紙の本
二重スリット実験の映像に感動した。そして,あなたもそうだといいなと思ってる。
2008/08/26 16:41
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
ケネス・W. フォードの「不思議な量子」に「電子は原子内の3次元空間に波として広がっている」という話が出てくる。「ああそうですか」と納得しちゃうヒトには簡単なのだが,これが以下のような実験をして導き出されたと聞けばどうだろう。
電子銃から一度に一個の電子を放出する。その行く先には放出された電子を受け止める検出システムがあるのだが,両者の間には壁が一枚設けられており,その壁には二つ,縦長のスリットが開いている……。たとえばこれをピッチャーとキャッチャー,それにマウンドとホームベースの中間に置かれた壁とすれば,キャッチャーが受け止めたボールは必ずどちらかのスリットをくぐり抜けて来たことになる。常識ですよね?
ところがこれが電子では常識ではなくなる。この実験器具を実際に作り一個ずつ電子を何個も検出システムにぶつけてみると,そこには典型的な干渉波のパタンが現れるのだ。意味解りませんか? つまり一個の電子は二つのスリットの両方を同時に通り抜けるのだ。そして互いに干渉し,また一個の電子として検出システムに到達する。おお,大リーグボール4号ですな,あれ5号かな?
本書は,この実験(二重スリット実験という)をはじめとして,科学雑誌「フィジックス・ワールド」の読者が選んだ「美しい科学実験トップ10」を解説したものだ。エラトステネスによる地球外周の計算や,ガリレオが行ったというピサの斜塔から重さの違う球を落とす実験,ニュートンの太陽光分解,地球の自転を証明するフーコーの振り子……。
果たして科学実験を「美しい」と呼べるのか,という哲学的な疑問に逐次答えつつ,著者は「科学する」ことの楽しさを余すところなく伝えている。もし時間がおありなら是非,
「Electron Waves Unveil The Microcosmos」にあるムービーをご覧あれ。これは日立製作所基礎研究所の外村彰さんがロンドンの王立研究所で1994年にやった講演のフィルムで,二重スリット実験で電子が干渉波を描くさまをその目で見ることができる。オレはこれを美しいと思った,正直言って感動した。そして,あなたもそうだといいなと思ってる。
電子書籍
特にエラトステネスが
2022/03/17 11:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
自然科学の世界で言う「美しい」という形容詞を、豊富な具体例で持って明らかにした好著である。著者は「美しい」を 基本的、効率的、決定的 と端的 明快に定義づけているが、本書を読めばその様な定義に照らし合わせなくても「美しい」という印象を受けることができる。特にエラトステネスの話が印象的である。地球の大きさを測る という行為 精度以上に、2000年前に「科学的思考」を行う という行為に感服した。
紙の本
「美しい化学実験」の実例集
2007/03/25 16:39
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「美しい化学実験」とは何か?。著者はその条件として、深さ(基本的であること)、経済性(効率的であること)、決定的であること、の三つを挙げている。その代表としてこの本にとりあげられている、10の物理学の実験は感動的ですばらしい。特に、紀元前三世紀、ギリシャのエラトステネスが日時計の針の影を使って、地球の円周の長さを、現在の測定値にたいし数%の誤差で測定した第一章と、油滴を使って電子の電荷を測定した第8章のミリカンの実験が、私には印象的であった。
理科離れや数学離れが問題になっている現状では、この本を読んでも科学実験の美しさというものは、理解できない人が多いかもしれない。だからこそ、高校生や教養課程の大学生に読んでもらいたい。科学者たちの失敗と挫折と、試行錯誤の工夫でそれを乗り越え、後になれば誰でも納得できる明瞭な方法で、決定的な結果を示す、その過程を追体験すれば、何故これらの実験が美しいのかが、解ってこよう。10のうち1つ2つは、美しい、感動的だ、と感じる実験があるであろう。
投稿元:
レビューを見る
PhysicsWorld誌の企画からはじまった「10大実験」をまとめた本。実験自体はとても有名だけれど、そこにある人間ドラマの部分は実はあまり紹介されないので、読んでいて新鮮。図版もきれいで(でももっと多いともっとうれしかった)よいと思います。
投稿元:
レビューを見る
我が瓢箪頭では「美しい」の理解度は一つ星(★)レベル。しかし、ガリレオのピサの斜塔伝説、ニュートンのプリズム実験、キャヴェンディッシュの地球の重さの測定、フーコーの地球の自転を見る実験には、大いに心が躍った。
投稿元:
レビューを見る
有名な科学法則の実験方法、エピソードをまとめた本。
シンプルなモデルづくりはいつでもどこでも有効だ。科学と哲学と歴史をもっと勉強したくなるよ。
投稿元:
レビューを見る
物理学誌の読者投票で選ばれた10個の実験がいきいきと説明されているそうだ。
エラトステネスの地球の外周の長さを求める実験
ガリレオがピサの斜塔で落下の法則を確認した実験
ガリレオが慣性の法則を確認した実験
ニュートンがプリズムで確認した光の分散の実験
キャヴェンディッシュの万有引力定数を求める実験
ヤングの光の干渉に関する実験
フーコーの振り子による地球自転を確認する実験
ミリカンが電気素量を求めた油滴実験
ラザフォードが原子核を発見したα線の散乱実験
ファインマンの量子力学に関する2重スリットの思考実験
投稿元:
レビューを見る
実験するのが退屈で苦痛になった全ての理系の学生に、実験の深さを思い出させてくれるであろう本。
科学を見るのには論理性と正当性、他方には政治や利権、金という側面がある。そして『美しさ』を味わうならば、今までにはあまり注目されなかった人の心を揺さぶる側面があるという。これを読んで、科学万能主義だった高校生の頃を思い出した。
科学における『美』とは何なのか?芸術や音楽と同じように、科学にも『美』は存在するのか?
