紙の本
命とは、善悪とは、殺しとは
2011/09/03 20:10
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画『ザ・ワールド・イズ・マイン』の主人公は二人。
「俺は俺を肯定する」「命は平等に価値が無い」と言い放つ、究極のエゴイスト、モン。
その圧倒的暴力性に惚れ込み、最大の協力者となる、トシ。
二人合わせて「トシモン」と呼ばれるようになる、殺人鬼の物語。
漫画自体は、このトシモンという殺人鬼と、ヒグマドンという怪獣の進撃との、二つの脅威に晒される日本を、人々やその心理を、描く作品です。
モンは上に書いた通りの横暴さ、個人の横暴さを通り越した天衣無縫さともいえる個人主義者で、タイトルのような思想性、「世界は自分のモノである」を柱とする人間です。その柱、目的の為に、躊躇なく、差別なく、人を殺します。
トシは「フツーの人間」です。冴えない人生を送っていて、たまたまモンに出会って「しまった」が為に、それまでの自分の道徳性、理性、社会性、願望を隠していたモノを吹き飛ばされ、躊躇いながらも殺人鬼と化していきます。
モンが殺す際に、相手を殺してやろうという殺意はありません。
彼にとって自分以外の人間は「障害」でしかなく、ヒグマドンと同じ様に、ただ自分の進路に居るというだけで殺す理由に成り得ます。そこには他人をどうこうしてやろうという悪意・害意も無ければ、なるべく苦しまないようにという慈悲もありません。在るのはただ暴力のみ。
「善悪」という価値観は、他者が存在して初めて産まれるモノです。モンは法律的に「悪」ではあります。しかし、彼の世界には他者が存在しないのです。一応、相棒としてのトシを認識しては居るのですが、全く彼の言う事など耳に入れようともしません。殺す側・殺す側には何の関係性も無く、ただ行きずりで、殺す。
「モンの殺し」は、全く何の意味も無いのです。
「何となく」とか「腹が立った」という瞬間的な理由付けすらなく。
だから、野生の生物のような恐ろしさがあります。野生生物と違うのは、自分が暴力を振るえるという自覚を持っている事。道具を扱えるという事を知っており、殺した後の結果が食料を得る以外にも在る事を知っているという事。
限りなく野生に近い思考を持った人間、だからモンは怖いのです。でも、客観的悪者ではあるけども、主観的悪者では無い、非常に性質の悪い、悪者なのです。
その点、トシは初めての殺人に涙を流し、吐き気を催しながら、必死で殺し、やがてそれが加速してどんどん殺人者としての風格を表わしていきます。
トシは「一番大事な人の死」によって、真に殺人鬼として目覚めていきます。そう、「フツーの感性」を持っているのなら、タガが外れるのは「大きな喪失によって」であり、「フツーじゃない感性」を持っているのなら「一々そんな事は気にしない」のです。
そんな対称的な二人組の殺人鬼と、大怪獣は「日本」という国に、そして読者にどんなダメージを与えるのか。
ダメージ覚悟で読んで下さい。
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「読んでいて面白く無いと思ったら、もう日本に読むべき漫画はない。」
ウルトラヘヴンに続き、馬場店で爆発的ヒットになるであろうと予想されるであろう一冊です。読後に人生観がかわるでしょう。とにかく店にきたらこれだけでも買わねば!
