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紙の本
ライトノベル的設定と発想の「走れメロス」
2010/05/16 23:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
このタイトルに「挿絵:森沢晴行」で、この表紙を目にしたら『追憶』から『恋歌』に連なる『飛空士』の世界観にバトルあり、メカも出るかな?みたいな作風を期待することだろう。これは半分アタリで半分ハズレである。もちろん良い意味で。舞台は空、敵も空、バトルあり、メカも少しあり、異能的要素にRPG的要素もある。ここまでは「アタリ」だが、恋する乙女的なラヴはなし。その代わり、物凄い偏愛を小学生の姪っ子【在紗】ただ1人に向けるヒロイン【駆真(カルマ)】の振る舞いが著しく痛快に「ハズレ」る物語である。冒頭、所属する蒼穹園騎士団での駆真を端的に示す一文から始まるが、こうした冷静沈着な鉄仮面とは異なる、在紗の前限定の変わり様、そのギャップは凄まじく、口絵はもとよりP.25やP.85の挿絵でも確認できて笑える。しかも、駆真は正義の味方でも何でもなく、途中で訪れたいろいろな場所や様々な状況にあっても、ヒロインにあるまじき言動で登場人物だけでなく読み手までも愉快痛快に裏切ってくれるのである。常識に対して否定も反抗もせず、ただ在紗のためだけに超然と無視していく固定観念とのズレが天晴れに見えてくるのは、これが唯我独尊の自己中に見えながらも、その実が猛烈に「在紗中」だからであろう。そして、そんな駆真が在紗のために駆け付ける、傍から見ると「何もそこまで」という意気込みで駆け付けようとするのが本作の骨子である。最初に目的を明示し、そこへ一直線に向かいたいのに邪魔が入って上手くいかないドキドキを感じながら、駆真と一緒にゴールを目指すスタイルは、その想いの種類こそ異なるものの、まさに『走れメロス』であり、所々の紆余曲折に今後の行方も含めて結末までの道程を楽しむ作品と言える。
紙の本
様々な世界観がカオスに混じりあう
2010/05/30 18:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
空獣が高空を支配する世界。彼らがもたらす被害を防ぎ、彼らを資源として利用するため、蒼穹園騎士団は空獣を狩る。鷹崎駆真は17歳の女性でありながら、近接戦闘で圧倒的な実力を誇る騎士の一人だ。そんな彼女が何よりも尊重するもの、それは国でも騎士の誇りでもなく、ただ一人の姪、在紗だ。
解説でやたらとギャップを強調しているのでもっと堅い部分があるのかなと思ったけれど、ほとんど初めからテンション高くストーリーが繰り広げられる。
在紗のシーンと駆真のシーンが交互に繰り返されながら、互いの出来事が微妙にリンクする。これが偶然でなければ、どちらかには世界にとって重要な人物がいることになるんだけどね。
様々な世界観がカオスに混じりあうので、次の展開に向けての実験的手法という見方もできるかもしれない。
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