紙の本
カップルの温泉体験記
2010/03/12 22:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
初恋温泉 吉田修一 集英社文庫
5つの短編です。いずれもさまざまな形態のカップルが主人公となっています。ただ、「ためらいの湯」と「風来温泉」は作者の意図がわかず、読み終えても何のことかさっぱりわかりませんでした。
「初恋温泉」落ち着いた文章です。温泉に行きたくなりました。同時期に「ゲゲゲの女房」武良布枝(むらぬのえ)著を読んでいました。ふたつの本の内容を重ねて楽しみました。ゲゲゲの奥さんは、夫婦の片方だけのしあわせはだめよと口を尖(とが)らせているのです。
「白雪温泉」読み始めてすぐに、この場面に記憶ありとひらめきました。やはり青森空港でした。わたしは去年の11月に青森に行ってきました。八甲田山の頂上は音のない世界でした。精霊たちの棲(す)む空間でした。それは、この短編の秘密を解き明かすヒントです。わたしは、読んでいる途中で、不思議な雰囲気をかもしだしているカップルの秘密がわかりました。ひとにやさしくしてもらったことがない人は、人にやさしくできないとか、こどものころ虐待やいじめを受けた人は、人間不信になって、おとなになってから接客業は向かないだろうとか、そんな余計なことまで考えました。
「純情温泉」この短編は最高に愉快です。高校生カップルのユーモラスな交際の様子です。健治君ののんきさがいい。健治君の父親の言動もいい。現実は、ロマンチックなものではなく、「新婚さんいらっしゃい」みたいに、面白おかしいものなのです。
紙の本
色とりどりのおもい
2018/12/28 14:05
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
5つの物語に描かれたそれぞれの人物の事情とおもいが色とりどりの糸のように絡み合い変化していく。
まぶしい程の熱い思い、たそがれ時に佇むひと影のように出した掌からすり抜けてしまいそうなおもい。
かすかに触れ合う視線が確かな思いへと結ばれ、互いを求めあう視線の僅かなズレがこころの先で遥かな隔たりへとつながる。
何気ない、一生懸命な、大切な時の流れの中で・・ふと落ち込む幸せそして哀しみ。
物語に色と温度を感じられる作品でした。
それぞれに楽しめたのだけれど、1話だけ何か消化不良な物足りなさを感じました。
電子書籍
心温まる5編
2018/05/01 05:17
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドロドロの不倫に陥る男女から初々しい高校生のカップルまで、バリエーション豊富で面白かったです。実在する温泉地を舞台にした遊び心も味わい深いです。
紙の本
読んだら登場する温泉に行きたくなりました
2016/05/13 20:27
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り温泉を舞台にした短編集です。
実在する5軒の旅館やホテルが出てきます。
突然妻から離婚を切り出された夫婦
お互いがなぜ一緒にいるのかわかりだしたカップル
男女共に申し訳なさを感じながらも続く不倫のカップル
旅行の当日に妻にドタキャンされて一人で宿泊することに
なった男と一人旅する女
初めて二人で泊まりがけの旅行をする高校生のカップル
どの物語も思わず訪れたくなるような温泉の描写の中で
納得したり、
憧れたり、
痛かったり、
微笑ましかったり
とても情緒的豊かで素敵な物語が綴られていました。
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2009年5月21日購入。読書期間2009年5月26日〜27日。
ページをめくるたびになにかが胸に刺さった。
温泉をテーマにした短編集。どの話もなんだか自分のことのように感じられた。似たような状況、心境で共感を感じるものもあるが、自分がこれまで経験したことないような事もあった。
それでも自分のように感じられるのは文章の巧さなんだろうと思う。とるに足らないような些細な動きや周囲の様子が描写されており、訪れたことのない旅館や周りの景色がありありと浮かび、「書く」より「描く」が適しているのではないか。
「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとは限らない。」
衝撃を受けた。
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◆あらすじ◆
初恋の女性と結婚した男。
がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出される。
幸せにするために頑張ってきたのに、なぜ───
表題作ほか、不倫を重ねる元同級生や、親に内緒で初めて外泊する高校生カップルなど、温泉を訪れる五組の男女の心情を細やかにすくいあげる。
日常を離れた場所で気づく、本当の気持ち。
切なく、あたたかく、ほろ苦い恋愛小説集。
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うーん、なんとも…
ただ、純情温泉の真希ちゃんのこの言葉はすごいなあ
「浮気する男も馬鹿だけど、浮気される女も嫌。
浮気されてこんなに苦しむくらい好きなんだったら、
もっと相手のこと、いとおしく思っていられると思うし、