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帯のコメントの意味の大半をまだ理解できていないけれど、
もしこれにコメントするなら、俺なら偏見なしに読んだらなんて面白い本なんだろうってとこだろうか。一巻ではそうは思わなかったけれど、最後まで読むと大半のキャラがとても面白い。しかし、よく悪役を主人公にしてこんなところまで描けるよなあ。その意味じゃ『時計仕掛けのオレンジ』と並列で置くのは分かるけれど、ずっとこっちのほうが良い意味で倫理的。
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新井英樹の最高傑作。稀代の殺人鬼と大いなる意思(ヒグマドン)との破壊に次ぐ破壊、殺戮に次ぐ殺戮を描いた物語。スケールと残酷さ、時間軸、脇役たちのサイドストーリーの充実ぶりは圧巻。我が蔵書内でも1、2を争う快作。ただし、今回発売になった「真説」での加筆、および新しい結末は納得できかねる。未完といわれた連載時の結末の方が、より考えさせられ想像力を膨らませるものであっただけに残念である(ヤングサンデー版のコミックは絶版)。「真説」の結末は「幽霊の正体見たり」といった感がある。大好きな傑作ゆえの残念さ。評価は星5つだが、まだ読んでいない諸兄はぜひとも古本を漁り、「真説」全五巻ではなく、コミック版全14巻を読破して頂きたい。
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「真説」は買ってないが、普通のコミックスは全巻持ってる。トシモン、マリア、ヒグマドン。みんな生きてる。
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シグルイに続く後輩からのオススメ本…暴力殺戮破壊てんこもり。ラストはちょっと「ええー」な感じ。一気に読むとちょっと体力削がれます。
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日本には神さまがたくさんおりますが、このマンガも神さまです。ここには素晴らしき世界があります。毎年拝んでいます。
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これぞ問題作。本来の人とは何なのか。そして本当の正義は。守るべきは。愛、絶望、憎しみ、希望。
あまりにも多くのことを読者になげかける。そして嫌でもそれに耳を貸してしまうのは、トシ、モン、マリア。登場人物それぞれが他の漫画には出せないほど人間くさいからだろう。こんな作品に出会えてよかった。
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恐ろしいまでのエネルギーを感じる作品。
登場人物それぞれの言葉が、ずしりと胸の奥に突き刺さる。
この作品を読むたびに、死にたくない、死ぬのが怖いと思う。
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良い、というよりは漫画から受けるインパクトのでかさで☆五つ。
クルリ、リップスライム、深作欣二、山本英夫、安部和重など、多くの著名人が絶賛しています。
二人の凶悪殺人犯、熊を大きくしたような怪獣が出てきて人が虫けらのようにガンガン死んでいく話です。あまり人には勧められません。
が、一度読んだらたぶん忘れられない作品になります。
ここから先は帯に寄せらせた言葉の抜粋
「最高&最凶の問題作」
「残酷さに震えてしまう。90年代に生まれたすばらしい文学の一つ」
「ワールド・イズ・マインを知らない子供たちへ。世界の残酷さの裏側を覗いてみろ。世界という文字が透けて見えるような、素敵な場所がある。」
「子の凶悪な神話を読むと、現実のちゃちな暴力衝動も消えてしまうだろう」
「アニメ以上に動いている画。匂いが立ってくる交尾(sex)。テレビでは放映できない力(暴力)『野生の王国』人間バージョン!」
「「火の鳥」「デビルマン」「時計仕掛けのオレンジ」そして「ザ・ワールド・イズ・マイン」。人類を殺したいほど愛したものだけが達しうる善悪の彼岸!」
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インタビューを冒頭に持ってきてくれてよかったです。
準備のない子供が読む事があると思うと怖いです。
テーマは「アカンもんはアカン」て感じかな。
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モンちゃんの極まれる残虐性は逆に透き通っていて美しい。
でも、みんなはモンちゃんにはなれないよ。
最後まで読めばわかる。
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書店はおろか、古本屋でもなかなか見つからなかった「ザ・ワールド・イズ・マイン」が新しくなった!
読み応えは充分!というよりおなかいっぱい。
何度も繰り返して読みたくなる本。
脇役のちょっとしたディテールがまたリアルでいい。
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バカこと町山智浩がPodcastで紹介していたので読んでみた。
ナンセンスとも言えるモンによる暴力の嵐。凌駕されるパワー。世紀末に現れた『デビルマン』の新解釈版とも思えた。
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がつんっ!!!
と、平和ボケが目覚める音がする。
激しい描写にトラウマになりながら、命の勉強をしよう。