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電子書籍
風変わりな伊坂幸太郎
2023/01/09 19:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここのところ、一癖も二癖もある殺し屋を描いている伊坂幸太郎であるが、以前はこんな甘めの作品も書いていたのだということを再認識させられる短編である。偶然だけれど偶然でない 優しい気持ちでで描き出された登場人物たちがなんとも心地よい。
電子書籍
本当に時効はないのだろうか
2023/01/09 18:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
卒業以来久しぶりにあった二人の人違いを交えた会話の妙 がこの作品の読みどころである。脳内小人の話は、妙に浮いてしまっているような気がする。会話の中で「恋のヒミツに時効はない」とお互いに言い合うが、去る者は日々に疎し のなか、本当に時効はないのだろうか?
紙の本
男性作家が紡ぐ「恋愛アンソロジー」
2010/10/17 15:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
突如やってきたアンソロジーを読もうキャンペーン(@わたし個人)に乗っかって読んでみた。キャンペーンも終盤に差し掛かって読んだせいか、はたまたそれ以前の問題か、総体的にあまり好みではなかった。
中でも石田衣良の『魔法のボタン』。もともと石田作品との相性は非常に良くない――というか、主人公にイラっとすることが多い――のだけれど、今回もまたその点を再確認することとなった。
『魔法のボタン』の主人公は失恋したばかりの男性、25歳。この男性が「ぼく」視点で物語を薦めていくのだけれど、この「ぼく」の語り方がどうにもこうにも合わない。
例えば、「ケアキの若葉一枚、カフェのテーブルから落とす」という単純な作業も、「ぼく」にかかればこうなる―――
頭上に張り出したケアキの若葉が一枚、アイスラテのグラスの横にある。薄く伸ばした水のような葉を指先でつまんで、したの敷石に落とした。
そして続ける。
なんでもない、もう慣れているという顔で、足を組む。そのまえに瑞々しい若葉を靴底で踏みつけてやった。
わざわざ「アイスラテ」と書く必要がどこにあるのだろうか。「若葉を踏みつけてやる」動作に込めた意図はなんとなくわかるけれども、こういうまどろっこしい書き方をする必要があるのだろうか。こんな風に、細かなところがいちいち鼻につく。たぶん、わたしは石田さんの作風とは根本的に合わない、のだと思う。
しかもこの「ぼく」がまた…わたしには合わない。
ぼくの体重はまえのガールフレンドと別れてからの四日間で、三キロ減少していた。なんとか生き延びた五日目のその日は、被災後初めての土曜日である。
「いや、ケンカをするような元気はない。ここのところ、ほとんどなにもたべていないし、なにを見ても悲しいんだ」
アルコールにはタイムスリップ作用があることをぼくは忘れていた。へたくそな編集をした映画のように、つぎに気付くと閉店の午前四時になっている。
あぁ、もうダメ。このまどろっこしい語りが延々続くのだもの。イライラが募る。
「ぼく」と同じようなタイプの人は現実世界にもいるけれど、わたしはこういう人たちが苦手(というか嫌い)だ。彼らはおそらく、自分が世界でもっとも不幸な人であり可哀そうな人であると思っている。そしてその不幸さ加減について延々と語り続ける。そんな愚痴を聞かされる相手のことを思いやったりはしない。その点を指摘すると、大概の場合「そんな余裕がない」という。だったら「余裕を持てるようになってから愚痴れ!」と思うのだけれど、そんなことを口に出すと余計に面倒なことになるので、言わない。
と、気付けば愚痴になっている。 反省反省。
石田作品と合わないのは合わないのだけれど、ただ、逆に言えばそれだけ石田さんは描写が巧いといことかもしれない、と思う。巧い、下手の問題ではなく、ただ単に好みの問題なんだろう。
悪口(?)ばかりが先行してしまったけれど、もちろん気に入った作品だってある。まず、ハジメマシテの作家さんである中田永一の『百瀬、こっちを向いて』。
これは、ほんとよかった。物語は24歳のノボルが高校時代の先輩・神林先輩と偶然再会するところから始まる。高校時代、神林先輩はノボルの「幼なじみのにいちゃん」の彼女だったひとだ。神林先輩とノボルは喫茶店に入り、高校時代の思い出話を始めるのだが――この思い出話がすごくいいのだ。
切なくって甘酸っぱくって狡猾で――ただ切ないだけでもなく、幸せなだけでもなく、明確な答えがあるようで実はないようで…そのあやふやなぼかし加減がまたいい。他の中田作品がぜひとも読みたくなってしまった。先月末に『百瀬、こっちを向いて』を表題作とした短編集が文庫化されたようなので、近いうちに購入しようと思う。
他に、何冊か読んで「合わない」と判断した本多孝好の『Sidewalk Talk』もよかった。こちらは離婚を決意した男女のお話なのだけれど、リドルストーリーの形をとっているラストがわたしには前向きなものに思えて、読後感があったかかった。
ハジメマシテの中村航が男性作家だということや、「わたる」ではなく「こう」と読むということも知れたし、読む気になれなかった市川拓司作品もちらりと読むことができ、アンソロジーの恩恵に十分、あずかることができたように思う。
ちなみに伊坂幸太郎は「らしい」作品だった。ちなみにわたしもシロクマが好きで、動物園ではシロクマの前で長い時間を過ごしてしまう。そして氷の上に乗れないシロクマをテレビで見ては、涙する(これは読んだ人にしかわからないお話)。
『I LOVE YOU』収録作品
・伊坂幸太郎『透明ポーラーベア』
・石田 衣良『魔法のボタン』
・市川 拓司『卒業写真』
・中田 永一『百瀬、こっちを向いて』
・中村 航 『突き抜けろ』
・本田 孝好『Sidewalk Talk』