いならばよいのではあるが。ここでまた、考える人考えない人などの談義に運べば話が飛びそうなのでここで止める。ただ、森博嗣が頭が良い作家である事は認める。ただ、それを露見するかのような印象を受けてしまう。
とはいうもの、森博嗣にしか書けないであろう、天才真賀田四季の描写は面白いものであり、お嬢様やゼミ学生のコメディなども面白かった。先ほどと反する意見であるように思えるが、私は真賀田四季の喋る内容について否定的なのであり、その喋る描写には好感を持っている。そこまでミステリー臭さを感じなかったのは、やはり魅力的なキャラクターを綴る事を最後まで続けたからであろう。加えて、トリックは理系トリックをのぞけば、トリックらしいトリックは一つしかない様に感じた。
ただ、このテの頭の良い人たちの書く文章は、狐に摘まれた気持ちになる。どうせ読者に��解できないだろうと思って書いているのなら、もう少し導いてほしい。いや、それでは魅力が無くなってしまうな、失敬。
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この作品は10作完結の「S&Mシリーズ」と呼ばれるものの1作目で、独特の文体で新感覚のミステリだと当時(あくまで当時)は思った。というのも、・・・まぁ、いいにくいんだがこの作家の近作は品質の劣化が激しく、要するに面白くなくなったと言っているんだが、時折出す短編でこのシリーズの主役のその後を何度も描いているため、個人的にはこのシリーズの価値がどんどん低くなっていっている気がしてならない。因みにこの作品は本来2作目だったらしいが、派手なシーンが多いのでこちらをデビュー作にまわしたらしい