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紙の本
努力する漫画家
2009/07/22 08:08
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「漫画の神様」手塚治虫についてはすでに多くのことが語られてきました。本書の著者である、手塚治虫の長男、手塚眞氏もすでに何冊かの手塚治虫についての本を書いています。
それでも、やはり手塚治虫がなしとげてきたこと、あるいは手塚の考えていたことについて、尽きることはありません。手塚治虫の創造の秘密を垣間見たいと思います。
眞氏は手塚の生涯を「多くの挑戦に満ちた物語」と表現しています。そんな視点で、手塚治虫をみることもまた、重要だと思います。
手塚治虫はよく天才だといわれます。その作品数は何千にものぼり、同時に数多くの連載を抱え、しかもそのジャンルは多岐にわたります。また、アニメーションにも積極的にかかわり、今日の日本のアニメ文化の基礎を作り出したのも手塚です。
ですから、読者はあたかも手塚がその初期の頃から類まれな才能を生かして世に出たと思いがちです。あるいは、その漫画人生は順風満帆とみられます。
しかし、そのデビューについて、眞氏は「いくつかの偶然」があったと書いています。
新聞社の社長に自らを売り込む手紙を出す手塚。家の隣に住む女性の推薦でデビューする手塚。別の用事で出向いた出版社でたまたま採用される手塚。そんな手塚を「相当アクティブに行動しない限り、こういう幸運にめぐり合うことはなかったでしょう。父はそれだけ一所懸命」(34頁)だったと評しています。
それはけっして天才の姿ではありません。ごくありきたりの努力する青年の姿です。ただ一所懸命努力したから、手塚は認められていくのです。
あるいは手塚と劇画との対比にしてもそうです。
手塚は劇画に対してかなり意識的に行動しています。しかし、そのことに関係なく、「作家ならではの常に実験し、新しいことに挑戦し続けていくという姿勢があった」(155頁)と、眞氏は評価しています。
私たちは手塚治虫の漫画からいまなお多くのメッセージを受け取ります。
もしかすると、それは天才からのものではなく、「努力する」漫画家からの、生きる知恵のようなものかもしれないということが、本書を読めば理解できます。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でご覧いただけます。
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