私利私欲でのみ動く銘探偵、メルカトル鮎の事件簿!
2011/12/30 13:11
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、メルカトル鮎という名探偵が出くわした事件を綴った短編集である。
ワトソン役は推理小説家の美袋三条。
彼が本書のストーリーテラーを担っている。
が、名前から推察できるように、
メルカトル鮎は素敵な探偵ではない。
シルクハットとタキシードに身を包み、
自らを「銘」探偵を呼ぶメルカトル。
金が大好きで頭の中ではいつも算盤をはじき、
場合によっては取引(恐喝に近い)もいとわない。
そうやって作った表に出せないコネクションをフル活用し、
興味のある事件にしか首を突っ込まない。
弱きを助けるわけでもなく、
強きをくじくわけでもない。
全ては金と気分の沙汰次第。
なんて人間らしいんだ(笑)。
正直に言おう、わたしはメル(メルカトル鮎)が大好きだ。
しかし、こう注釈が付く。
ただし、実害がない場合に限る。
こんな私利私欲のためだけに生きている人間
(しかも並はずれた推理力と頭脳を標準装備)、
周りにいたら迷惑極まりない。
その証拠に、ワトソン役の美袋はいつも
メルに殺意を抱いている。
美袋くん、君の気持は想像に難くないよ。
いつか本当にメルを殺してしまうのではないかと
本気で心配してしまうほど、大変な目に遭っている美袋。
でも、そのバランスが笑える。
だって、他人事なのだもの。
メルは私利私欲のために動くので、
場合によっては事件を解決しないときもある。
なかったことにしてしまうときだってある。
なので、すっきりとした答えを求めるミステリ読みは
読むべきではない。
また、メルのキャラが受け入れられないひとも
手に取らない方がよいだろう。
何が言いたいかというと、
読む人を非常に選ぶ作品である、ということ。
ハマればハマるのだろうけどなぁ。
読みやすいのか?
2024/02/27 17:50
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投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の入門として薦められているのをみたことがあるが、シンプルに『翼ある闇』から読んでほしい(『翼ある闇』もミステリを読み慣れた人の方が楽しめると思うので難しいところである)。「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」は評判通り素晴らしい。
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ノベルス版で読んだけど表紙の白タキシードにつられて購入。
相変わらずメルのすがすがしいほどの鬼畜っぷりに笑ってしまう。
メルは本当に人間として最低だけど何故か憎めないところがある。
しかし絶対係わり合いにはなりたくない人物です。
後書きで「翼ある闇」のネタバレが含まれるので未読の方はご注意。
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推理作家の美袋三条は、知人の別荘で出会った佑美子に刹那的に恋をする。しかし彼女は間もなく死体で発見され、美袋が第一容疑者とされてしまった!事件に巻き込まれやすい美袋と、「解決できない事件など存在しない」と豪語する魔性の銘探偵・メルカトル鮎が挑む巧緻な謎の数々。脱出不能な密室殺人から、関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪まで――奇才が放つ、衝撃本格推理集。
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講談社版も持っていますが
ファンなので買います。
というか、
再び出てくれて、よかったです。
1998本格ミステリベスト10
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メルカトル鮎シリーズ、短編集。マーヤらしく若干無茶な設定もチラホラあるが、小気味良く読了。他のメルカトルシリーズを知らなくても楽しく読めるかと
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この探偵、外道である。
だけど憎めないんだよなー。近くにいたら嫌だけど。
証拠は捏造するわ、楽しいからという理由で真実を明るみにしないわ、ほんとめっちゃくちゃなんだけど、それもこれも「メルだからしゃーないな…」って思ってしまう。
それにしても、心霊物の小説でもないのにトリックでも幻想でもなく、普通に幽霊が出てくるお話っていうのもなかなか見ないなw
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表紙のために買うべきか…。買ったら作者に印税も入るしなぁ…とずっと迷いっぱなし。でも他の出版社から出てた文庫本も新書本も持ってるんだよね…。
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メルカトル鮎シリーズの短編集!
面白かったです。しかし、まぁ、ワトスン役が探偵に殺意を抱くのはあんまりない気がする。
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メルカトルが自分を「短編向きの探偵」と評すように、この短さが似合うように感じました。
論理的に謎が解明される気持ちのいい解決編だけで終わらず、じわりと滲むような毒気がどの話にも含まれていてメルカトル鮎の悪徳探偵ぶりに酔えます。
メルカトルが小説を書きそれを読んで美袋が犯人当てをする「ノスタルジア」が個人的には気に入りました。
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そうくるか・・・、と思うことが多く、でも、推理そのものは面白く読みました。
メルカトルという人の性格やらそのあたりはともかく、美袋のダメそうなキャラというのがまたいい味・・・だけれども、私は少し苛々としつつ・・・。
解説を読んで、翼ある闇を読みたいと思いました。
メルカトルのようなキャラだからこそ、最初にその物語がくることが、非常にいいかもしれない! と思います。
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メルカトル鮎、想像以上にえぐい性格をしている。
・遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる
まさかの夢オチ。
しかし、美袋が佑美子を突然好きになった理由は酷いものだ。
・化粧した男の冒険
メルカトルの卑劣さがよくわかる話。
証拠ってそういうものだったか?
・小人閑居為不善(しょうじんかんきょしてふぜんをなす)
メルカトルの暇つぶし。
・水難
メルカトルが心霊探偵、物部太朗と嘯き事件を解決する。
幽霊が相手でも、メルカトルはメルカトルである。
美袋のメルカトル殺人未遂。
・ノスタルジア
メルカトルは推理小説家としても一流だと言わざるを得ない。
よく考えている。そして、不憫な美袋。
・彷徨える美袋
相変わらず、メルカトルの掌で踊る美袋の話。
・シベリア急行西へ
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長編に向かない銘探偵メルカトル。
相変わらずの傍若無人振りに圧倒されます。そして美袋が不憫でならない。
お約束で終わらせないというか著者の意識の高さが窺えます。
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何故だか癖になってしまう摩耶雄嵩。摩耶作品としては比較的読みやすい文体でスラスラ読めた。
トリックもオーソドックスな物が多い。
メルカトルは...実際にこんな人物が周りに居たら、絶対に関わりたくないが、読んでる分には楽しい。
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例によって、好き嫌いがはっきり分かれるであろう…というより、分からない人には理解不能、その一方で「馬鹿にするな!」と思いつつも、何となくやみつきになっていまう人もいる、そういう作品だ。
「解説」でも書かれているように、古典的な、探偵デュパンと「私」(もちろん、『モルグ街の殺人事件』ですね)に端を発し、ホームズとワトソンに継承され、日本で言えば御手洗潔と石岡和巳、京極堂と関口巽etc.のように、エキセントリックな「探偵」と、語り部である「私」というスタイル- メルカトルと美袋- の短編集。
とにかく、氏のメタミステリというか、論理を積み重ねて行って、「なるほど」と思わせかけたところで、「今のは全部無し!」みたいな感じでそれまでの論理を破壊・全部ぶち壊してしまう捻くれぶりというかシニカルぶりには…脱力しながらも何か癖になってしまった。
というか、私自身は、こういった、ややお人よしの「私」がぶっ飛んだ「探偵」に翻弄される形のミステリー自体がなんとも好きなので仕方が無い。(苦笑
というわけで、万人にはお勧めしません。(笑