もしそうしてるのに、それでも浮気するような男なら、
きっと浮気されても、こんなに苦しむことないんだと思う」
高校生ですよ、真希ちゃん…
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吉田修一らしい読んだ後の後味の悪さみたいなものがあまりない短編集。
「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとは限らない。」
もっともだと思う。
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いい年して、題名に惹かれ・・フラフラっと購入(笑)
まあ、感動というにはほど遠いが、なかなか面白い作品だった。
人は「温泉」に行くときって、何を求めていくのだろうか。
ほぼそれは「非日常」であり「癒し」であることは間違いない。
ゆっくりと熱い湯に浸かり、頭をぼーっとさせる。
何を考えるわけではなく、単に熱い湯の中でじっとするわけだ。
単純に言えばそれだけのことなのに、そこにはわざわざ遠くの湯に浸かりに行く理由があるのだ。
自分が温泉に行き、そこで出会った人たち・・。
これまで旅行に行ったときにも、湯船の中でほんの一瞬だけでもすれ違う人はたくさんいた。
そのときは他人のことなんて全く興味は無いが、本当は色々な隠された事情がそこにはあるのだろう。
何故温泉に来たのか・・誰と来たのか・・
そんな様々な事情が「温泉」を舞台に展開していく小説。
温泉かぁ・・この小説を読むと、なにやら漂泊の温泉の旅に出るのもいいなんて思った。
しかし元来、貧乏性のオレには無理だろうな。
ゆっくり温泉巡りの旅なんてするのは・・会社をリタイヤしてからかもしれないなあ・・^_^;
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吉田修一さんの小説は、リアルすぎる独特な世界がありますが、これは好きな部類に入る作品でした。高校生カップルの“純情温泉”がほんわかしていて良い感じでした。ただ他の作品にもありますが、衝撃的な場面で終わり、あとは想像に任せますみたいな展開もあり、また色々考えました。それに不倫の話しは、やはり苦手です。あの人を思い出して悲しくなります。
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5篇とも含みを持たせた終わり方をするので、
起承転結のしっかりした話を好む私にはちょっとスッキリしない作品だった。
1篇1篇に面白味を感じるわけではないけれど、最後に「純情温泉」を持ってきたことで、
気持ちの変化の残酷さを感じさせられたと思う。
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空港で見つけ、
さらりと読めそうだったので購入。
短篇集で大半が読み手にその後の展開を想像を任せる、
そんな終わり方です。
最後の「純情温泉」は分かり易くて、
しかもとってもカワイイ!
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「哀しみの女」を読んだ際に感想で芸術が破壊であるならば、日々の暮らしは安定だと書いたが、この小説はまさに日々の暮らしに密着している。
温泉宿という非日常な場所に来て改めて、日常を想う。そんな作品だ。
短編集だが、私は特に最後の「純愛温泉」という物語が好きだった。若い決心とは瑞々しく力強い。その時にはまるでどんな強風にも嵐にも揺るがないのではないかと思わせるような力がある。肉体も精神も成長を終えていないのに、未完成のままで誓う頼りない約束がなぜあんなに折れそうにない強さを見せるのか。
それはきっとたくさんの世界を見ていないからだ、と言ってしまえばそれまでで、そんな寂しい答えを出すのはきっと大人に決まってる。
私はどんなに成長をしても、こういう力強い決心を相手に言えるような人間になりたい。だけどそう出来ないのは努力が足りないのと、心への刻み方が甘いからだと反省する。
歳を重ねることが劣化だと私は思いたくない。すり減っているのだと思いたくない。厚みを増しているものだと信じたい。大人になるにつれて容積が増えてたくさんの水を入れることが出来るようになるのだと思いたい。
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吉田修一が書いたものなら苦手な恋愛モノもスラスラ読める。
しかも楽しめる。なんでだろ?
きっと文学にも合う合わないがあるんだろうね。
ただ、吉田修一=面白い っていう意識が無意識のうちに出来上がってるん
じゃないかって少し心配。
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初恋の女性と結婚した男。がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出される。幸せにするために頑張ってきたのに、なぜ―表題作ほか、不倫を重ねる元同級生や、親に内緒で初めて外泊する高校生カップルなど、温泉を訪れる五組の男女の心情を細やかにすくいあげる。日常を離れた場所で気づく、本当の気持ち。切なく、あたたかく、ほろ苦い恋愛小説集。
《ブックデータベース より》
どれも今ひとつ・・・
ストーリーの終わりに未消化感を感じます。
文章はキレイだし、読みやすいけれど、
「ひと捻り」ほしいかな。
《2009年10月9日 読了》