この世界の全てが人間の目に露になる日は永遠に来ず、人は歴史的、文化的に受け継がれてきた仮説を通して世界を見る。そうした仮設はこの世界の一部を露にもすれば隠しもする。だがその一方で、人は美しいといえるものに出会い、その美が混乱と無知の中から我々を連れ出してくれる。美は絶えず上方に我々を導く段階のようなものだ。段階と推移とは、常に我々を一箇所から別の場所に移動させる、この世界における人間の居場所は常に一つに固定されているのではなく、移り変わるものなのだ。そして自らを上昇させるとき、我々は自分と世界との関係を一層緊密にし、そうすることで一層人間的になる。それゆえ科学実験の美しさを理解する力は、美それ自体がもつ、より根源的な意味に改めてきづかせてくれる。
投稿元:
レビューを見る
科学史にその名を残す名実験の数々。
シンプルな美しさであれ、精密な美しさであれ、これらの実験はなにかしらの「美しさ」を持っている。
世にも美しい科学実験たち。
名実験はある日突然、天から降ってはこない。
それは、たゆまぬ努力、豊かな発想力、生真面目さ、忍耐、・・・そうした、科学者の性質と日常とから生まれたにちがいなく・・・
彼らの(とても超人的なあるいはとても変人的な)日常を知ることもこの本の楽しみ方のひとつ。
投稿元:
レビューを見る
著者が2002年、国際的な科学雑誌『フィジックス・ワールド』誌上で読者から「一番美しいと思う実験」を募り、最も多く名が挙げられた10の科学実験を紹介している(ちなみに全体では300を越える実験が挙げられたとのこと)。
ギリシャのエラトステネスが紀元前三世紀に行った「地球の外周の長さの測定」から、20世紀の観察技術によって可能になった「1個の電子の量子干渉」まで、年代順に紹介されている。
単に実験の内容を紹介するだけではなく、それを行った人物、時代背景、当時の学問を取り巻く状況などがドラマチックに語られており、読み物としても十分に面白い。
そもそも科学実験にとって「美しい」とはどういうことなのか。これは本書全体を通じて繰り返し問われるテーマだ。著者は実験が美しいと見なされる条件をいくつか提示しているが、科学の価値観は合理性のこそあると信じる人々を説得できるほど、美は定義可能な概念であろうか。
しかし少なくとも私は、ある種の科学実験に美しさを感じることになんら疑問がない。最後に紹介されている「1個の電子による二重スリット実験」は、抜きん出て多くの読者が推薦し、訳者がその写真を見て涙を流したと語っているように、私も震えるほど衝撃的な実験だと思う。博物館でフーコーの振り子を見かけたら、足を止めずにはいられないだろう。
実験に美しさは間違いなく存在するだろう。しかしそれが美しいことを証明するのは、実験そのものを説明することよりずっと難しい。可能な方法があるとすれば、実際に見せること以外にない。
投稿元:
レビューを見る
科学史上美しい実験のアンケートをとり、それを元に著者が選んだ10の科学実験
この特集を組んだのが物理系ジャーナルだったのと、おそらく歴史の流れ的に、物理実験が多いです。
重力や光の干渉とか・・・
一番印象的だったのは、地球が自転している事を示した「フーコーの振り子」
地球が自転しているなら、振り子は時間経過とともに少しずつその軌跡がずれていく、というもの。
振り子の先に尖った芯のような物を付け、振り子を揺らし、下に砂を敷いて軌跡を見ると確かにずれていく。
それを見た瞬間に、動いている振り子のずれから、地球の自転まで考えが及ぶのだろうか・・・
実際にその実験を是非見てみたい。
有名なものからあまり聞き慣れないものまで様々(といっても10個だけど)
昔の実験については特に、科学史上重大な発見をした人って偶然ある現象を見たり、ひらめいたりして新たな原理を発見する、というイメージがあったけど決してそうじゃないと分かった。
それはあくまで「なぜ」の段階であり、そこからつき詰めていくための過程、それを証明するための方法。
そういった事をクリアできた人だけが新たな発見をしている。
今は生物系の発展が騒がれているが、生物系の実験ってインパクトはあるけど美しさはなぁ・・・
あ、でも、美しさ、っていう言葉の定義とそれを科学実験とどう繋げるか、というのはそれだけで一つの問題なんですね〜
その事については本書の章間のコラムを参照してください!
投稿元:
レビューを見る
移り変わる刹那
世界を測る
球を落とす
アルファ実験
決定実験
地球の重さを量る
光という波
地球の自転を見る
電子を見る
わかりはじめることの美しさ
唯一の謎
投稿元:
レビューを見る
『美しい実験』とは、
1.基本的であること
2.
3.決定的であること
地球の外周の長さの測定
フーコーの振り子
ラザフォードによる原子核の発見
投稿元:
レビューを見る
科学とは美しいモノである
宗教めいた言及ととられるかもしれないが、
自然現象を細分化し、詳細を覗き見ることができたとして
それが美しくないわけがないということは容易に想像できる。
神がムダをつくるはずがないという考えを前提とすれば。
もし、不均整なものがあるとすれば、
もっと考えろ。ということだと思う。
投稿元:
レビューを見る
サイモン・シンなど訳してる
青木さんの訳書。
だから登録しておいた。
ブクログでもレビュー数があり、
やっぱり人気なんだなぁ。